10話 ゴブリンの群れ討伐。近づく同族?
ガッツリ内容が変わった10話になってしまいました。なので今後も話の細かい変更と加筆を繰り返します。頑張って面白くするので、よろしくお願いします。
森へ入って数十分が経ってから最初に現れたのは、短剣を装備したゴブリンが一匹だ。
襲ってきたので難無く撃退すると、カイルは「すげぇー!」と声を上げていた。
ちなみに短剣を装備したゴブリンの個体名は『ゴブリン・スカウト』だった。
スカウト……確か斥候とか偵察って意味だった気がする。つまりなにが言いたいかと言うと――
「に、にいちゃん! 前にゴブリンの群れ……!」
「おう、わかってる」
まあこういうことだな。 さっきから頭の中に浮かんでいる『地図』に赤い点がポツポツと現れ始めていた。ちなみに、これはメアリーのアシスト機能の一つ『地図』と言うらしい。ちなみにこの森は既にマッピング済みだ。
これが凄い便利なのだ。生体反応というのが確認できたり、敵対意思があるとそれが赤く光る。あとは道標に距離の計算までできるとか。
便利過ぎて一生お世話になりたいくらいだな?
「にいちゃん! そっちに二匹いったよ!」
「ん、わかった」
考え事をしながら俺は今相手している一匹を軽く殴り飛ばす。そしてカイルが言った通り新たに二体接近していた。一匹は錆びた剣を持った個体と、そこそこマシな鎧――錆びて汚れているが――を着たゴブリンの二匹。
ちなみにカイルも一匹だけ相手をしている。カイルの武器はショートソード。普通の剣より短いが、ナイフよりは長いという特徴を持つ武器だ。カイルの体格的にあの武器がちょうどいいんだろう。見たところ健闘しているようだ。まあ、必死に避けているだけように見えるけど。
「ギャッギャッ!」
「ゲア! ゲギャア!」
――ふむ。この二匹は『ゴブリン・ソードマン』と『ゴブリン・リーダー』という名前みたいだ。
この個体名が頭に浮かんでくるのは、アシスト機能の一つ『解析』というものだ。
メアリー曰く、データに在る近い存在を表示するとかなんとか。
少し離れた場所にいる『ゴブリン・リーダー』がもう一匹のゴブリンになにやら指示らしきものを出していた。
それが合図になったのか『ゴブリン・ソードマン』が斬りこんでくる。その斬撃を機甲化した腕で受け流し、流れるようにそのまま肘鉄をぶち込む。ゴブリンはその場で倒れ、ぽっかりと穴が穿たれた胸から血を流していた。
「ケギャギャァー!」
「ゴブリン程度の斬撃なら簡単に受け流せる……随分と使いやすいな、この……――機甲化だったか?」
怒り狂ったような声を出した『ゴブリン・リーダー』は、手に持っていた斧をぶんぶんと振り回し突進してくる。
丁度いい、試してみたいことがあるんだ。
「ゲアギャッーーー!」
突進してきたゴブリンの振り下ろし攻撃に、機甲化した腕で受け止める。
すると、腕に直撃した斧は刃の部分が半分ほど砕け、木の柄だけ寂しく残っていた。
「ゲ、ゲギャァ?――ブゲッ」
――呆けてるところ悪いな。
木の柄と俺の腕を行き来していた顔は俺の蹴りによって陥没し、後方にその体ごと吹き飛んでいった。
今回はただの蹴りだから陥没だけで済んだみたいだ。まあ、即死には変わらない。
「強度もしっかりとあり、と」
この機甲化は機人族特有の能力だ。銀色に鈍く光り、複雑な溝や線が走っている腕はとても機械的だ。
ちなみに、この機甲化の使い方を教えてくれたのメアリーだ。森への道中に頭の中で説明してくれた。というのも、俺が頼んだから教えてくれたのだが。
その方法とは、変化させたい部位にイメージを集中させ、ただ念じるだけ。
ようは変化させる意思を持って部位に意識を集中させるだけだ。……理解すれば簡単だよな。
……まあ、成功させるのに三十分くらいかかったけどな。指先だけ機甲化したり、なぜか別の部位が機甲化したりとせわしなかったのはついさっきの出来事だ。
その際中にカイルには怪訝な顔をされたが、なんとか誤魔化しながら練習した。
「に、にいちゃあああん!」
悲鳴に近いカイルの叫び声で現実へと戻された。一体どうしたんだよ――ってやべ。
