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まぼろし病と患者達  作者: 風島ゆう
人魚姫症候群
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 夢を見た。


 住み慣れた大好きな土地を、星空の下ふわふわと浮遊する夢だった。

 夜なのに昴の目には色んなものがよく見えた。


 広がる農村風景。道端のトラクター。富士島医院。

 道を行く顔見知りのおばあちゃんの顔も、毎日のように医院にやってきては元気に喋って帰っていく地主のおじいちゃんの顔も、昼間のようによく見える。


 やがて馴染みの喫茶店の上空に差し掛かった。

 昴にとって、数々の転機を迎えた喫茶店だ。


 ふと、見えるはずのない店内が透けて見えるような気がした。

 この片田舎で今時レコードをかけるようなその店は、狭くて薄暗くて外観同様、内部も寂れている。


 一目で見渡せる店内。入り口のレトロなレジ台。

 馴染み深いその店の最奥、壁際のソファー席に、愛してやまない二人の人影が見えた。


 泣き腫らした目の藤花の手のひらを、樹の大きな手のひらが包み込んでいる。

 はにかむように笑い合う二人の微笑みを見て、昴はただ、幸せだった。


 再び星空の下に戻る。


 どんどん天に近づいていく昴の周りをシャボン玉に似た泡が追い越していった。

 星の瞬きを映した泡が風に流れては、ふつ、ふつ、と消えていく。


 どうか、二人がずっとずっと、幸せでいられますように。


 ぱちん、と弾けるその瞬間、昴は確かに藤花と樹の笑い声を聞いた気がした。


                   <星宮昴/人魚姫症候群 対処法拒絶ニヨリ、病死>


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