幕間2 調査依頼
お久しぶりです。またまた幕間ですが、一応本編に繋がっていくのでご容赦お願いします
幕間なので三人称です(今更)
「さて、魔の森に来たのはいいけど……どんな調査をすればいいの?」
チャリスとグライズが魔の森の浅い場所に入ってすぐ、チャリスは振り返りながら相棒にそう訪ねた。
「ったく、依頼内容くらい目ぇ通しとけって何度も言ってんだろうが。しかもギルド直々の依頼なんだからよぉ」
「はいはい、小言はいいからはやく教えて頂戴な」
「ったく……」
いつもグライズが口酸っぱく注意している事だったが、今回も軽くあしらわれているあたり、チャリスは相棒の注意を受け止めることはないのだろう。グライズは嘆息してから口にし始めた。
「依頼内容は魔の森の調査。主な調査は魔の森の浅い層に現れ始めた、中級の魔物の調査だな。普段は深い層にしかいない魔物が浅い層に出没す原因を探ってほしい……ってことらしい」
「なるほどねぇ……っと。早速お呼びみたいだよ」
「シェララララ……」
独特な鳴き声を発っしながら現れたのは、二足歩行の蜥蜴。身長は2メートルを超すであろう巨体を持つ
魔物。名は『ラージリザードマン』。中級に属する魔物だ。
手には太い木の棒を持ち、体にはボロボロの皮の鎧らしきものを身に着けていた。
「ほう。確かにこんな浅い所で現れる魔物じゃねぇな。どれ、俺が蹴散らして――」
「ヒャハッ!」
そんな叫び声をあげながら突撃していくのは――人間であるチャリスだ。チャリスは自身の武器であるレイピアを捧げるような形で顔の前に構え、猛接近していく。
その行動に『ラージリザードマン』は少しだけ体を強張せたが、中級の魔物だ。すぐに迎撃という態勢で待ち構える。その魔物の対応にチャリスの口角は上がっていき、――さらに突進速度が上がる。
「シュラララァ!」
「アハッ!」
『ラージリザードマン』はチャリスの顏目がけて木の棒をフルスイングする。だが、当たらない。
それを読んでいたとばかりにチャリスは体勢を低く――地面すれすれを走り抜けるように『ラージリザードマン』と交差した。
チャリスはレイピアを一振りし、ラージリザードマンの体を押した。するとその巨体は身動きせず、何の抵抗もなく地面に横たわった。
「この馬鹿! 特異個体の魔物だったらどうすんだ!」
「大丈夫だって~、どっちみち殺すしねぇ」
グライズは戦闘が終わると即座にチャリスに詰め寄ったが、飄々とした態度で躱されるのはいつものことである。
「はぁ……。で、ちゃんと急所は狙ったんだよな?」
「当たり前じゃない。じゃないとこんな悠長に話してる暇なんてないんだし?」
チャリスは倒れている『ラージリザードマン』を一瞥してからレイピアを鞘に戻した。
「忘れてねぇか? そんなこと言って動き出した魔物もいただろ! この馬鹿!」
「え~? いたようないなかったような」
「ったく、お前が相棒だと苦労するぜ、ホントによ」
といつもの小言を呟きながらグライズは『ラージリザードマン』に近づき、慣れた手つきで解体をし始めた。
魔物には下級、中級、上級、特級とそれぞれ四つの区別分けがされている。これは単純にその魔物の強さで分けられているが、その中で魔石を体内に持つのは中級以上の魔物だとされている。魔物の核……つまりは急所。
先ほどチャリスはこの核を正確に貫いたのだ。それも驚異の突進速度を合わせながらだ。大抵の魔物はこの急襲でその命を散らす。稀にその攻撃を防ぐ魔物もいるが……それはただチャリスを悦ばせるだけなのである。
(毎度思うが、この戦闘狂はどうにかなんないのかね。確かに一撃で勝負が決めれるのはいいんだが、高く売れる魔石を貫かないとダメってのは、なんとも残念なところだ)
グライズは解体を行う傍らで、そんなことを考えているのだった。
「解体終わった? それじゃあ奥に行くわよ」
「ああ。だが、次からは魔物を殺しても解体はしないぞ。分かってると思うが、かなり手間なんだ。今回は討伐の依頼じゃないし、さっさと調査を終わらせて帰りてぇ」
「そう? 高く売れる部位だけでもとっていったらいいんじゃない?」
「おめぇの戦い方だと一番高く売れる魔石がダメになるじゃねーか! だから解体はやらん!」
鼻息荒くそう返したグライズはズンズンと奥に進んでいく。それに対してチャリスは「あっ、そうだった」と一言笑ってから後に続いた。
「――おかしい」
「……? 唐突にどうしたの?」
グライズが足元にしゃがみながらそう呟いた。地面に広がっているのは、踏みならされた草だ。
「今俺たちがたいして苦労もなく進めてきてるのは、何かが通った後がある草の道があるからだ。けどな、俺が通ってるこの道。見た感じどれも通った足跡は小さいんだよ」
「へぇ。よくそんなことがわかるね。で、それがどうしたんだい?」
「……あのよ。調査なんだからお前も何か気づいたら言ってくれていいんだぞ?。別に俺、頭がいいわけじゃないからな? それを頭に入れてよく聞いてくれよ」
この手の依頼の最中、大抵はグライズが苦労を強いられていた。基本てきに相棒のチャリスは魔物との戦闘を主に行っているため、頭脳労働的な作業はグライズに丸投げである。それにグライズは「勘弁してくれ」と常々思っているのだが……。
「アンタは頭が回るけど、頭が悪いってことでしょ? わかってるから、安心しなよ~」
「…………」
これである。そんなことは当然とばかりに答えられると、わかっていても傷つくのが人間。グライズは内心で悲しい気持ちを抱きつつ、一つ嘆息してから話し始める。
「先ず、この草の道は俺が来た方向から作られてる。さっき言った通り小さい生物……まあゴブリンくらいの小型の魔物の足跡だな。それくらいの生物が通った後だ」
「ふんふん。それに比べて、私の通ってる道はだいぶ草が倒れてて広いけど、これは大きい魔物が通った後ってことでいい?」
「ほう。チャリスにしては考えたな」
そう。グライズが通っている草の道に対してチャリスが歩いている道は明らかに広く踏みならされていた。それだけ多くの魔物が二人の通っている草の道を歩いていったという事だ。
「まあそんくらいはね。続きは?」
「おう。ここでおかしいのはだな……大型の魔物が浅い層に向かってるのはわかったが、なんで小型の魔物が奥に向かっているのか……ってことだな」
「え? 弱い魔物が強い魔物が棲む奥地にいってるってこと?」
「ああ。まあ俺の勘も入った考えだがな」
現段階でわかるのはそれぐらいのものだった。この道中、中級の魔物には何度か出会っているが(全部チャリスが片づけている)下級の魔物には一切出会っていなかった。そのことも頭に引っかかるグライズだった。
「……ま、奥に行きゃわかるだろ。こんなところでぐずっててもしょうがねぇ。いくぞ」
「あいあいさー。中級ばっかは飽きるし、上級の魔物とか出たりしないかねぇ」
そこまで強い相手が出てきたら、ようやく俺の出番だな。とグライズは背負っている斧を微かに揺らし、先に進んでいった。
ブックマークや評価をよければお願いします
ちなみにチャリス(女)が暴剣。グライズ(男)が武斧で、暴武の剣斧です。




