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WITH THE WIND  作者: レエ
本編
11/66

微睡み①

 ここは……どこだろう?


 美しい、花の庭園。なんだか、ひどく懐かしいような気がする。


 豊かな水を湛えた噴水も……


 小鳥たちの囀る、あの柔らかな森も……みんな、どこかで見たことがあるようだ。


 ここは……どこだ?


 思い出せない……思い出せない!


 美しい白亜の城……ああ、何故だろう。よく見えない。見えない……暗くなってきた。


 夜なのか?


 そうなのかもしれない。

 

 ああ、やっぱり夜なのだ。


 窓からあんなにたくさんの星が見えるもの……


 窓?


 いつの間に部屋の中に入ったのだろう。さっきまでは、確かに庭にいたはずなのに。


 意識でも失って担ぎ込まれたのだろうか。そうかもしれない。だから急に、前が見えなくなったりしたのか。


 誰かが泣いている。


 なんて悲しい泣き声だろう。心が引き裂かれてしまいそうな……あれは、女の啜り泣きだ。


 可哀想に、何処の女だ?


 いや……なんだろう、あの声は、どこかで聞いた覚えがある。


 ひどく懐かしい……あれは、誰の泣き声だっけ?


 何も思い出せない……


 ここは、どこだ?


 カスミーロス……?


 ミド、何処にいるんだ。

 

 ああ、暗い、狭い


 寂しい……


 あっちで、誰かが笑っている。


 誰だろう、かわいい……女の子かな?


 無邪気で、明るくて……何の悩みも怖れもないような


 きっとたくさんの愛に囲まれているのだろう。


 幸せそうな……あの声が、羨ましい。


 ああ、また……また、あの悲しそうな泣き声。


 何故そんなに泣いているんだ?


 なんて悲痛な……魂が引き裂かれそうだ。


 泣かないで、泣かないでくれ……お願いだ。


 あなたの泣き声は、もう聞きたくない……。

 

 あ……?


 なんだ、また、いつの間に外に……?


 眩しい。空が綺麗だ。


 向こうでさっきの少女が笑っている。


 幼い……まだホンの小さな少女。


 艶やかな黒髪を風に揺らしながら、ああ、お母さんのところに走ってゆくのだね。


 誰だろう……君は、とても懐かしい。


 以前、どこかで会っただろうか?


 君の、その大きな黒い瞳……


 ああ、誰だろう。思い出せない……


 まただ、またあの泣き声が聞こえる。


 やめてくれ、そんなに悲しまないで……!


 涙にくれる女の前で、誰かがベッドに横たわっている。

 

 あれは、さっきの少女だろうか?


 子供が病気なのか。


 それでそんなに、悲しい声で泣いているのだね。


 静かだ……


 子供が泣いている。


 あれは、さっきの少女だろうか。


 苦しいのかな。


 いや違う、悲しいのだね。


 バカだな。


 そんなに泣いたって仕方がいないよ。


 君には泣く資格なんて無い。


 笑って生きなきゃ、いけないんだよ。


 だってそうだろう?


 君さえあのまま死んでしまえば、誰も苦しまずにすんだのに


 それでも、君は生き残ったんだろう?


 だいたい、お母さんが死んだのは君のせいじゃないか。


 なんで、君は生きているの?


 あ……誰が死んだって?


 君のせい……?


 誰のことを言っているのだ。


 ああ、目が痛い。


 目が痛い……何も見えない!


 真っ暗だ。


 暗い……暗い!


 私は誰だ?


 ここは……どこだ。


 嫌だ、嫌だ、こんなところにはいたくない!!


 話し掛けないでくれ!


 やめろ、何も言わないでくれ……


 思い出せない


 思い出したくなんかない!!


 誰か……ここから私を連れ出してくれ。


 一人にしないで。


 寂しい。


 寂しい……。


 お願い、私を置いていかないで……!!



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