スキル
「浅い、かっ!」
カノンの振るった短剣はシャドウエイプの肉を切り裂くも、倒しきるまでにはいかなかったようだ。
とはいえ輪郭程度しか見えない暗闇のなかで、俺の指示に合わせて攻撃を当てれるだけで相当優秀だと言える。
「おまかせ下さい。シドさん」
「警戒して横に移動している。セスの正面から、拳三つ左、七歩先」
俺の声に合わせて、シスター・セシリアのパラメータのうち魔素の値が変動する。
魔法かスキルを使用するのだろう。
薄暗くて明瞭に判別出来ないが、シスター・セシリアは手にしたロザリオを上へと掲げる仕草をする。大きくたゆんと、その体の輪郭の一部が揺れる。
そして次の瞬間、何かが射出される音がする。それも複数だ。
──えっと、ゲームだと、シスター・セシリアは初期に使えたのは……
「──『神の御手』か」
「よくご存じですね、シドさん」
俺が思わず呟いた声はバッチリとシスター・セシリアに届いていたようだ。
そんな俺たちの会話にカノンが入ってくる。
「神の御手とは?」
「簡単な奇跡です。物を移動させることができますので、足元の小石をいくつか撃ち出しました」
シスター・セシリアがカノンに説明している。
ゲームでは神の御手は念動力のようなスキルだった。
周囲の物を動かして攻撃するので、今いる地形でダメージや効果が変わるのが特徴的なスキル、というのがユーザーの一般的なイメージとなっていた。
「シャドウエイプは、無事死亡している。一応、魔石を回収しとく。何かに使えるかも知れないから」
「手伝おうか」
「いや、暗いしな。俺がやる。二人は少しでも休んでてくれ」
死亡してすぐのモンスターの体は、微弱ながら所々、生体反応が残っているようだった。しかしそれもすぐに消え始めていく。
完全にパラメータが見えなくなると、この暗さで魔石の回収は難しそうだ。
俺は学園で支給された短剣を抜くと、シャドウエイプの体から魔石を取り出そうと突き立てるのだった。




