インテリジェンスウェポン
俺はイオタを手にしてから結局、毎晩のように偽物の裏ボスさんの顔を眺めていた。
もちろん、それが目的ではない。
断じて、違う。
ナイフを使って、自分自身の偽物と戦う訓練を続けていたのだ。
今のところ、イオタが告げる鎖の切断率は0.9%まで上昇していた。
まだ、転生特典とやらは解放していない。
結局あのあとは、裏ボスさんと話す機会が掴めなかったのだ。
──逆に、なんだか避けられているような気すらしてくる……気のせい、だよな。
だからと言って、偽物ではあるが裏ボスさんの顔が見られるこの訓練にはまっている訳ではない。
ただ、自分でも少し熱心過ぎるかもと、思わなくもなかった。
──明日は、カノンとシスター・セシリアの所へ行く予定の日だけど……まあ、寝ているのと同じくらい、朝には疲れがとれてるし問題ないだろう。
そんな言い訳を自分にしながら、ナイフを振るう。
俺と同じ動きをする偽物も、当然同じようにナイフを振るう。
こちらへ迫る剣閃は鋭く空間を切り裂き、打ち合ったあとの切り返しも滑らかだ。
自分自身の偽物は、かなりの手練れになってきていると言える。
つまりは、自分もかなり強くなったんじゃないかと、こっそり思っていた。
そこへ、イオタが裏ボスさんの顔と声で話しかけてくる。
『切断率が1.0%を越えました』
「いつも通り、保留で」
『了解しました。また、特典の解放とは別に、本機の機能が拡張されます。音声チャネルが解放されました』
「はい?」
『音声チャネルが──』
「しゃべるってこと? イオタが?」
『その認識は是となります』
「ええ……」
『声紋は、現在のものを継続。リニアスタ=サーベンタス、裏ボスさん、リニのものとなります』
「いや、ちょっとそれは!」
『それに伴い、本機の常時の携帯を推奨』
「……置いておくとどうなるの?」
『非常時に音声による呼び掛けを行います。声量の上限は設定できません』
どうやらいつの間にか俺は、イオタにまで脅されるようになったみたいだった。




