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WITH THE WIND  作者: レエ
本編
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Happy Birthday Orthia④

 作業をしながら、オレは初めてオルシアと出会った日のことを思い出していた。

 酒場で粗野な男たちに囲まれていた、月夜の化身のように美しい人……。

 仲間になったオレに、オルシアは色々と自分の話をしてくれた。重い心の傷を背負って生きているはずなのに、傷を傷ともわからないオルシア。見た目は当時オレより5~6下の、20代前半の青年だったが、心は塔に閉じ込められた時のまま、子供のように純粋だった。世間知らずで、ワガママで、時々突拍子もない事をしでかすくせに、その実力はパーティ1。カスミーロスは、そんなオルシアのことをかわいいと思っていたらしく、あいつの言うことは結構なんでも聞いてやっていた。

 オルシアの正体が魔女だと言うことはオレもすぐに聞かされたが、オレにとってはそんなこと、はっきり言って別にどうでも良かった。もちろん女であってくれたほうが嬉しいには違いないが、オレはオルシアがオルシアなら、それで別に構わなかったのだ。

 純粋故に恐れを知らず、自信家で、気が強くて……いつも堂々としている彼女が、オレにはとても好もしかった。最初に惚れたのは人並み外れたその美貌だったかもしれないけれど……冷静になり、自分の容姿や辿ってきた道を振り返っても彼女を諦める気になれなかったのは、きっと気高いその心に惚れたからに違いない。

 だから彼らと行動を共にするうちに、オルシアの心がカスミーロスに向いていることがわかってきた時は、本当に彼に嫉妬した。

 彼はもともと大貴族の息子で、処事情で世界を放浪する羽目になっても、その優雅な立ち居振舞いを忘れることはなく非の打ち所なくいい男だった。親切で正義感に溢れ、容姿端麗な上に剣の腕も抜群となれば、どんな女だって惚れるだろう。

 それに比べてオレは粗野な傭兵上がり。男ばかりの世界に育ったから、品性なんてものはもちろんなかったし、図体ばかりでかいだけで学もないから読み書きがやっとというありさまだ。

 でも、恋という感情を知っていただけ、オルシアと比べてオレはずっと幸せだった。

 オルシアはその生い立ちのせいなのだろう、カスミーロスに恋をしている自分の心にも気づかず、またオレの愛を理解しなかった。

 だからカスミーロスが旅先で出会った町娘と共に未来を生きることを選んだ時のオルシアの落ち込みようといったら、見ているこっちがつらいくらいで……そんな時に気のきいた言葉一つも言えたらいいのに、かけるべき言葉は見つからなくて、オレはただ、傍にいることしかできなかった。

 だが、挫折することで恋を知ったオルシアは、ようやくオレの気持ちが真剣であることを理解してくれたようだった。それからオレたちは今まで以上に息投合し、仲良くなって、そしてオルシアがオレの愛を受け入れてくれるまで、そう長い時間は掛からなかった。

 本当に、オレは運が良かっただけなのかもしれない。

 失恋に気落ちしたオルシアが、オレに心を寄せてくれたとしても……それはもしかしたら、ただ悲しみを紛らわしたかっただけなのかもしれないのに。

 そう、今だってもしかしたら、あいつはまだカスミーロスのことを、諦め切れずにいるのかもしれないのに……。

 確かに手に入れたはずなのに、オレはいつだって自信がない。

 あまりにも君は素敵過ぎて、そばにいてもいつも、夢を見ているような気がするから……。

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