46話 新しい生徒?
3人に魔法の感じ取り方を教えてから、魔力操作に変化があったのは9日目の事だった。あれからジークと俺とトルーヤさんは模擬戦を、クレアちゃんは主にランニングをしたり、基本的な体術を学び、その合間合間に魔力操作の練習をするという代わり映えのない日々を過ごしていた。
その間俺はジークとクレアちゃんの家に泊まり、夕焼けの宿には部屋だけ取っておいてほしいという話もしていた。普通なら部屋は取っておくことはできないが、お金を払っているならその間部屋以外で泊まっていても問題はないと言うことで、魔力操作の指導をするためにジークとクレアちゃんの家に泊まることにしたのだ。その間2人は早く魔法を使いたいという一心で家に帰ってもひたすら魔力操作の練習をしていた。しかし中々成果は出ずなんとも言えない空気が出てきた頃、ジークに魔力を動かせるような兆しが見えた。
「う、動いたー!」
「本当か!」「本当に!?」
「よかった!俺の教え方が間違ってるんじゃないかって心配になってたよ」
「まー動かせたって言ってもほんの少しだけどな」
「それでもすごいじゃねぇーか!」
「本当だよ!?ずるいお兄ちゃん!」
「少しでも動かせるなら、このまま練習をしていたら普通に動かせるようになるってことだろ?ならみんなも希望をもって練習に励むことができるようになる」
そこまで言うとジークは調子に乗り始めた。
「ま、まー俺ってやっぱり天才だったのかもな。俺をもっと褒めてもいいんだぞ?」
「「「、、、、、、練習に戻ろう」」」
「な、何でだよ!もっと褒めてくれてもいいだろ?」
「調子に乗ったお兄ちゃんってうざい」
「ジークは褒めるとすぐ調子乗るタイプのやつだったのか」
「まージークは元々明るくて単純な性格をしてますから、褒めたら調子に乗るのもジークだからなって納得しちゃう所もありますよね。ジークはここで調子に乗らず、もっと上達できるように頑張れ」
「わ、分かってるよ!俺はすごい魔法を使えるようになるまで諦めたりしないからな」
ジークによって他の人も魔力操作ができるかもしれないと分かってから、3人とも以前よりも割増で集中力や熱心さが増していた。
(使えないと思っていた魔法への道が、ジークによってより明確になってきたから、頑張りたくもなるか。このまま順調に皆が魔力操作をできるようになってくれたらいいんだけどな。特にクレアちゃんに関しては初期魔力量が二人よりも圧倒的に多いから、少し動かすのにも相当大変だろうな。クレアちゃんが自暴自棄にならないようにしっかりとサポートしないと)
魔力を動かす感覚が分かってくると、その後の成長の勢いはすごく、2日程で魔力を集められるようになっていた。この間トルーヤさんとクレアちゃんの魔力操作に変化はなかった。
「お、俺とうとう魔力を集めることができたぞ!」
まだジークは魔法を使っていないが、体の中にある魔力を少しずつ動かせるようになっていく過程に興奮していた。
「やったなジーク、これできっと魔法を使えるぞ」
「とうとう俺が魔法を使うことができるのか」
「あっという間に差をつけられちまったな」
「すぐ追いつくから待っててねお兄ちゃん!」
「まっ俺は天才だからよ、もっともっと差をつけてやるぜ」
「ジークはすぐ調子に乗るな、上には上がいるんだから」
「ワッハッハッハ!そうだぞ、ジークが調子に乗ってたらすぐ俺たちが追いつくし、上にはケイがいるからな」
「お兄ちゃん怒られてるー」
「うるさいぞ、クレアー」
ジークは馬鹿にしてきたクレアちゃんを捕まえるために訓練場の中を追いかけ回していた。そんなことをしていると階段を降りてくる声がした。
「なんで俺達も行かないといけないんだよ、ケイに頼まれたのはエマだけだろ?休みの日くらい寝させてくれよ」
「アークはこうやって連れ出さないと、寝てるかお酒飲んでるかだし、少しは外に出ないと」
「そんなこというけど、普段は冒険者として外に出てるだろ?」
「それはそれ、これはこれだよ。今日はケイが面白そうなことしているらしいし、見るのもありじゃないかな?」
「そうだぞ、エマに魔法のことを教えてくれって頼むなんて、ケイ絶対楽しいことしてるだろ、これは行かなきゃ損だろ」
