幕間3 脅威に接近するは、暴武。そして……
今回ちょっと長めです。本編に繋がりました。
評価、ブックマーク有難うございます!
幕間はこれからもちょくちょく入れていくので、よければ読んでもらえると嬉しいです。
「ねぇグライズ〜。ここって今どこらへんなの?」
「ったく、そんくらい……いや、いい。さっき森の深部に入れたところだな」
「へぇ〜。どうやって深部に入ったってわかったの?」
またこれか。とグライズは内心嘆息する。相棒であるチャリスはとにかく疑問をグライズにぶつける癖がある。それに苦労するのがもちろん、グライズである。
「周りをよく見ろ。深部でしか取れない『魔力草』がチラホラ生えてるだろ? それが証拠だ」
そう言って指さすのは、青みがかかった三つ葉が垂れ下がって生えている……通称、魔力草だ。
この魔力草は空中に存在している魔力を微量ながら吸収することができる特殊な草だ。利用法としては、薬にしたり、そのまま食べて魔力の回復に使われたりと用途は多い。
「物知りだねぇ私の相棒は。……それにしても、 案外早く深部につけたねぇ。ここら辺の魔物はちょっと苦労しそうだから、グライズにも手を貸してもらおうかね」
「あほ。んなことしてたらいつまで経っても調査が終わんねぇだろ。只でさえ現れる魔物とお・ま・え・が! 毎回戦闘を始めるせいで時間を食ってんだぞ。だから、先に言っとくが……喧嘩は売るな。……ああ、買うのもダメだぞ」
「うぐっ……わかったよ……はぁ」
先に釘を刺されたチャリスは、思わず呻き声を上げ、すぐに了承した。その様子にグライズはやれやれ、と頭を振って調査を再開した。
「ここにも足跡があるな。……こっちもか」
「グライズ〜……暇なんだけどぉ」
「うるせぇ! お前も調査の手伝いくらいしやがれ!」
「そんな怒んないでよ〜。わかったわよ、何したらいいの?」
思わず怒声をあげたが、相棒には効かない。
飄々とした態度で躱されるのはもう慣れている。と言わんばかりにグライズは指示を出す。
「ここに小さな足跡が複数があるんだが、どの足跡も向かってる方向が一緒なんだよ。だから、ここにある足跡以外にも足跡があるか探してきてくれ」
「あいあいさー。それだけ?」
「それだけだ。難しいこと言ってもわかんないだろお前は」
その言葉にチャリスは「その通りだねぇ」と答えてから別の足跡を探しに行った。残されたグライズは大きい溜息を吐いてから足跡の痕跡を辿り始める。
「ふむ。ここから更に別の足跡も合流してるな……小型の魔物同士が群れてどこに行こうってんだ?」
足跡を辿っていく途中、別の方向からの魔物の足跡も発見したが、どうやら行き先は同じようだった。
その足跡を追う途中、グライズはついでとばかりに怪我に効く薬草や、美味と言われる木の実などを少し採集しつつ、ほくそ笑んでいた。 魔の森の深部は素材の宝庫だ。
(調査のついでだ。これくらいなら荷物にならんしな)
普段あまり人も来ないのもあって取り放題になっている。ここぞとばかりに自身の懐をあっためているグライズなのであった。
その一方。 チャリスは言われたとおりに足跡を見つけ出し、その痕跡を辿っていく。道中で何体か魔物を発見したが、これ以上依頼に時間をかけるとまたグライズにどやされる、と思い留まり……我慢した。
「おっ」
「あっ」
そうして両者は痕跡を辿っていった先で合流する。
「お前のとこの足跡も合流か」
「そうみたいだねぇ」
複数の魔物の足跡はまだまだ先に続いていた。チャリスとグライズの二人は無言で頷きあい、痕跡を追う。
ーーグオオオオオオオッ!!
