はずみで
俺は急いで裏ボスさんの所に向かいながらも、パラメータ閲覧を止めない。
──怪我とかは、してないな。例の鉱石化も、兆候は見られない。だから、動けないのか、動かないのかはわからないけど、原因は別のところにあろそう。
そうして俺があと少しの所にまできた時だった。裏ボスさんが慌てたように動きだそうとしたのか、パラメータが表示されている場所が少し動く。しかし、それもすぐに止まる。
──え、転んだ? まさか……
俺は最後の角を曲がる。
すると、俺の持つ灯りの魔導具に、裏ボスさんの姿が照らされる。
そこにはペタンと地面にうつ伏せに倒れている裏ボスさんの姿があった。
「だ、大丈夫? リニ?」
俺はかけより、転んだままの裏ボスさんに声をかける。しかし、何故か声をかけても動かない裏ボスさん。
パラメータを見ている限りでは、転んだくらいでは、裏ボスさんは一切ダメージはいっていないのは見てとれる。
「──大丈夫」
「あの、起きるの、手を貸そうか?」
「大丈夫。このままで、大丈夫」
頑なに動かない、裏ボスさん。意味がわからない。
「そういう訳には、いかないよ、ここ、ダンジョンだし。立てないなら、手を貸す。少し、触れるね」
そういって俺が手を伸ばした時だった。
ばっと跳ね上がるようにして一気に直立姿勢になろうとする裏ボスさん。
それは、さすがの身体能力だった。
「うわっ」
「きゃっ……」
しかし、今回はその裏ボスさんの類いまれなる身体能力が裏目に出てしまった。
俺の伸ばした腕と、うつ伏せから飛び上がった裏ボスさんの肩が、ちょうど当たってしまう。
俺は腕を跳ねあげられ、万歳の姿勢になりながら、あまりの勢いに後ろに倒れ込む。
跳ね上がろうとした裏ボスさんは逆に、肩を俺に上から押さえられるような形になってしまう。
すると当然のように、体重が前にかかってしまって、再び倒れこんでしまう。
今度は、俺の上に。
「あたた……。あ、ご、ごめんっ!」
俺は慌てて自分の体の上にうつ伏せに倒れこんでしまった裏ボスさんに謝る。
「──手を、その……」
「う。うわっ」
慌てて、手を退ける。
弾みで持っていた灯りの魔導具が、俺の手を離れてダンジョンの床を転がっていく。
転がる途中でスイッチが切れたのか、一気に辺りが暗くなる。
暗闇に順応していないと、このダンジョンは本当に暗い。一時的に真っ暗だ。
何も、見えない。そのせいで、嗅覚と触覚だけが際立ってくる。
そんになか、俺の体の上で、裏ボスさんが、もぞもぞと立ち上がろうとする。
それを感じた俺は床に寝転んだまま、完全に硬直してしまう。
暗闇のなか、ただただ、裏ボスさんの体の熱と、柔らかな感触だけが伝わってくるのだった。