「カイル! こっちに逃げてこい!」
カイルの背後では十匹ほどのゴブリンが武器を振り回しながらカイルを追いかけ走り回っていた。
完全に忘れてた。群れなんだから、さっきの奴らで終わりのはずがない。
どうやら俺を襲ってこなかったゴブリンは全てカイルの方に向かっていっていたようだった。
カイル、ほっといてスマン。 よく生きてたな。
「死ぬかと思ったぞ、にいちゃん!」
プンプンと頬を膨らませながら俺の足を蹴りつけて怒りを示してくるカイル。
つーか蹴るな。 ちょっとだけ痛いからやめてほしい。
「悪かったよ。考えごとしてたんだ」
「魔物を前に考えごとって……流石はランクⅤ、余裕じゃん」
「ランクⅤの新人だからしょうがないさ」
と言う感じで軽口を言い合いながら、俺とカイルはゴブリンの証明部位である右耳をゴブリンの死骸から集めていた。
これがないと報酬が出ないし、倒したという証明もできないらしい。
「――これくらいか? ……よし、サーチ頼むよメアリー」
『畏まりました。サーチ開始――』
残りがいないかどうかだけメアリーに探索を頼む。
俺の付近にいるゴブリンの右耳はあらかた切り取り終わっており、カイルの方もあと一、二匹くらいで終りそうだった。倒した数はざっとニ十匹。いくらゴブリンとはいえ、それなりの報酬は期待できそうだな。
『――マスター。前方から強い生体反応を確認』
「強い生体反応? ……魔物か?」
まだ俺の地図には反応はない。
ゴブリンの他にこの森に棲んでいる魔物だろうか?
まあゴブリンが棲める森なんだから、大した魔物はいないだろうな。
『いえ、魔物ではありません。マスターと極めて酷似した生体反応を確認』
「……マジで?」
それってつまり機人族ってことか?
……俺以外にもいたのか、お仲間さんが。
「にいちゃーん! こっちは剥ぎ取り終わったよー」
カイルは腰の皮巾着をポンっと叩きながらこちらに歩いてきていた。あそこにゴブリンの右耳が入っているんだろうな。……俺のは集めて地面に放りっぱなしだから、あとで入れてもらおう。
まあ今はそれよりも――
「メアリー、コンタクトはとれそうか?」
『……既に試してみましたが、あちらから拒絶されてしまいました』
「そうかぁ」
うーん、ダメか。
っていうか、なんとなくメアリーに頼んだけどできるんだな。
「にいちゃん、独りでブツブツ喋ってどうしたんだ?」
「あー、なんでもない。ちょっと今日の反省を復唱してただけだよ」
頭の中にもう一人喋る人がいる、なんてカイルに言っても可哀想な目で見られるだけだし、誤魔化すのが安定だな。
「それよりカイル。俺が剥ぎ取った耳はそこに置いてあるから、その袋にしまっておいてくれ」
指差した地面には小さな耳の山が出来上っている。ちょっと猟奇的な風景だな。
ゴブリンを殺し終ってから考えるのもなんだが、生き物を殺すことに対しての抵抗感がほとんどなかった。……この体になったせいだろうか? それともいつの間にか吹っ切れたのか……。
まあ些細なことだな。……きっと。
「にいちゃん、全部入れといたぜ! とりあえず、この死体どうする?」
「ん~……普通はどうするんだ?」
「えーっと、確か……魔法で焼くとか……現地で解体して、使えそうな部位だけ持って帰るとか……あ! あとは魔法の袋に入れて持ち帰るっていうのもある!」
「な、なるほどな」
……色々と準備不足なんだな俺達は。けど、そうなると……解体くらいしか手段がなさそうなんだが……どうするか。このまま死体を放っといてゾンビ化とかしたらやだしな。……ゾンビがいるかは知らんけど。
『マスター。強い生体反応が近くなっております』
「に、にいちゃんアレ!」
「なんだ?」
思考に耽っていた俺に突然二人から声がかけられ、カイルが指差す方向に顔を向ける。
カイルが指差す方向には、人型のシルエットをした黒い何かが歩いてきていた。
あれが反応にあったやつか。……今んとこ敵対意思は……ないか? 頭の地図では赤く表示はされていない。
「やっぱりそうだ……にいちゃん! あの魔物、メタルゴーレムだ!」
