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神器

「これが、例の──。リニ。リニはこれが何か知っている?」


 左手の鉱石を完全にもとに戻した俺たちは、ついにここ数日俺が探し続けていたパラメータの点滅する物に対面していた。

 それの発するうっすらとした光が、俺たちのいる小部屋を照らしていた。


「──」


 裏ボスさんは無言だ。

 そういえば、左手の鉱石を一気に解し終えてから、裏ボスさんの声を聞いていない。それどころか、顔を俺の方に向けまいとするかのように、体をひねった体勢になっていた。なので、せっかく明かりがあるのに、俺から見えるのは裏ボスさんの後頭部だけだった。


 俺はそんな裏ボスさんの様子が気になりつつも、同時に目の前の不思議な存在に魅了されていた。


 それは一見、武器のように見える。


「──神器の一つ」

「じん、ぎ?」


 裏ボスさんの呟き。聞いたことのないフレーズだ。少なくともゲーム本編ではそんなアイテムは出てこなかった。


 一見、台座に刺さったナイフに見えるそれを見ながら、裏ボスさんが続ける。


「歪みに、干渉できるものの一つ。私はこれだから、触れない」


 そういって後ろを向いたまま、左手をあげる裏ボスさん。

 たぶん、俺がさっき解した鉱石化のことを言っているのだろう。だとすると、歪みというのはこの前の宙に浮くリンゴのような魔素暴走の原因かなと、推測する。


「……危ないものなの?」

「シドは大丈夫、だと思う。でも使える者は神器が選ぶ」


 裏ボスさんの後頭部。艶やかな白銀の髪。裏ボスさんの表情は見えないが、何となく俺に、神器を手をとれと言っているようにもとれる。


 ──パラメータが点滅しているのは、あの柄の部分の光っている宝石のようなものだよな。


「あの、宝石のような部分って生きているのかな」

「──わからない。でも、神造精霊(しんぞうせいれい)がついている武具が、神器」

「なるほど?」


 俺も何がなるほどかわからずに裏ボスさんに答える。裏ボスさん自体もそこまで詳しくないのかもしれない。

 あまり質問ばかりして裏ボスさんの機嫌を損ねる訳にはいかないかと、質問を止める。


 ──もし神器とやらが手に入ったら今よりも裏ボスさんのお手伝いが出来そう、だよな。


 俺はそこまで考えて、ゆっくりとその神器とやらに手を伸ばすのだった。




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