23話 狩の術
ブックマークが貰えていたので、現金な僕は続きを書きました。
最近スマホで執筆しているので変な誤字とかあったらごめんなさい。
唐突だが、俺の戦闘スタイルは空手がベースだ。
厳密には空手だけじゃない。俺に格闘技を教えてくれた近所の爺さんが言うには、「ワシの武術は基本が空手。あとはワシのアレンジじゃ」と言っていた。
そのアレンジが大抵は対人戦で発揮されるような小技や、急所狙いの危険なものばかりだった。
当時の俺は疑問も持たずに教えを受けていたが、それがおかしいと思い始めたのも最近だった。
……けど、そのおかげで銀行強盗を制圧することが出来たんだけどな。
――ま、結局死んで、こんな所でゲームに出てくるようなモンスター相手に対人空手を披露しているわけだが……。
「グオオオ!!」
「硬ってぇな…! 随分丈夫な鱗じゃねぇか!」
振り下ろされる死という名の爪をステップで避け反撃を与える。殴るたびにガン、ゴン! とまるで鉄を鈍器で殴ったような硬質な音が鳴る。
俺の拳が痛む気はしないが、かといってこのドラゴンにダメージが入っているのかわからない。
「とりあえず殴ってみた感想は……めんどくせぇ、だなっ」
横薙ぎで高速に接近してくる青い尻尾を避けながら俺は冷静に分析する。
今のところ自分からは仕掛ける事はしていない。様子見の意味もあるが、出来るだけ守りを重視したい。
こんな化け物相手に攻めに出れるほど俺は強気じゃないってことだ。
「マスター。私も加勢します」
「いや、メアリーは安全な所で待機しててくれ! これは俺の力試しみたいなもんだ! だから、一人でやらせてくれ」
「了解しました。私は離れた位置でマスターを見守っていますね」
そう叫びながら伝えて俺はメアリーを遠ざけた。
メアリーは了承して多少離れた茂みに隠れていった。
そう、これは力試しだ。
俺がこの機人の体でどこまで戦っていけるのか。どんな相手でも、問題なくやり合えるのか。
今の俺とこのドラゴンの構図的には、ライオンとネズミだろうか? それくらいのサイズの差がある。だが、これくらいで躓くなんてありえない。そんな事じゃ代行者同士の争いに勝ち残れない。俺はそう確信してる。
「……よし。とりあえず普通に空手をすんのはこれくらいでいいか」
「グオオオッッッ!!」
俺は構え解く。
そして、また構えを取る。今度は空手の構えじゃない。俺の構えだ。
「人相手には空手が丁度いいけどよ。化け物相手にはそれ相応の武術があるんだぜ……!」
俺が爺さんから学んでいたのは空手(爺さんアレンジ)だけじゃない。裏、と言うべきか。
何故か爺さんは大型の獣や、空想の生物を相手取る時を想定した武術を俺に教え込んだ。
爺さんはいつもこの裏と言うべき武術を『狩の術』と呼んでいた。
こんな意味もない武術、なんの役に立つんだ。と、常々思っていたけど、思わぬ事でそれが役に立つ時が来た。
「えーっと確か、ドラゴンを相手にする時は兎に角懐に飛び込んで殴る、だったか」
対ドラゴン用の武術の記憶を思い出すために足を止めていたが、ドラゴンは構わず攻撃を仕掛けてくる。
俺目掛けて火炎放射器の如く火を口から放つ。それを横目に俺は素早く斜めにターンをして避け、その勢いのままドラゴンの横っ面に回し蹴りをぶちこむ。脚のブースターの加速付きでだ。
「グオォッ!?」
「はは! ちったぁ効いたかぁ?」
体勢が少しグラついたのを確認してから俺はドラゴンの腹の下にスライディングして入っていく。
このドラゴンは四足歩行のタイプみたいだが、俺が立つことが出来るほど足が長く、胴の下は広い空間が出来ている。
「ん〜。弱点っぽいもんは無しと。まあいいか。とりあえず――殴って確かめる」
――連打。連打。連打!
腕のブースターを吹かし、煌めく光が俺の拳を加速させる。超高速のラッシュはドラゴンの腹にマトモに命中していく。
「やっぱかてぇな……けどなぁ! オラオラオラオラ!」
同じ箇所に集中して衝撃が加えられるとどうなるか? 答えは簡単だ。
俺の拳が命中していた箇所は徐々に凹んでいく。
最初こそ鉄を殴る感触だったが、それも少しずつ変わっていく。
「グオッ!? グオオオオ!?」
「オラァッ! ……お、効いてる効いてる」
いくら硬くても、一定の衝撃を与え続けたらどんなものでも壊れ始める。それがたとえ、ドラゴンだとしても。
ドラゴンは堪らずといった風に咆哮を上げ俺を押しつぶそうと姿勢を低く行動する。
迫ってくる赤い腹から目を外し、すぐさま脱出する。
また正面でドラゴンと対峙するが、さっきと違い殺意が篭った眼光が俺に向けられているのがわかる。
どうやら餌ではなく殺すべき『敵』と漸く判断したみたいだ。
「ふん! たかがデカイだけのトカゲが舐めてっからしこたま腹ぁ殴られるんだよ、バーカ」
「グオオオオ!! グオオオオオオッッッ――!!」
俺の罵倒が分かっているのか、ドラゴンは吠える。吠える。この一帯に響き渡るかのような声量で。
……うん、うるさい。
俺は思わず耳に指を突っ込んで顔を顰める。
「チッ……あ?」
異変は直ぐに起きた。
唸り声を上げているドラゴンの体から、四色の煙が上がり始めていた。それぞれ両腕、尻尾、体、からそのパーツの体色の煙を。
「第二形態って感じか? ……次は羽でも毟ってやるか? いや、頭を殴って牙を――!?」
――その濃厚な死の気配に俺は距離を取ってしまった。 まるで、本気の爺さんを相手にしていた時のようだった。
「こりゃ力試しどころじゃなったか」
ドラゴンにとっては元からそうだろうが、俺にとっては今からが……『殺し合い』だ。
よければブクマや評価をお願いします。
作者のやる気パゥワァが充填されます。




