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質量のあるプレッシャー

「なんとか間に合った」

「シャドウエイプの魔石か……売れば、それなりの金額になるが、どう役に立つんだ」


 カノンの疑問も、もっともだった。

 魔石は魔導具の原動力になる。しかし、教会の手伝いに来ただけの俺たちは、当然、そんなものは持ってきていなかった。


「ま、それはおいおいな。それでどうする?」


 俺はとりあえず魔石をしまっておく。

 そして、今後について二人に相談を持ちかける。


「とりあえずは移動した方が良いかと思います。臭いにつられて別のシャドウエイプが来るかもしれません」


 シスター・セシリアの的確な指摘。

 ゲームでは臭いにつられて、ということは無かったから失念していたが、先ほど襲ってきたシャドウエイプも、俺たちの臭いを嗅ぎ付けたと考えるのが自然だ。


「確かに。俺が無理なく見える範囲ではシャドウエイプがあと三体いる。少し、ここから離れるか」

「なあ、シド」


 何かを考える仕草をしている風のカノン。

 といっても輪郭だけからの推測だ。


「なんだ」

「どのシャドウエイプが来るかで、空気の流れがある程度は、わかるんじゃないか」

「おお、冴えてるなカノン」

「そ、そうかな……」


 急に照れたようになるカノン。そのせいか言葉使いが男の姿をしているいつもの時から乱れている。


「それでは、シドさんから、三体のシャドウエイプが見える範囲で、出来るだけここから離れて様子をみる形にいたしましょう」

「よし、そうしよう」


 ◆◇


「なあ、本当にこれで進むのか?」


 俺はそろりそろりと歩きながら尋ねる。


「はぐれるのは危険です。シドさんから私たちの場所はわかるとしても、万が一と言うこともあり得ます。一番、合理的かと思いますが」


 先頭を進む俺の左の肩を右手で掴んで、左後方からシスター・セシリアの声がする。左手にはロザリオを持っているようだ。


「そうだな。これなら、なんとか短剣を振るえないこともない。ただ、シド。さっきみたいに急に立ち止まると、次は危ないかもしれないぞ」


 俺の右の肩を左手で掴んだカノンが、どこか面白がるような、しかし釘を刺すように告げる。


 さっき窪みにつまずきかけて、俺は急に立ち止まってしまったのだ。当然、後ろから肩を掴んでいた二人がどうなったかは語るまでもない。


 幸いなことに三人して倒れ込む事態にまではいかなかったが、結構、危なかった。


 ──もう少しこう、草とか苔とか生えていたらそれを見て動けるんだけどな……。仕方ない。気を付けるしかない。しかしなんか、カノン、声音は普通なのに、殺気めいたものすら感じられる……シスター・セシリアはぶつかってしまった時、何も言わないから何を考えているか読めないし……


 俺はそんな背後からの謎のプレッシャーを二つほど感じながら、暗がりを進んでいくのだった。


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