「あんた達来るのは別にいいけど、今日魔法の事を教えてほしいって頼まれたのは私なんだからね?邪魔しないでよ?」
「分かってるよ」
「静かにしてます」
「それならいいわ」
ジーク、クレアちゃん、トルーヤさんには、俺が全部魔法を教えるつもりだったが、よく考えると俺は一般的な魔法使いの事を何も知らないし、魔法の種類すら分からないと気づいたからだ。魔力を集められるようになった後は、「ー球」と唱えさせて何属性の魔法が使えるか調べようと思っていたので、何属性があるのか知らないというのは問題だった。だから魔法の事をよく知っているだろうエマに頼ることにした。この機会に魔法について学び、魔法の使い方の幅が広がればなおいいな。
そんなことを考えていたら赤の牙の4人が地下訓練場に入ってきた。
「ケーイ!来たわよ!」
俺は赤の牙の4人を迎えるために入り口へと走っていった。
「今日は来てくれてありがとう!」
「別にいいわよ、その代わりケイの新技も見せて頂戴ね!」
「もちろんいいよ」
「とうとう見れるのね!どんな魔法なのか気になって気になって、昨日は全然眠れなかったわ!」
「まーエマのご期待にそえるかどうかは分からないけどね」
「何言ってるのよ、新しい魔法ってのはどんなものでもそれだけで心躍るものなのよ?」
(ジークやクレアちゃんの魔法への関心は驚くものがあったけど、エマはエマで魔法への関心が凄まじいのか)
「それじゃあ楽しみにしてて」
「ええ、分かったわ!」
エマと話していると赤の牙の他の3人が会話に入ってきた。
「おーい、俺達を無視して会話かー?」
「ケイにとって今日の僕達は、話す価値すらないと言うことかな?」
「おーおー、ケイもいいご身分になって」
(これはあれか?エマを誘う時に、エマに向かって魔法の知恵を知りたいから力を貸してほしいって誘ったのが原因か?確かによく考えたらエマにしか頼んでないな、だから拗ねてるのか)
「そんなことないって、まずエマに挨拶しただけだ。その後すぐにみんなにも挨拶しようと思ってたよ」
「本当か~?」
「今日必要なのは、エマだけだからねー」
「おーおー、いいご身分になって」
(なんだ、今日のこの3人面倒くさいな。いつも冷静なグレンもこんなだし、アークに至ってはその台詞を言いたいだけだろ!)
「ほ、本当だって!エマしか誘わなかったのは謝るからさ、いつもの皆に戻ってよ!面倒くさいって」
そう言うとザック、グレン、アークの3人は笑い出した。そんな様子を見ていたエマは呆れ顔だ。
「全く誘われなかったからってケイにちょっかいかけるなんて子供ね~」
「お前は誘われたからいいけどな、俺達だって誘って貰いたかったんだぞ!ちょっかいかけるぐらい許せ!」
「それにたまには、こういうことをするのも楽しいしね」
「俺は眠い」
(なんだよただのちょっかいだっのかよ、本気でどうしようか焦ったわ、こうなったら俺も仕返ししてやる)
そう思った俺は悲しそうな顔で落ち込んでいる姿を装いながら、震えるような声を出した。
「悪かったって、今回は魔法に関する事だったからエマに頼んだんだよ。3人に頼るのもある意味失礼かなって思って」
そう言うとアーク以外の2人が焦りだした。
「ほら、あんた達が変なことするから、真面目なケイが真に受けちゃってるじゃない」
「う、嘘だって、別になんとも思っちゃいねーよ!」
「そ、そうだよケイ!あんまり気にしないで!」
「お前ら何焦ってんだよ、ケイのそれも演技だぞ」
「あれ、アークにはバレちゃった。まーこれでおあいこだよ」
「くっそ、こいつめー」
「なんだ演技か、焦っちゃったよ」
ザックが俺の首を遊びで締めたりして、じゃれ合っていると、ジークとクレアちゃん、トルーヤさんも近づいてきた。
「ケイ、その人達って誰だ?」
「冒険者の先輩?」
「いつまでも入り口で話してないで入ってくればいいだろ」
「ついつい話しちゃってました。あれ?クレアちゃんが知らないのは分かるけど、ジークは赤い牙って知らない?」
「んー知らないな、俺って大体冒険者ギルドでは依頼受ける以外いないから、情報に疎いんだよ」
「なるほどね、赤い牙って実はそんなに有名じゃない?」
俺のこの呟きにザックが反応してきた。
