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千日手

 何合もナイフを自分の偽物相手に打ち合せ続けて、どれくらいの時間がたっただろうか。


 いかに現実のように見えて、同じように体が動くと言っても、やはり俺が今戦っているここは現実とは言えなかった。


 ──相当な時間、戦っているはずだけど、全然、疲れないしな。


 俺は何度目か、もう数えきれないぐらいに振ったナイフをまた振るう。

 俺の正面では、俺の偽物も面対照の形で、寸分違わず、全く同じように動いていた。


 当然、俺の振るったナイフの刃が、偽物の振るったナイフの刃とぶつかり合い、互いのナイフが弾かれる。


 ──うわー。これ確実に千日手ってやつじゃん。そういう負け方を強いてくるタイプ? 俺が音を上げてギブアップするのを待っているのか?


 とはいえ、今度は俺が攻撃も何もせず、ただただ突っ立っていれば、俺の偽物もただただ突っ立っているだけなのだ。


 だが、実は変化もあった。

 ナイフを振るい続けたことで、俺の剣閃の鋭さは最初の頃より増していっている気がしていたのだ。

 無数の素振りを繰り返したようなものなのだろう。


 ──そういえば、パラメータは閲覧出来るのかな? ……あ、普通に見えるな。へー。俺ってこんな感じなんだ。


 それはとても新鮮な体験だった。

 敵として、自分自身のパラメータを閲覧しながら戦う経験。しかも、その敵は、俺の動きを模倣してくるので、逆に言えば俺が動かしたいように動いてくれる存在とも言える。


 ──へー。俺ってこんな癖があるんだ……


 自分自身の偽物のパラメータを閲覧していると、なんだかだんだんと恥ずかしくなってくる。

 例えば俺はナイフを突き出す際に、僅かに刃が右回転してしまっているようなのだ。どうやら、無意識の癖になっているらしい。


 ──あ、もしかして前世で右肩、ちょうど痛めてたから? あの時は肩凝りも酷かったしな。スマホとパソコンのやり過ぎで……うわ、この資格を示すのって、おれ自身のいたらなさを俺に突きつけてくるぜ……。


 偽物のパラメータを見ながらそこまで考えて、俺はふと、現状打破の可能性に気がつくのだった。





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