フラグ
「ねぇ、どうして、リニはここにいるの?」
俺たちは薄暗いダンジョンのなかをそろそろと進んでいた。
何故か俺の服の裾を掴んでついてくる、裏ボスさん。この移動スタイルが良いらしい。俺はそこについては何も言えず、されるがままに任せることにした。
「シドが隠れて、何度も危ないことをしていたみたいだから」
裏ボスさんからの返答に、俺は声がつまる。どうやら何度もこっそりダンジョンに来ていたのは裏ボスさんにばれていたらしい。
「う、そ、それは、その……」
「もしかして、私の、ため?」
「……はい、そうです……」
「ん」
到底、抗弁もできず、誤魔化すのも諦める。
裏ボスさんとモブ生徒Aに過ぎない俺では、基本的なステータスのスペックが隔絶しているのだ。
逆らうなんてとんでもないし、簡単な嘘なんて、あっという間に看破されてしまうだろう。
それにしても、俺がパラメータが点滅する何かを見つけようとしているのが、裏ボスさんのためだと言うのがよくわかったなと、感心する。やはりここにある何かは裏ボスさんに縁のあるものなのかもしれない。
「ありがとうね」
「いや、その、とんでもないです……。あ、ほら、そこの壁がさっきいった、最後の」
俺の服の裾を掴んでついてきていた裏ボスさんが、歩みを止める。
俺も慌てて立ち止まる。
少し先には、俺がここ数日手こずっていたパラメータの点滅する何かへの最後の壁があった。
──どうしたんだろう? 裏ボスさん。
「シド、また、してくれる?」
「……もちろん」
裏ボスさんからの質問。言葉足らずのそれに、俺は了承を告げる。
ぶっちゃけ、何をしてほしいかわからなかった。だがまあ、またということなら俺が一度は出来たことなのだろう。であれば当然、裏ボスさんからの要請に否を言う訳にはいかない。
「ん」
それだけ告げて、俺の服の裾を離す裏ボスさん。
そしてそれが起きる。
鉱石化だ。
裏ボスさんの体のパラメータ数値が指先から消滅していく。
左手の人差し指を鉱石化させたみたいだ。
そのまま裏ボスさんが壁へと近づく。
次の瞬間だった。
壁がさらさらと砂となって、崩れ始める。
──なるほど、な。ここは仲間に裏ボスさんがいないと進めないのか。人物限定タイプのフラグね……そりゃ、考えてみたら当たり前だよな。
「して」
俺が納得していると、こちらを向いて左手を差し出す裏ボスさん。どうやら鉱石化を解してほしいようだ。
何をすれば良いかわかった俺は、恭しく裏ボスさんの左手をとるのだった。