「「!?」」
その大きな咆哮に二人は同時に己の武器を構え、周囲を警戒する。だが、襲ってくる気配は無かった。
……次に聞こえてきたのは……バリバリ、グチャグチャ、という大きな咀嚼音。
「……行くぞ。チャリスは後ろを守れ」
「……うん」
小声で指示を出し、前後の警戒をしながらゆっくりと咆哮の元へ近づいていく。
(……体の芯がビリビリしてやがる。こりゃあ、かなりの大物がいやがるな。……ったく、めんどくさいことにならなきゃいいがな)
(いい咆哮だったねぇ。最近中途半端に強い魔物しか狩ってなかったから、期待だねぇ)
不安と期待。二人の心境はまったくの正反対といっても良かった。
咀嚼音が近くなってくる。二人は緊張しながら茂みからそっとその広場に目を通した。
「おいおい、ありゃぁ……!」
「アハ……竜種、だねぇ……!」
ーー竜種。別名ドラゴン。最強の魔物の一角に連なる生物。
その鱗は鉄の剣を弾き、その爪は地を裂き、その翼は天を支配する。その巨体は畏怖の塊である。……そんな常套句があるほど、ドラゴンは有名な魔物だ。
目の前にいるこの様々な色が混ざり合ったような鱗の表面を持つドラゴンを確認した一瞬で、二人の中の警報が最大音量で鳴り始めていた。
「……間違いねぇ。コイツが魔の森の異変の元凶だ。見ろ、ゴブリンや大ネズミを食ってやがるぞ」
「あ、ホントだ。……あ、後ろの茂みからまた出て……食われたねぇ」
チャリスの言う通り、小型も魔物がドラゴンの背後から現れ、フラフラとした足取りでドラゴンの目の前にいき、その体ごとかぶりつかれていた。
(……自分から食べられている? コイツ……もしかして特異個体……いや)
特異個体。それは魔物の中でも特殊な立ち位置にいる魔物だ。大抵はその種の中で異様な強さを持っているのが殆どだが、このドラゴンのように見た目からして異常をきたしている魔物は、更に危険度が増すと言われていた。
どれも総称は特異個体だが、冒険者の中ではーー
「この異様さ、ただの特異個体じゃねぇな。……間違いなく厄災個体に近い何かだ。……おい、チャリス」
「……んー? どしたのグライズ」
「呆けてる場合じゃねぇぞ。さっさと退いて、この事をギルドに報告だ。いつまでもここにいちゃぁ命が危ないぜ」
「えぇ〜? 戦わないの? ……わ、わかったからそんな目で見ないでよ」
ここまで戦闘狂いだったのか、とチャリスに殺気が混じった目で睨みつけた。流石に命がかかった状態で尚且つ、退けるチャンスがあるのに退かないというのは馬鹿げた事だとグライズは考えていた。
この考えこそが、この二人は強くした。
戦闘経験がほかの冒険者とは違う。長年冒険者を続けている者はどれだけ生き残ったかで決まる。その中でも比較的若い部類に入る二人は既にランクⅧの冒険者。
一体どれだけの修羅場をくぐったのか。それを物語っているのが二人の二つ名であり、冒険者の格だ。
その冒険者の勘が、目の前の光景がーーコイツはヤバイ。と伝えていた。
「よし、ゆっくり離れるぞ。いいか、足音はたてるなよ」
「……わかってる」
ゆっくりとした足取りでジリジリと後退していく。
チャリスは少し残念そうに返事を返していたがーー
(まぁ戦えないのは残念だけど……一人だと殺せない……寧ろ殺されるね。やっぱり竜種は危険だわ。グライズにも怒られたし、素直に逃げるとしますか)
内心ではそんな事を考え、納得していた。
数メートルほど離れ、少しだけ安堵の息を吐いたグライズだったが、ここで予想外の事が起きた。
さっきと同じように前後の警戒をしながら退いていた二人。その後ろを警戒していたチャリスから肩を叩かれた。
「どうし……うっなんだ!?」
「地面が光ってる……」
グライズは即座に振り向いたが、その地面の光を直視し目を背ける。 チャリスは目の前に手をかざして光を遮る。
そうして数秒後に光はおさまった。
「一体なんだったんだ……!?」
「二回めだけど、相変わらずよくわからん原理してるなぁ……」
「マスター。生体反応が真後ろにあります」
グライズとチャリスの目に写っていたのは、輝く銀髪を無造作に流した少女と、その少女より頭二つ分ほど身長が高い全身が黒い男の二人組がそこに立っていた。
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