22話 四色
私の投稿遅すぎ……!?
すいません、サボってました。
「マスター。準備はよろしいですか?」
「ん……ああ。貰えるものは全部貰ったからな」
「では――転移を開始します」
シュー……と静かな音を立てて扉がスライドしてしまっていく。
俺たちは六道さんと別れた後、この円形エレベーターのようなもの(転移装置らしい)で外に出ることにした。女神に言われた通り、メアリーの体の入手と俺たちに役立つ装備やその他諸々は全てムゲン・リングの中に収納した。ホント便利な魔導具だ。まるで猫型ロボットのポケットみたいだな。
そんなことを考えながら俺は外に出るその瞬間を待つ。
が――一向に外に出れる気配がなかった。
「……?」
不思議に思った俺はメアリーに目を向けるが、メアリーは手元にある小型の機械を操作していた。
「マスター……どうやらこの転移装置に細工が施されているようです」
「……おいおい」
また森神か? いい加減にしてほしいんだが……。
「転移自体は問題ないのですが、転移座標が弄られていますね。如何しましょうか?」
「……その座標はどこなんだ?」
「一度目の転移座標より少し離れた位置を指していますが、これは……座標が移動している?」
「移動……?」
転移する場所が動いているってことか? ……どういうことだ?
メアリーの手元に顔を伸ばして見てみると、その小型の機械には小さな液晶がついており、その画面で小さな赤い点が少しずつ動いていた。だが、数秒もするとその動きを止めた。
「移動していた座標が止まりましたね」
「罠か……? メアリー。この転移装置以外にここを脱出する方法は?」
「いくつか方法はありますが、どれも現実的ではありません」
「そうか。――なら、覚悟を決めるしかないな」
神の妨害? そんなもん全て跳ね除けてやる。
こんな程度で俺は止まらないぞ。
女神は言っていた。《戦の代行者》の中で一人勝ち残れば、褒美があると。
その褒美で俺が元の世界に帰れるなら――母さんにまた会うことができるというのなら……!
「……行くしかないだろ! メアリー!」
「はい。マスターの思うがままにお進みください。私は、そのためにいます」
……待ってろ森神。お前の代行者を倒して吠え面かかせてやる。六道さんの無念も、晴らしてみせる。
そして一瞬の後、俺たちは外の大地を踏みしめていた。
目の前に広がるのは鬱蒼とした森と、太陽の木漏れ日。
…………。
「……二回めだけど、相変わらずよくわからん原理してるなぁ」
こう、なんというか。突然外に放り出されるこの感覚。
不思議な気分になる。
さっきまでの熱い感情が冷める思いだった。
いや、本当に冷めたわけじゃないからな?
「マスター。生体反応が真後ろにあります」
とメアリーのその言葉に俺は振り返る。
そこにいたのは男女の二人組だった。見た感じ……冒険者だろうか? 一人は腰に剣をさし、もう一人は背中に斧を背負っていた。その全身の装備を見る限り、俺のような新米とは違い、熟練と感じる使い込まれた装備だった。
「えーっと……」
もしかして俺たちが転移してきた瞬間を見たんだろうか?
その二人はビックリしたかのような表情のままジリジリと後退しているが、いつでも動けるように武器に手をかけ、俺たちを警戒していた。
「お、俺はコネクトの冒険者です。警戒を解いてくれませんか?」
「……」
「……」
二人とも無言で俺に視線をぶつけてくる。
いやまぁ、怪しさ満載だけどさ。
「あはは……?」
その二人は警戒しながら時折背後を気にかけるように顔と視線を少し動かしているのが、俺は気になった。
……何かあるのか?
「グライズ。どうするの?」
「……ここは一旦この坊主の言うことを信じて一緒にずらかるとするか……」
小声で相談しているようだが、俺の耳はちゃんと拾っていたりする。 便利だろ? プライベートもありゃしないけどな。
……ん? 奥から何か近づいてきてるな……これは足音か?
「坊主。俺たちの後方にヤベェ魔物がいやがる。俺たちはそいつから離れようとしてた途中なんだが――」
その二人のうち男は俺に話しかけてきた。もう一人の女はその男の言葉に「うんうん」と頷いていた。
なるほど。つまり逃げてきてたのか。その進行方向に俺たちが現れたと。けど
「――そのぉ、言いにくいんですけど。後ろにいるソイツですか?」
俺の言葉に二人組はゆっくりと振り向き、ソイツを確認した瞬間――
「グオオオオオオッッ!!!」
「――逃げるぞチャリスッ!!」
「あいよぉ!」
脱兎のごとく。俺たちには目もくれずに疾走していった。たちまちその二人の背中は見えなくなった。武器を背負っててあの速さはすごいな。
「んー。デカイなぁ。流石ファンタジー系の定番って感じだな」
コイツが竜種……ドラゴンってやつか。それにしても……すげぇ色してんな。
赤や黒に青といった色が体のパーツごとに色分けされており、とてもカラフルな体色だ。目に悪いな。
「メアリー。このカラフルなドラゴンが何かしってるか?」
「解析――恐らく、カオスドラゴンの近種です。私のデータの中には該当しませんが、似ているものは幾つか存在しています」
「ほー」
その獰猛な視線を俺たちに向けながら首をもたげ、大音量で吠えるその姿はとても迫力がある。俺の本来の人間の体だったら腰を抜かしてただろうな。
今はメンタルも体も鋼みたいなもんだから問題はない。
すると、唐突に 『カオスドラゴン:四色種』と頭の中で浮かび上がってきた。 四色……ああ、白と赤と青と黒か。
なんでこんなカラフルな体色になったんだ? コイツ。
「マスター。どうやらこのカオスドラゴンは私たちを敵……いえ、餌と思っているようですね」
「そうだな。涎ダラダラ垂らしてるしな」
「グオオオッ……ッ!!」
常人を震え上がらせるような咆哮を上げながらカオスドラゴンは俺たちに突進をかましてくる。
それを俺は軽くサイドステップで避けながら戦闘態勢に移る。腕と脚を機甲化させ、ビッ……と構えを取る。
「こいよカラフルトカゲ。どうせお前も森神関連なんだろ? ――叩き潰してやる」
「グオオオオオオッッ!!」
その咆哮の返しに俺の口角は上がる。
カオスドラゴンは足を踏み鳴らしながら咆哮を上げ続けていた。それはまるで馬鹿にされた事が分かっているかのような、怒りの咆哮だった。
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作者のやる気パワーが溜まっていきます