「おー言ってくれるじゃねぇーか、この坊主が知らないだけで、俺達は王都でも名が知れ渡ってるんだぞ?」
「ジークが知らないって言った後に、それ聞くと説得力がないよー」
「おいケイ、なんか俺の扱いだんだん悪くなってないか?」
「そんなことないよ、いつも尊敬の念をもって接してる」
「なんか、それはそれで気持ち悪いな」
「じゃあどうすればいいんだよ」
また言い合いを始めた俺とザックを止めたのは、またジークだった。
「だからその人達は結局誰なんだよ、紹介してくれ」
「ほらケイ、ザックとじゃれてないで私達のこと紹介しなさいよ」
「ジークごめん、じゃあ紹介するね。この人達はAランク冒険者パーティー「赤い牙」だよ」
そう紹介するとザックとクレアちゃんは驚いた顔をしていた。
「「Aランク!?」」
驚いている2人をよそに俺は紹介を続けた。
「それじゃあ紹介の続きをするよ。右からリーダーで大剣使いのザック」
「よろしく、ケイみたいにとは言わないが気軽に接してくれ」
「魔法使いのエマ」
「よろしくね」
魔法使いと聞いたクレアちゃんの目が輝いていた。
「弓術士のグレン」
「よろしく」
「双剣使いのアーク」
「まーよろしく」
紹介を教えると2人が俺に対して迫ってきた。
「お、おいケイ!聞いてないぞ、お前がAランクの人達と知り合いだなんて!」
「聞かれてないからね」
「ケイ!魔法使いの人がいるよ!」
「今日は魔法について教えてもらうために来てもらったんだよ」
「ほんと!?やったー!ありがとうケイ!」
興奮を抑えられていない2人の質問に答えているとエマに声をかけられた。
「ケイ、今度はその2人を紹介してくれないかしら」
「あーそれもそうだね。それじゃあ紹介しようかな。俺とパーティー「暁」を組んでいる大剣使いのジークとその妹である魔法使い志望のクレアだよ」
「ジ、ジークです!よろしくお願いします!」
「ク、クレアです!よろしくお願いします!」
(兄弟揃って同じ様な緊張の仕方だな。やっぱりAランクってのはすごいんだな)
緊張している2人を赤い牙のアークを除いた3人は微笑ましい表情で見ていた。
「やっぱり、新人の反応ってのはこういうのだよな」
「そうだよね、ケイなんてAランクって言っても全然緊張しないし、敬語じゃなくていいよって言ったらすぐにタメ口だったからね」
「まーそれはそれで接しやすかったから、こうやって友達になれたし、悪い事ではないけど、こういうのを見ると嬉しい気持ちになるわね」
(あーなるほど、普通の新人ならこういう反応になるのに、ならなかった俺が珍しくて気にかけてくれたりしたのか)
「紹介はこの辺で終わりとして、今日は俺じゃ教えられない魔法の知識をエマに教えてもらうために来てもらったから、得られる知識は得て、今日ジークは魔法を成功させよう」
「とうとう俺にも魔法が使えるようになるのか!」
「それじゃあ、エマ早速で悪いんだけど魔法について教えてもらっ」
てもいいかなと言おうとしたが、エマによって遮られてしまった。
「ちょっと!魔法が使えるようになるってどういうこと!?私てっきりケイに魔法の知識を教えるものだと思ってたわ」
(あっ俺、そこら辺の説明してなかったか)
「ごめん、説明してなかった。もしかして何か問題あったりする?」
「そうね、魔法使いっていうの大体師がいてその人から知識を引き継いでいくものなの、それで魔法使いには規則があって、その中の1つにその知識を引き継がせる弟子は1人しか駄目っていう規則があるのよ。もし教えている途中で弟子が死んでしまった時は新しい弟子を取ってもいいし、師が死んでしまった弟子は他の師に教えを乞うこともできる、そしてこの場合だけ弟子が複数人になっても平気なの。でもその例外とは関係なく規則を破ってしまうと内容は分からないけれど恐ろしい罰を受けるって師から教わってるの。私は元々弟子なんて取るつもりはなかった。だからケイを私の弟子として知識を教えようと思って、もし他の人にも教えるとなればそれは規則違反となって厳しい罰を受けることになってしまうわ、だからごめんなさい」
(弟子が1人なのは専売特許みたいに魔法使いとしての力を独占したいってことなのかな?)