「メタルゴーレム?」
「うん! 本来は古い遺跡とかにいる魔物のはずなんだけど……どうするにいちゃん?」
……カイルの言葉が本当なら、あれは魔物だそうだ。そのメタルゴーレムは悠々とこちらに歩いてきている。
俺と酷似した反応があるってことは、機人族って可能性もあるんだが、どうしたもんか。
「なあカイル。メタルゴーレムってどんな魔物なんだ?」
「えっと、俺も人から聞いただけでよく知らないんだけど、遺跡の中に徘徊してたり、遺跡の宝がある部屋や入り口を守ったりしてる魔物らしいよ」
「へぇ……強いのか?」
「うーん……そのことを話してくれた冒険者は、五人ががりで攻撃し続けてやっと倒せたらしいよ」
ほほう。その冒険者の実力はわからないが、五人がかりでやっとか。戦闘力はそれなりにあるみたいだな。
「にしても、なんでこんな森にそのメタルゴーレムとやらがいるんだ? 一体なにを守ってるんだ?」
「……俺に聞かれてもわからないよ。遺跡の他に『ダンジョン』とかにもたまにいるらしいけど……」
『ダンジョン』。すっごい気になるけど、今は目の前のアイツだな。 どう対応すべきか――――
「――カイル。今すぐ走って町に戻れ」
「え? にいちゃんは?」
「俺はあとで戻る。すこしあの魔物に用事が出来た」
いつの間にか地図に赤い点が表示されていた。近くにはそれ以外の反応はなく、間違いなく目の前のアイツだろう。……カイルを危険に晒すのもあれだから先に戻っておいてもらおう。
「用事って……メタルゴーレムの素材でも欲しいの?」
「ん。まあ、そんなところだ。ホラ、お母さんの病気の薬買うんだろ? はやく帰って、報酬もらってこい」
「……えっ、なんで知って」
カイルは怪訝な顔で俺を見つめていたが、もうすぐそこまでメタルゴーレムは迫っていた。
つい口走ったけど、あとで誤魔化しておこう。今はカイルの安全確保が先だ。
「――いいからいけって!」
「わ、わかったよ! 怪我しないでよにいちゃん!」
少し強めに言うと、了承したカイルは背を向け町への道を走っていった。
「さてと……おーい、言葉は通じるか?」
「……」
カイルの背を見送り振り向くと、もう目の前までそいつは接近していた。
うーん、テカテカに黒光りする機械的なボディ。身長は俺と同じくらいか?
顏には人だとあるべきパーツはなく、ただつるつるとした面があるだけだった。
話しかけても、反応はなく――ただ俺の頭の中では赤い点が爛々と光っているだけだ。
言葉も通用しないみたいだし、ただ俺と生体反応が似てるだけの魔物だったか――
「――ネ――」
「……ん?」
今何か聞こえたか? もしかして、目の前のコイツからか?
「ザザッ―ネ――ネ……ザザザ……」
「喋れるのか? 知性がある――!?」
「ザザザ――シネエエエエエエエ!」
突然メタルゴーレムの右手が『ドリル』に変形し、俺の顔面に繰り出されてくる。
「あっぶねぇ!」
ドリルなんかで俺の顔面叩いたら滅茶苦茶になるだろ馬鹿!
……っていうか、今死ねって喋ったのか?
「シネェ……シネェ……ザザザ」
ノイズらしきものも入っているが、言葉のように聞こえる。あと音質低すぎる動画音声みたいで聞き取りづらかった。
「なんだよ、喋れるんなら反応してくれよな。いきなり死ねっていいながら、ドリルパンチは危ないだろ?」
「シィィィィネェェェェェ!!」
有無も言わさず繰り出されるドリルパンチ。今度はもう片方の腕もドリル化させてパンチのラッシュを繰り出してきた。一見危険に見えるが、この程度のパンチならいくらでも避けれる。あくびが出るほどだな。
「落ち着けよ。当たらないし、無駄だぞ」
「オマエ……ガ!」
「……んっ?」
死ね以外にも喋れるのか? だったら聞かせてもらいたいもんだな。飛んでくるパンチを避けながら余裕綽々の態度で耳を傾ける。
「オマエガワタシノカラダオオオオオ! ウバッタドロボウカアアアア!!!」
「……――」
…………はい?
誤字や脱字、おかしな部分は気づき次第修正します。
2019 十月五日 加筆と修正、改行などしました




