Happy Birthday Orthia⑦
「なあオルシア」
食事も大分片付き、二人きりのパーティーも終わりにさしかかった頃オレは一つの提案をした。
「来年から、オレの誕生日を祝うのは無しにしようぜ」
「え……?」
オルシアは少なからず動揺したように、その紫の瞳で、食い入るようにオレを見つめた。
「どうして?」
「……オレばっか祝ってもらって、お前のこと祝ってやれないんじゃ、なんかさ、悪いじゃねーか」
「そんなこと……」
「まあ待てよ。だからさ、オレの誕生日もお前の誕生日も祝うのはやめてさ、結婚記念日を盛大に祝おうぜ。二人分の誕生日、いっぺんに祝うつもりでさ」
「ミド……」
オルシアは、そう呟いたまま俯いて、しばらく黙り込んでしまった。
余計な提案をしてしまっただろうか。
うろたえるオレの目に、キラリと光るものが落下したのが映った。
「オ、オルシア……?」
それは、オルシアの涙だった。テーブルの上、グラスを握ったまま微かに震えているその白い手の甲に……一滴、二滴と涙が零れ落ちて弾ける。
「ご…ごめん、変なこと言って……」
オレはすっかり狼狽してそう言ったが、オルシアは軽く頭を左右に振って、
「悲しいんじゃない」
と言った。
「ただ……それなら二人で同じ時を、数えることができるのかなと、思って。そう思ったら、ちょっと嬉しかったんだ」
「オルシア……」
「じ、じろじろ見るなよ。──風呂入ってくる。片付け、頼む」
そう言ってオルシアは席を立ち、さっと背を向けて奥に走って言ってしまった。着替えを取りに行ったのだろう、ガタガタと騒がしい音が響き、次いでバタンと勢いよく、浴室の扉が閉まる音が聞こえる。
カワイイ奴。
残されたオレは、グラスに残った中身を一気に飲み干して、一人ニヤニヤした。
走り去った彼女の横顔が、赤く染まっていたのが、とても愛しく思えたから。
食器やらなんやらを洗って片付け、それだけ残っていてもなんだか寂しいような気もする部屋の飾りは全部取ってしまった。が、捨てるのも気がひけて、御丁寧に袋にいれてしまったりしてるオレが情けない。
「片付けアリガト」
風呂から上がってきたオルシアは、いつものように優しい微笑を浮かべていた。洗いあげの黒髪を、でかいタオルでガシガシ拭いている様子がまたかわいい。
「今日は疲れたな」
水を一杯飲んで、オルシアはそう呟いた。
「でも、楽しかった。無事に帰ってきてくれてよかったよ。こう言ったらなんだけど、嵐が来てなかったら退屈で、お前のあとを追って行ってたかもしれない」
「ははは。バカ、そんなこと真顔で言うなよ。照れるだろ」
「ホントのことだよ」
静かにそう言ったオルシアの口調が……柔らかな眼差しが、なんだかとても色っぽくて……オレは思わず、ぽ~っと惚けてしまった。ホント、魔性の女だよ。
「さーて、明日も家の修理手伝わないと行けないし、さっさと寝よう。歯、磨いてくる」
「あ、オレも」




