暗闇で
「痛た……そして、重、い?」
周囲はかなり暗い。しかし完全に暗闇ではないようだ。少しすると徐々に目が慣れてくる。
その間に、俺の体に乗っかっていた重みが消える。
「し、シド?」「シドさん、カノンさん?」
左右すぐ近くからカノンとシスター・セシリアの声がする。
「二人とも無事か? 俺は──うん、問題ない」
「──少し、打ち身はあるがこっちも問題ない」
「あ、その──私もです。カノンさん、治癒魔法をかけましょうか」
「いや、魔素は節約した方が良いだろう」
「カノン、本当に大丈夫なんだな。念のため、いいか」
「ああ」
頷きながら返事をするカノン。暗くて表情までは見えないが、俺の目にはカノンの輪郭程度までは見えてくる。
俺は了解をとったので、カノンのステータスを閲覧する。確かに問題なさそうだった。
「カノンは大丈夫そうです、シスター・セシリア。魔素を温存してください」
「わかりました。シドさんはそういうお力が?」
今のカノンとのやり取りだけで、シスター・セシリアは察したらしい。
洞察力もあるようだ。
俺はパラメータ閲覧についてどこまで話すか悩むか考える。
そして暗くて周囲の様子も見るのが一苦労する現状、二人には距離の制限も含め、ある程度は伝えるべきだろうと判断する。
「──と言う訳で、生き物のものだけなんですが見えます」
「なるほど、とても強力な御力を授かられたのですね。しかし力には代償がつきものです。シドさんこそ、あまり無理はなさらないで下さい」
逆に諭されてしまう。
「わかりました。とりあえず無理のない範囲で……」
「シド、本当に無理のない範囲にしろよ。まずは鼻血もなしだ」
「りょーかい」
何故か二人ともから無理するなと言われてしまう。
──そんなに無理をするように見えるのだろうか。解せない。
「──残念ながら、上方に人の存在は無理しないで見える範囲にはない。そして結構近くにモンスターがいる」
「くっ、まさか街の下がダンジョン化してるとは。昨日の事件といい、いったい何が起きているんだ」
カノンが腰に下げている短剣の柄を掴みながら告げる。
その疑問は俺も感じていたものだった。
とはいえ、ゲーム本編の開始前のことについては俺も全然わからない。
──裏ボスさんなら何か、知っていそうだったけど、気楽に聞けるものでもないしな……
体を鉱石に変えながら昨日の魔素暴走の原因のリンゴっぽい何かを対処していた裏ボスさん。その姿を思い出しながら、俺はゆっくりとパラメータ閲覧で周囲を見回していく。
「うーん。モンスターに気づかれたかも。一体、こちらに向かってくる。方向はカノンの正面やや左。シスター・セシリアからは正面直角に右。敵はシャドウエイプ」
「素晴らしい力ですね。暗闇でその情報は価千金の価値があります。あと、名前はセスで構いません。その方がスムーズでしょう」
ロザリオに手をかけ、自身のあだ名を告げるセス。
確かにこの状況ではその提案は双方にとってありがたいものだった。
──やはり、相当出来るな。
「了解、セス。接敵まで、あと十。──カノン、拳一つ右、腰の高さに頭部……いまっ」
ほぼ無音で接近してきたシャドウエイプ。
俺の声に合わせて、カノンが横薙ぎに短剣を振るったのだった。




