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偽物

 神器の柄についた宝石が激しく光り出す。

 目を潰さんばかりの強烈な光。次々に色を変えながら、溢れだした光に俺は思わず目を閉じてしまう。


 その瞬間だった。

 二重うつしに見えていた世界が一つになる。


 それは偽物の裏ボスさんがいる方の世界。ただただ、だだっ広い広間のような場所だ。


 しかも不思議なことに、そこでは俺の体も実体があるかのようだった。


 俺は瞬きしようとすると、それにあわせて、まぶたが動く。

 手を上げようとすればその通りに動くし、軽くジャンプすれば体が浮き、視点もあわせて上下した。


 そんな俺の手にはいつの間にか、ナイフが握られていた。

 それは、台座に刺さったままの神器と瓜二つの見た目だった。


「あーあー。──それで、資格を示すって、何をするのでしょうか」


 声が出ることを確認すると、俺は目の前の偽物の裏ボスさんに尋ねる。


『私をうまく扱えるのか、お示し下さい』


 裏ボスさんの姿と声で、そんなことを言う偽物さん。


 そういうと偽物の裏ボスさんが軽く手を打ち合わせる。

 すると今度は、俺の目の前に姿見が空からゆっくりと降りてきた。


 ちょうど、俺の全身が映るサイズの鏡だ。

 鏡の縁の飾りがなかなか凝っている。渦巻く紋様が全体を縁取り、所々に何かの果物のような物が彫り込まれている。

あれが果物だとすると、もしかすると渦巻きに見えたのは何かの木の枝なのかもしれない。


 俺が縁取りを観察していると、俺の正面で空から降りてきた姿見が止まる。


 ──ぱっと見は、ここは現実に見えるけど、やっぱり違うみたいだなー。


 俺は、そんなことを思っていた。

 というのも、俺の正面で宙に浮く姿見から、鏡の枠を跨ぐようにして人が出てきたのだ。


 ──俺、だよな、あれ。とはいえ面対象になっているみたいだから、ナイフは左手に持ってる。てことは、左利きなのかね。


 どうやら、この流れだと、俺は自分の偽物と戦わさせられるらしい。


 とりあえず俺は学園でシドが習ったままに、ナイフを片手で構える。すると、俺の正面で鏡から出来た俺の偽物も、俺と面対象に見える姿勢でナイフを構えたのだった。




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