47話 属性
俺はジークやクレアちゃん、トルーヤさんに教えた事をエマに教える為に、地下訓練場の真ん中に移動して、そこに腰を下ろした。エマに教えるだけなので、赤の牙以外の3人には、少し離れたところで魔力操作の練習をしてもらっている。
「まずは質問なんだけど、エマは自分の体の中にある魔力を感じたことはある?」
「それはあるわよ。魔法使いの使う詠唱は、魔力を属性魔法に変える働きと共に体から魔力を集める働きもあるの、だから自然と魔力を感じられるようになるわ」
「詠唱ってそういう働きをするのか。なら簡単に説明すると、俺は詠唱を使わない分自力で魔力を集めてこないといけない、で、その集め方っていうのが、体の中にある魔力を自分の力で動かして任意の場所に集める、魔力操作をすることなんだよね」
「そんなことできるのか」
「魔力を自分で集めて魔法を発動するなんて聞いことないですね」
「楽しそうだなそれ」
「ちょっとあなた達は黙ってなさい、それで魔力を動かすなんてことできるの?」
「できる、俺以外にもジークが魔力操作に成功しているし、これは特別な才能が必要なことじゃないと思うよ。ジークが天才だって線もなくもないけど。実践してみるから手を貸して」
エマが両手を差し出してきたので、俺はその手を握り、ジーク達に行ったように魔力を流して軽く動かしてみた。
(一応魔法を日常的に使っているからなのか、ジークたちよりも多少魔力が柔らかいな。エマ本人も魔力を感じられる様だし、魔力操作を使えるようになるのもあっという間かもな)
「うわ、なにこれ!いつもはぼんやりと体内にある魔力を感じていたけど、魔力を流されたことによってもっと明確に魔力の形が分かる。それに本当に魔力は動かせるのね!」
魔法に関して新しい知識を知った為か、エマは興奮してしまい、魔力操作に関する質問攻めをされた。赤の牙の3人はまたかと、慣れた雰囲気を出してエマを見ていた。慣れているなら止めてほしいと思いつつも、エマに付き合うことにした。その後も感覚をもっと知りたいからという理由で半刻ほどずっと魔力を流し続けた。
「ごめんね、私魔法のことになると周りが見えなくなってしまうのよ」
「いいよ、うちにも二人ほどエマみたいな人がいるし、なんかもう慣れた」
「ふふ、ジークとクレアね。それじゃあいつまでも私の為に待たせるのも悪いし、行くわよ」
「あれ、魔力操作はもういいの?」
「ええ、ケイのおかげで大体のやり方は分かったから、一人で練習してみるわ。ケイありがとう、魔力操作のおかげで私の魔法は2段階は高みにいけるわ。自分なりに練習してどんな使い方ができるのか、色々と試したりしてみるわね」
エマが立ってジーク達の元に向かおうとするとザック達3人が不満げな様子で抗議してきた。
「おい、結局俺達には教えてくれないのかー?」
「そうだよ、エマだけずるい」
「そうだぜ、俺達にも教えてくれよ」
「あのねー、魔法使いの知識っていうのは貴重なものなの、おいそれと他の人に教えていいものじゃないのよ?」
「ケイは魔術士ギルドには入ってないから、魔法使いじゃないだろ」
「ジーク達3人にも教えてるんだし、これからまた3人増えたところで変わらないよ」
「それにお前だって教えてもらってるじゃねぇーか」
「そんな屁理屈みたいなこと言わないでよ。それに私は魔法使いだからいいの!」
赤の牙の4人が言い争い、、には欠けるから、言い直してじゃれ合いをやり始めた。このままだと永遠このやり取りをしていそうなので俺は声をかけることにした。
「エマ、他の人にバレないようにするって条件と、俺はジーク達に教えていて手が空いてないから、エマが教えるっていう条件を飲んでくれるなら、ザックたちに教えてもいいよ。このままだとザック達も引き下がらないでしょ。それに魔力操作っていう面白いことをエマだけに教えて3人には教えないなんて不公平だからね」
「お~流石はケイだ。よく分かってる!」
「ありがとうケイ!」
「おぉ~やるなケイ」
「全くあなた達は、、はぁー本当は駄目だけど、ケイもこう言ってくれてるし、私が使えるようになったら教えてあげるわ」
「やったぜ!」
「これで僕も魔法を使えるようになるんだね、楽しみだよ」
「ザックやグレンの言ったとおり、今日は来てよかったわ」
「あくまで私が使えるようになってから、教えるだけよ?あなた達が使えるとは限らないからね」
「分かってるって」
「分かってるよ」
「そこのジークってやつも出来るようになったんだろ?ならいけんだろ」
「とりあえず、この話は後でするわよ」
「分かった!」
「はい」
「ああ」
「まったく、どうしてこういう時はこんなに息がぴったりなのかしら。いいわ、それじゃあ行きましょう」
俺とエマは魔力操作の練習をしているジーク達の元へ向かった。
「もう終わったのか?」
近づいてきた俺達に気づいたトルーヤさんが声をかけてきた。ちなみに、ジークとクレアちゃんはその持ち前の集中力で、こちらには全く気づいていない。ジークにいたっては背後に立っているにも関わらず1ミリもピクリともしない。
