9話 ギルド長公認『ランク』
2019 十月五日 加筆と修正、改行などしました
受付嬢とカイル少年から怪訝な表情で見つめられた。
「……失礼ですが、あなたの冒険者ランクはいくつなのでしょうか?」
「えっと……多分ランクⅠ……かな?」
自分のランクのことを聞いていない俺は適当にそう答えた。だって、わかんないし。
そう答えた俺に受付嬢は微妙な顏をして溜息を吐いた。
「親切心はいいことですが、その心意気に実力が伴っていないのなら……0点です」
「そうだぞ、にいちゃん。ランクⅠのくせに口出ししないでくれよ」
二人からの容赦のない口撃が、俺を襲う。
……えっ? なんで俺が責められてるんだ。おかしい。
「だ、大丈夫。俺は強いんだ。 ゴブリンなんて一ひねりだ!」
俺は容赦のない口撃に耐え、かろうじてそう答えた。
「……では、プレートの提示をお願いします。討伐した魔物の数を確認させていただきます」
もはや冷たい目で俺を見てくる受付嬢は淡々とした口調でそういった。
うん、辛い。
「……プレートは持ってないです」
「――あなたは……本当に冒険者なのですか?」
「えーっと、今日冒険者になったばかりの新人……です」
受付嬢の目からは温度が無くなり、しまいにはカイル少年の顏からは表情が消えていた。
……お、俺は間違ったことは言ってねぇ! 俺は悪くねぇ! ……やべぇ挫けそう。
「あはは……」
もう苦笑いをするしかない。
とても頭を抱えたい衝動に駆られた。
すると、突然背後から野太い声が聞こえてきた。
「おっ、ここにいたかジン! おめぇのギルドタグ作んのに遅れちまってな。ほらよ」
後ろから太い腕が伸びてき、カウンターにジャラリと金属音を鳴らしながら『銀色のドックタグ』のようなものが置かれていた。
こ、この声は……!?
バッと振り向くとそこにいたのは、ギルド長こと、ゼンその人だった。
「ゼンさん! 助かった!」
マジで助かった……! これ以上この二人の視線に晒されていたら、俺は死んでしまうところだった!
……主に俺の心がな!
「お、おお?」
「……ギルド長! この人は本当にランクⅤなのですか……?」
受付嬢はいつの間にか俺のギルドタグを手におっさんにそう尋ねていた。
……ランクⅤ?
「マジかよ! にいちゃんすげぇ!」
カイル少年はさっきと違い尊敬の念が込められているキラキラした眼差しでこちらを見ていた。
子供のくせに現金なやつだなおい。
「ああ、俺が直々にテストをしたからな。 その結果、ジンの実力はランクⅤ相当で間違いないっつーよな俺の判断だ」
「……なるほど、ギルド長が直々に……」
「えっ。俺いきなりランクⅤからなの?」
いきなり四つもランクが飛んでいたものなのか?つーか、テストってあの殴り合いだろ? あんなので決められるのか……。
「ったりめぇだ。テストだっつっても、この俺をガードの上からとはいえ、ふっ飛ばしたんだぞ? 新人でそんなことができるやつなんて滅多にいるもんじゃねぇ。それに俺の攻撃も耐えてみせた。それだけでランクⅤ相当の実力があるってことだ」
「いや、あれはゼンさんも本気出してなかったような……」
「――ごちゃごちゃうるせぇ! 俺がランクⅤって言ったらランクⅤなんだよ! わかったらさっさとその『ゴブリンの群れ討伐』いってこい!」
怒鳴ったおっさんは有無も言わさない勢いで依頼の手続きを強引に行い、俺とカイル少年はギルドの外へ放り出された。
……色々と雑過ぎる、あのおっさん。
「……にいちゃん、ホントにいいのか?」
カイル少年は不安そうな顔で見上げてくるが、無粋な言葉は無しにしよう。
「――ああ、任せろ。なんたって、ランクⅤだからな」
俺は笑顔でサムズアップして、自信満々にそう返した。
―◇◇◇◇◇◇―
「なぁ。にいちゃんはなんで俺と一緒に依頼をしようと思ったの?」
森に向かって歩いている道中、カイル少年はそう尋ねてきた。
そりゃぁ……病気の母親を助けるっていう気持ちがわかったから、つい助けたくなった……って聞いたらな。
そもそもあの呟きは、ホントに周りに聞こえるか、聞こえないか、それくらいの声量だった。それが偶然俺には聞こえてたからなんて言えないし……。
「丁度この依頼をこなしてみたかったんだよ。なにしろ初めてだから……そこそこの難易度の依頼で腕試しを、な?」
適当な理由で誤魔化した。
それに対してカイル少年は「そっかー!」と納得の声を出してくれた。よしよし。
「……あ、俺の事はカイルでいいよ! 手伝ってくれてありがとうな! にいちゃん!」
ピカーっとした笑顔に俺は目を背けてしまう。
やめろ! 子供の純粋な笑顔は俺に効く……!
「よ、よし! カイル、森に着くまで競争だ!」
「えっ!?」
「ほら置いてくぞ!」
少し恥ずかしくなった俺が逃げるように口にしたのは、唐突な競争宣言。
俺はカイルを置いていかない絶妙な速度で森に向かって走り出す。そして後に続くカイルは困惑した声を上げていたものの、ちゃんとついてきていた。あの歳で冒険者になるだけあってそれ相応の身体能力はあるようだった。
そうして数十分後――競争と言いつつ休憩を挟み、俺達は森の入り口に到達したのだった。