「ううん、明らかに何も説明してなかった俺が悪いよ、俺の方こそごめん。それじゃあ、魔法にはどんな属性の魔法があるのかってことだけ教えてもらうのもだめ?」
「んーそうね、それは魔法使いとしての力とは関係ないから、そのくらいならいいわよ」
「ほんと!?それならそれを教えて!俺はそれが知りたかったんだよ!」
「そうなの?それならいくらでも教えるわ」
「エマありがとう、それと弟子を俺にするって話、俺じゃなくてクレアちゃんを弟子をしてくれない?」
「えっ!私?」
「その子を?確かに魔力量は多いけど、その子しか弟子に出来ないわよ?私は弟子を取るつもりはなかったから、才能ある子ならなおさら構わないけれど」
「それで十分だよ、クレアちゃんは魔法使いになりたいらしいから俺よりも適任かなって」
「そうなのね、分かったわ!よろしくね、クレア」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「ごめんなジーク、お前も魔法の知識を教えてもらいたかっただろ?」
「まー教えて貰えるんなら、教えてもらいたいけどよ。クレアを押しのけてまで教えてもらいたいとは思わねーから気にすんな。ケイに魔法の使い方を教えてもらっただけで俺には十分すぎるほどだぜ」
「そっか」
俺とジークがしんみりするような話をしているとエマが空気を壊しながら入ってきた。
「というかそこよ!その子が魔法を使えそうってのはどういうこと!?」
「あー俺が教えたから、ちなみにそこのクレアちゃんもトルーヤさんももう少ししたら使えるようになるんじゃない?これってさ魔法使いの規則的には駄目だよね」
「クレアだけじゃなくてトルーヤも!?ちょっと待って頭が追いつかないわ」
そう言ってエマは額に手をおいて上を見上げた。
「おい、トルーヤも魔法が使えるようになるってのはどういうことだよ!ずるいぞ!」
「僕も知りたいな、どういうこと?」
「ケイ、俺も魔法を使ってみたい教えてくれ」
トルーヤさんも魔法が使えるようになるという話を聞いて赤の牙の3人が俺に詰め寄ってきた。困っていると、エマが俺から3人を引き離してくれた。
「ややこしくなるからあんた達は黙ってなさい!そうね、ばれたら問題になるわね。とりあえず今の所バレてないからいいとして、これ以上教えるのはやめなさい、分かった?」
エマに怒られた3人は大人しく引き下がっていった。
(魔法を教えるのってだめだったのか、ここはエマの言うことに従っておいた方が良さそうだな)
「分かった」
「それなら今回の件は目を瞑っておいてあげるわ。それにしても3人に教えるなんて凄いわね。どうやって教えたの?」
「エマ達は俺の魔法の出し方が普通のものとは違うことは知ってるでしょ?その仕組みを教えてあげたんだよ」
そう答えるとエマは今までにないほど速く俺に詰め寄ってきた。
「ちょっと待って!!つまりこの子達も詠唱なしで魔法を使えるってこと!?」
「そうなるね」
「そうなるね、じゃないわよ!!ずるい、私だって詠唱無しで魔法を使いたいのに」
「んーエマにはお世話になってるし、魔法使いの人に教えるならいいでしょ?エマにも教えてあげるよ」
「ほんとう!?そうよね、新しい子に教えるのは問題だけど、私は元々魔法使いだからいいよね。やった!ありがとうケイ!」
あまりの嬉しさにエマは俺に抱きついてきた。引き離すのもどうかと思い、されるがままにされているとクレアちゃんの顔が不機嫌そうに見えるが気のせいだろう、その後少ししてエマが開放してくれた。エマの顔を見ると顔が赤くなっていた。
「ごめんね、取り乱しちゃって」
「気にしないで、それじゃあとりえず入り口で話してるのもなんだし、真ん中に行こうか」
俺達は真ん中に向かった歩き出した。
ーステータスー(11日後)
名前 木下 圭
年齢 16
職業 冒険者
レベル 14
HP 750 MP 530
STR 62(+18) VIT 77(+16)
AGI 107(+18) DEX 62
INT 67
残りステータス割り振り0ポイント
剣術Lv3 短剣術Lv3→4 up! 体術Lv4→5 up!
盾術Lv2 身体強化Lv5
生命探知Lv3 気配消去Lv3
投擲Lv3→4 up! 解体Lv2 鑑定
光魔法Lv2→3 up! 水魔法Lv2→3 up!
雷魔法Lv4 時空魔法Lv3
魔力量増加Lv3 魔力操作Lv4
詠唱破棄
SP90
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金貨1枚 大銀貨1枚 銀貨7 枚
大銅貨0枚 銅貨9枚
(117万0900円)
下級ポーション×9
中級ポーション×2
解毒ポーション×2
解麻痺ポーション×2
解眠りポーション×2
石剣 鉄剣 銀の小盾 鉄の胸当て