(もしこれで俺が悪いやつだったらジークは殺されてるな。俺がいる時はまだいいけど、一人の時は魔力操作の練習禁止にしようかな。獣人に対して良くない感情を持っている人もいるからな)
「はい、後は1人で練習するみたいなので」
「そうか、さっきの騒いでいるのを見てたけどよ、お前達あんまりケイが優しいからって困らすんじゃねぇーぞ?特に男3人」
「困らせてないだろ、そうだろケイ?」
「困らせてませんよね」
「あれくらい普通だろ」
「はははは」
先程のやり取りを見ていたトルーヤさんによって注意された3人は、なんで注意されたのか分からず、ザックは俺に同意を求めてきたので、作り笑いを返してやった。
「私も教えてってケイに迫った側の人だから、強くは言えないけど、あなた達少しは気をつけなさいよ。グレンに関しては、あなたはいつもなら止める役でしょ?なんで一緒になってるのよ」
「ごめんごめん、いつもなら止めるけど、魔力操作だなんて面白そうなこと逃すわけにはいかなくてね」
「気持ちはわかるけど」
「まー俺も困ったらその時は言うことにする、だから気にしなくて大丈夫だよ。トルーヤさん気にしてくれてありがとう」
「このくらい別にいい」
最近トルーヤさんがツンデレというやつになってそうなんだけど、これも気のせいか。
「それじゃあこの話はこれくらいにして、ジーク!クレアちゃん!そろそろ終わりして、エマが属性とか軽く魔法について教えてくれるから」
俺が強く名前を呼ぶとジークとクレアちゃんはようやく現実に戻ってきたみたいだ。
「あれ、ケイ。もうエマさんに教え終わったのか?まさか!もう使えるようになったとか!?俺達の努力を一瞬で覆すAランク冒険者、かぁーカッコいい!」
(なんでこいつは何も言ってないのに、自己完結してるんだろうか。最初はクールな印象だったのに、少しの間一緒にいただけでもこいつが、素直で真っ直ぐなアホっていう印象になったな。それにしてもやっぱりAランク、まー高ランクか、は尊敬されるもんなんだな。日本で言う芸能人みたいなものなのかな?)
一人で暴走しているジークの頭を小突いて止めた。
「うるさい、勝手に自己完結するな。魔力操作の練習方法を教えただけだよ。元々魔力を感じられるみたいだし」
「いてっ、あーそうだったのか。なんだ、ケイが教えるって言うから出来るまでかと思ったぜ。全く勘違いさせやがって」
「何言ってるのよ、お兄ちゃんが勝手に勘違いしただけでしょ?」
「そうだったか?」
「それより、エマが魔法について少し教えてくれるみたいだから一緒に聞くよ」
「おぉーAランクのエマさんに直接魔法を教わるなんて幸せだ!」
「教わるって言っても少しだけだから、あんまりはしゃぐなよ」
「そうよ、ちゃんと教わるのは私だからね」
「くっそー羨ましい」
といつものように3人で話していると、その光景を見ていたエマが笑っていた。
「なんで笑ってるんだよ」
「なんか、ケイがその二人といると年相応に見えるなって。もともとしっかりしてるから大人びた印象だったけど、ジークとクレアの前だとなんだが手のかかる弟や妹を持った若いお兄ちゃんって印象になるわね」
「えっ俺のほうが歳上なのに弟、、、」
「確かにケイはお兄ちゃんよりお兄ちゃんだよ」
(確かに、この世界に来た当初は大人だった頃の印象が強かったけど、今は薄れてきて、自分が子供っぽくなってるのを感じる。これは心がこの体に馴染んできたのかな。実際赤の牙といる時は仕事としての仲間って感じで多少の心の距離があるけど、ジークとクレアちゃんといると家族みたいな印象なんだよな。精神が若くなるのはいい事なのかどうか判断に困るけど、若い体になったんだしありがたいことか)
「まージークの方が年上だし、もう少ししっかりしてほしい所だけどね」
「そうなのね、同い年くらいに見えたわ。それじゃあ、この話はこれくらいにして魔法について教えていくけどいいかしら?」
「お願いします」
「まー規則的にそんな教えられないから、基本的な事だけ教えるわね。魔法使いは皆、ケイとは違って詠唱を使って魔法を発動させるの。例えば簡単なのだと「火よ集え 火球!」とかかな」
エマが詠唱すると手に魔力が集まり、火球が発動し的に向かって飛んでいった。火球は寸分の狂いもなく的にあたり、的を破壊した。ここてま気になったのは、魔力を一瞬で収束させるのは難しいのか、詠唱を言ってから発動まで多少のずれがあったことだ。魔力操作で魔法を発動させると、ずれなく魔法が放てるのでもし魔術士と戦うことがあっても早さで負けることはないかもしれない。
「かっこいい!」
「素敵!」
エマの放った火球を見て、魔法大好きっ子のジークとクレアちゃんは興奮していた。
「本当ならもう少し長い詠唱が必要になるんだけど、私ぐらいになると今ので十分なの」
「エマさん、すごい!」
