Happy Birthday Orthia⑧
二人並んで歯を磨いて、二人一緒にベッドに入る。
そっと肩に手を伸ばして抱き寄せると、オルシアは少し困ったように微笑んで、
「本当にすまないのだが……」
と、本当にすまなそうに言った。
「……とても疲れているんだ」
彼女がこんなふうに弱音を吐くのは珍しい。
ここ数日のゴタゴタの中、一人で頑張ってきたのだ。オレが帰って来たことで安心したせいもあるんだろう。
「わかってるよ。ただもう少し、傍によってくれたらなと思っただけだ。オレも──疲れているし」
最後は、オレにしてみればちょっと気をきかせただけど、オレがそう言うとオルシアは少し笑って自分のほうから寄って来てくれた。
腕枕してやって、オレは彼女の髪をそっと撫でた。まだ少し濡れている、漆黒の柔らかい髪。
「……仕事の話を聞かせてくれ」
静かに目を伏せて、オルシアが言う。せめて甘い言葉でもと思っていたのに……まあいいか。
彼女の希望に応えて、オレは今回の仕事の話を始めた。
あ、今のオレの仕事と言うのは、主に新米冒険者の援護だ。つまり、旅をしていたころとあまり変わらない。学の無いオレだからそんな仕事でも稼げるうちに稼いでおいて、そのうち畑でも作ってオルシアと二人でのんびり暮らしていくつもりだ。
そう、二人で。
オルシアは気づいてないかもしれないが……多分こいつの体じゃ子供を作ることはできないだろうし、オレも別にどうしても欲しいと望んでいるわけでも無い。ただ……オレはこいつに何を残してやれるのかと思うと、時々とても歯がゆい思いでいっぱいになった。
「……そんでさ、やっと嵐が収まって、ようやくモンスターの討伐が終わってさあ報酬を頂いて帰ろうかと思ったら、村長の奴、嵐の時は結局なんの動きも取れなかったんだから仕事をしていないのと同じだ。だからその分は報酬から差し引く……とかぬかしやがって。頭来るだろ?!それでまた交渉に一日かかって、結局一週間も帰宅が遅れちまったんだ。……もともとはてめーの孫ガキがイタズラしてゴブリンの巣を爆破したりするから、奴らが攻めて来たんだって言うのによ」
「……」
「まあ、報酬はきっちり頂いてきたし、これでしばらくは何もしないでゆっくりできるぜ。な、オルシア……」
そう呼びかけて、オレはようやく、彼女がすでに眠ってしまっていたことに気づいた。話に夢中になっていたわけじゃないんだが……てっきり彼女の方は、オレの話を熱心に黙って聞いているのだとばかり思っていたから。
「……ったく、オヤスミぐらい言わせろよ」
安らかに眠る彼女の額に、起さない様にそっとキスをして、オレは部屋の明かりを消した。風邪を引いたりしないように、ちゃんと肩まで布団をかけて……指の背でそっと、頬に触れた。
柔らかな、その感触……。
「オヤスミ、オルシア。愛してるよ」
そう一言囁いて、オレは目を閉じた。
今夜はなんだか、いい夢が見られそうだと……オレはなんとなく、そう思った。
END
ミルドレーンの誕生日じゃないかい!タイトル詐欺かよ!と思った方もいると思いますが、あえてこのタイトルで。
オルシアは実は元々「オルティア」という名前だったので、タイトルにも「Orthia」と書きました。この元々の名「オルティア」は、ギリシア神話の月と狩りの女神アルテミスの神号「アルテミス・オルティア」から来ています。アルテミスは有名な神なので特に説明する必要もないと思いますが、ギリシア神話の中では実際に両性具有であるヘルマフロディトスを除いて、もっとも中性的な神であると、私は思っている。
名前を変えたのはホ〇ダの車の名前に使用されて、CMで流れまくったのが当時嫌だったからですが、もしかしたらオルシアの本当の名前はオルティアだったかもね。時間がたちすぎて忘れてしまっただけで。という設定もアリかと思います。




