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洗礼巡礼

「54話 お出かけの朝」 が抜けておりました。

申し訳ないありません

「それでその、俺たちを呼んだ用事ってなにかな、セス」

「そうでした。すっかり話がずれてしまって──」


 試しに話をイオタのことから逸らすと、シスター・セシリアはポンと両手の平を打ち合わせる。

 驚異的な質量を持った存在が、その腕の動きで、ぷるんと大きく揺れる。


 すると、なぜだが俺を見るカノンの視線が険しくなった気がする。


 ──あれ、話を逸らしたから、かな? それとも……


 思わず腕組みしたカノンの姿を確認してしまう。

 いっそう険しくなる、カノンの視線。


 俺は慌てて前に向き直る。


「実はお二人にお願いしたいことがあるのです。私と一緒に旅に出てはもらえませんでしょうか?」

「え……」


 俺は嫌な予感がした。

 今のシスター・セシリアの台詞は聞き覚えがあったのだ。

 学園に入学し、持ち前の卓越した治癒魔法の腕前から聖女と呼ばれるようになったシスター・セシリアが、主人公に告げる台詞に瓜二つだったのだ。


 ただ、それはゲーム本編でも後半の、学園パートの終わりを告げる台詞だったはずだ。

 今、この時点では起きるはずのないイベント。


 俺が沈黙していると、カノンが代わりに口を開く。


「旅と言われてもな……俺たちはまだ学生だ。そもそも、旅の目的は?」


 それも不思議なことにゲーム本編のカノンの台詞だった。

 そしてこのあとにシスター・セシリアが旅の目的を告げ、主人公が旅に出ることを了承することで、ゲーム本編での学園パートが終わるのだ。


「すいません、旅と言うと大げさでしたね。実は今期の洗礼巡礼が近々あるのですが──」


 それは、ゲーム本編でも告げられる旅の内容。洗礼巡礼は、近くの村々をまわり、生まれた子供らに洗礼を施していくシスターと見習いによって毎年必ず執り行われる旅だ。


 近隣の村をまわるだけなので、いっけん、短い旅に聞こえる。しかし、旅先では次々にイベントが起き、それらをこなしていくと、結局、そのままゲーム終わりまで旅を続けていくことになる。


「──それに護衛兼助言役をお二人にお願い出来たらなと思いまして……」

「それは……大変名誉なお誘いだが……どうする、シド?」

「……助言役、というのは? なにか特別なことがあるのかな、セス?」


 シスター・セシリアの台詞のうち、「助言役」というフレーズだけが、俺の知るゲーム本編の台詞と違った。本編では単に護衛をお願いされる。


 俺はそこに一縷の望みをかけ、シスター・セシリアの返答を固唾を飲んで待ち受けるのだった。



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