「そんなすごい人から魔法を学べるんだね」
「エマさん他にはないの?もっと見たい!」
「私も!」
「しょうがないわね、いいわよ。しっかり見ててね」
一切お世辞なしの純粋な二人からの称賛にエマは調子に乗って、二人に促されるまま色々な魔法を発動させていた。
「風よ、切り裂け 風刃!」
「水よ、集え 水球!」
「氷よ、貫け 氷槍!」
魔法を発動させる度に、二人は喜びもっとと催促するのでこのままだと無限ループに陥りそうだ。俺は仕方ないので止めることにした。
「3人ともそのくらいにして次いくよ」
「「えー」」
「えーじゃない、エマ次の説明にいって」
「そ、そうね。次の説明に行くわ」
「「はーい」」
「詠唱の役割は大まかに言うと3つあるわ。
1つ目、体内の魔力を集めること。
2つ目、属性の付与。火よとか水よとかの部分ね。
3つ目、効果の付与。切り裂け、集え、貫けとかね。
詠唱することによって魔力にこの様に様々な効果を付与することができるの」
「じゃあエマさん、普通の人も今の詠唱を言えば魔法を使えるの?」
「いい質問ね。答えは使えない。流石にそんなに甘くないわ。今の3つの効果を聞く限り発動できそうなものだけど、もう少し手順を踏んだり、詠唱に一手間加えたりするのよ。だからここまでは教えることができるの。みんなも知ってるでしょ?魔法には詠唱が必要だって」
「そうなんだ、んーじゃあケイはどうやって魔法を発動させてるんだ?ほぼ詠唱してないだろ?」
「基本的にはエマが言っていた、詠唱の役割を自分自身で行ってるかな」
「自分自身で行うって、ケイそれはどういうこと?」
興味があるのかエマも話に入ってきた。
「まずは自分で魔力を操作して、必要な分の魔力を一箇所に集め、やって欲しい役割に合った形に固める。例えば当てたいだけなら丸く、貫いてほしいなら槍の形にといった風にね。エマが言う属性の付与は頭の中で行ってるよ。何属性の魔法を使いたい!みたいにね。頭の中で不十分かもしれないから、俺の場合これに加えて水球とか雷槍とかイメージを明確にできるように声に出すよ。この手順を踏めば魔法が発動できる」
「なるほどね、そうやってたの」
「へぇー、ケイも簡単そうに見えてしっかりと手順を踏んでたんだな」
「ケイもすごいね」
「なるほどなー」
俺の話を聞いていたトルーヤさんと赤の牙の男達がうんうんと頷いていた。
「それじゃあ、属性の付与って魔力を集めたらなんでもできるの?火でも水でも風でも」
「流石にそんなに甘くないよ。俺も火とか風を意識してやってみたけど、全くだめだった。多分才能によって属性の付与の種類は決まってるんだろうね」
「良かった、そこは私達と同じなのね。あっだから魔法の属性を知りたいって言ったのね。ジークの使える魔法の属性を調べたいから」
「そういうこと」
「魔法を使える人が魔法の属性を知らない事自体、珍しいけどね」
「そこら辺のことは置いといてよ」
「まーいいわ、後は魔法の属性について教えるだけでいい?正直何が掟を破ることになるのか分からなくて、これ以上はあまり教えたくないわ」
「いいよ、それが本命だしね」
「分かったわ、それじゃあ属性には何があるのか説明していくわね。五大属性と言われる火、水、風、土、木、これは魔法使いをやっている人は誰でも1つは持ってるものよ。次に特殊で魔法使いでも持っているのが稀な光、闇、付与雷、氷、時空よ。これは使い手がなかなかいないの。最後に例外として龍と精霊、妖精という属性があるわ。ちなみに、今確認されている龍魔法と精霊魔法の使い手はどちらも、Sランク、世界の護り手と言われる9人の内の二人よ。だからこの魔法を含めないものすると、基本的に魔法には11の属性があることになるわ」
(なるほどな、龍と精霊、妖精魔法ってのもあるのか、いつか見てみたいな)
「ありがとう」
「いいのよ、むしろこのくらいしか教えてあげられなくてごめんね」
「俺はこれが知りたかったし、全然だよ」
「すげぇーな、俺は何属性の魔法が使えるんだろう。すごい楽しみだ」
「お兄ちゃんいいな、私も早く魔力操作できるようになって知りたいな」
「魔法には11個も属性があるとは初めて聞いたな」
「それじゃあエマから属性について教えてもらったから、次はジークが何属性の魔法を使えるか調べていこうか」
「待ってました!早くやろうぜ!」
「まぁそんな焦んなって、手順は簡単だ。魔力操作を使って手のひらに魔力を集める。そして各々の属性をイメージして魔法を発動させようとしていく、これで魔法が発動したものがジークの使える属性ということ。イメージだけじゃなくて、水球とか口に出すといいかもね。分かった?」
「あぁ、魔力集めて魔法を使いたい!って思えばいいんだろ?」
「雑だけどそれでいいよ。それじゃやるか」
「よし!」
そう言ってジークは魔力を集め始めた。
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