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side カノン2

「あーあ、渡しそびれた」


 シドのベッドに仰向けに寝転んだまま、魔法薬の小瓶を頭上に掲げるカノン。


「……見抜かれてた、のか」


 そのままごろんと寝がりをうつと、うつ伏せになり、顔をシドの枕に押し当てる。


 シドたちの出発を見送ったカノンは一度、部屋に戻っていた。


「すぅ……はぁ──うー私も、行けばよかった──」


 残念なことにカノンにはカノンの目的と果たすべき勤めがあった。それには学園を長期間離れるのは望ましくなかったのだ。

 もちろん、野営の続く旅でシスター・セシリアに性別が女だとばれるという心配もあった。


 とはいえ、カノンとしてはすでに行かない選択を後悔していた。その後悔を振り払うようにぐりぐりと顔をシドの枕に擦り付けるカノン。

 十二分にそれを堪能しおえると、そのままうつ伏せで、顔だけを横に向ける。

 ちゃぽちゃぽと、カノンは片手で魔法薬の小瓶を揺らす。


 小瓶のなかの液がたてる音だけが、静かな室内に響く。


 カノンがシドたちに用意した魔法薬は実は自作の品だった。カノンの数少ない趣味なのだ。


 ただ、薬の臭いをシドが余り好きでは無いようだったので、部屋での調合等は控えていた。


 そもそもが、危険な薬品を使用する魔法薬も多くて、そういった魔法薬の調合は専用の器具が揃った場所以外では、禁止させれているのだ。


 幸いなことに学園内には調合室が設けられていて、優秀なカノンは専用のスペースまでそこに獲得していた。


 そうしてカノンがリニアスタに用意した餞別の魔法薬は、体力の回復と精神安定効果のあるものだった。

 ただ、難点はその味の苦さ。そして、数日間体が薬臭くなるという副作用がある魔法薬だったのだ。


 そう、シドが苦手なはずの、薬の臭い。


「あーあ。せっかく貴重な素材が手にはいって、作った自信作だったのに」


 そういうとカノンは仰向けに戻り、シドの布団を引っ張りあげて頭まですっぽりかぶってしまう。

 全身を包む布団から漂う、シドの匂い。


 もぞもぞとカノンは布団のなかで体を動かし始める。


「──シド。早く帰って来ないと部屋中、私の匂いになっちゃうんだからね……」


 静かな室内にカノンの呟きだけが残るのだった。

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