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反対するとばかり思っていた佐環が乗ってきた。俺もこの流れに乗じて意見を伝える。
「し、嗣乃の意見に賛成だ」
「佐環と伊吹は賛成ね。颯と勝矢は?」
「いいよ」
「俺も賛成だ」
卒業すればバラバラになるはずだった同期五人が、だんだんと結束していく。
水平線から漏れ出した陽光が雲を押し退けるかのようにして空が白み始めた。
俺たちは車へ戻ることにした。今いる場所からかなり離れた場所に停めてあるため、警察が怪しむことはないだろう。ただ心配なのは、駐車場というより空いているスペースに停めてしまったことだ。無断駐車扱いされる前に移動させたい。
颯が車の鍵を開ける。男性陣は白色の乗用車をレンタルし、彼女たちは佐環のグレーの車に乗ってきた。佐環の父親が新車で購入したらしく、運転が壊滅的に下手なせいで原付しか乗ることのできない俺は、それを聞いた時少し惨めな気持ちになった。
「車だけど……ここに停めたままで大丈夫かな?」
嗣乃が言う。それに対し、颯があくびをしながら応えた。
「いいんじゃね? 注意されたら謝れば。近くのコンビニだって結構距離あるし。それより今は一、二時間くらい休んでから出発した方がいい。このままじゃ俺たちまで事故を起こしかねない」
彼の言う通り、眠気の限界が来ていた。時刻は既に午前四時を回っている。
「そういえば、颯」
それぞれ乗用車まで移動しドアを開けたところで、佐環が思い出したように振り返って言った。
「何で被害者が巴海沙だって分かったの? あの状況で確実に分かるって相当じゃない?」
よくぞ訊いてくれた。俺は颯に注目する。
「あぁそのことか。首元に火傷の痕があったから。ちょっとした事故で負ってしまったんだって、小学生だった頃、本人が言ってた。詳しいことは知らないけど」
「へぇ……」
彼女は腑に落ちない表情をしながらも「じゃあまた後で」と言ってドアを閉めた。
「今日は散々だったなぁ……。でも、これが一番いい選択のはずだ」
颯は座席が平らになるまで倒した。
「僕もそう思う」
後部座席から勝矢が返事をする。
俺はシートを倒さないままでいた。このまま眠りに就きたいところであるが、その前にはっきりさせたいことがある。
颯に目をやる。ふたつ折りにしたフェイスタオルで目元を覆っていた。
やるなら今だ。体を捻り、彼に背を向けた格好でメッセージアプリを開く。
——巴海沙って人、俺たちが中学の時にいなかったよな?
文章を打ち終えると、明かりで颯が起きないように画面の明るさは最小限にしてから、シートとヘッドレストの隙間にスマートフォンを入れる。画面を下へ向けたまま慎重に。そして、目一杯仰け反り、バックミラーを見ながら端末の角を勝矢の体に数回当てる。しかし、もう眠ってしまったのか反応がない。
静かに息を吐く。一回目の挑戦は失敗した。もう一回、と思いきや、右上腕部をつつかれた。
合図だと思った。腕を後ろに伸ばす。すると今度は、手の中の端末がスルリと抜けた。時間はかからなかった。勝矢は前の文章を消さず、真下に返事を追記して返してくれた。
——うん。いなかったと思う。
——そうだよな。そもそも、同じ学校に通う生徒があんな大事件起こしていたら、流石に覚えているはずだし。
颯は中学校に上がると同時に他県から俺たちのいる学校へ引越してきた。勝矢にも心当たりがないのなら、やはりさっき佐環との会話で話していたことは事実か。そうなれば、颯と巴は小学生時代の同級生ということになる。顔も体格も変化しているであろう級友を、ひと目見ただけで本人だと判断した根拠は、果たして火傷の痕だけなのか。




