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予想外の告白に、アクセルから足が離れる。
「ふたりとも、緊急事態!」と伊吹くんが後部座席から乗り出した。「ひき逃げ事件の関係者が名乗り出たって!」
「関係者? どういうこと?」
勝矢くんが訊いた。信号はタイミングよく青に切り替わる。
「えっと、情報元はある大手テレビ局で、名乗り出たのは運転手ではなく同乗者らしい」
同乗者が名乗り出た。
誰もが未解決事件として葬られる未来を想像しただろう。
「本当だ。明日、午後十時から放送されるニュース番組の枠を使って緊急生放送を行う予定ってある。独占らしいから、他の局ではやらないみたい。これだけ大々的に取り上げるということは、信ぴょう性はかなり高いんだろうね。いや、今度こそ高くあってほしい」
珍しく勝矢くんの声に感情が乗っていた。
「うん」
私はハンドルを握る手に力を込める。
黙認という罪と向き合うという選択が、この未来をもたらしてくれたのだろうか。
それぞれを送り届け、私たちは十年前へ戻る夜を待った。
「こんばんは。ただいま、生放送でお送りしております。みなさんは覚えていらっしゃいますでしょうか? 未解決のまま時効を迎えた、P市死亡ひき逃げ事件。その事件の全貌が今、明らかになろうとしています」
男性アナウンサーは一礼した後、背筋を伸ばし丁寧に言葉を発した。
自らをエモトと名乗る人物は、被害者をはねた車の同乗者だった。エモトは「真実を話すこと」と引き換えに、いくつかの条件を出したという。それは、顔にモザイクをかけること、声を加工すること。そして質問者は一名のみで、リモートで繋いでやり取りすることだった。
同乗者であっても、飲酒運転だと知って車に乗るのは犯罪である。時効は過ぎたのだから、自分は罪に問われない一般人だとでも言いたいのだろうか。
私は拳を握りしめていた。手のひらに爪が食い込む。
「えー、では双方の準備ができたということですので繋いでいきます。……もしもし、エモトさんでしょうか?」
「はい、そうです」
モニターに映ったのは、真っ白な背景とモザイクがかかったバストアップの映像だった。声は低めに加工されているが、男性だと断言できない。
「まず、事実確認をしたいと思います。あなたはP市死亡ひき逃げ事件を起こした車に乗っていましたか?」
インタビュアーは先ほどのアナウンサーだ。
「……はい。乗っていました」
「なぜ今になって真相を話そうと思ったのでしょうか?」
「なぜ……。そうですね、一番の理由は耐えきれなかったからです。毎日毎日、夢を見るんですよ。被害者が生きていて、実は事故なんて起こさなかったっていう夢です。目を覚ましては絶望していました。本当はもっと早く言うべきだったのでしょうけど、踏ん切りがつかず……」
「これだけ時間がかかったのは、時効を意識していたからですか?」
「それは……そう思われても仕方ないと思っています。それに被害者も被害者というか。夜にあんな場所をうろついていたわけですし……」
「なるほど……。時間もないので、次の質問に移ります。運転手とあなたはどういったご関係ですか?」
「友人とまではいきません。彼は喧嘩っ早く、半グレ集団とつるんでいるようなちょっと怪しい人物でしたから。だけど、彼といたのは事情がありまして……。ここで運転手をA、Aの恋人をB、私の恋人をCとします。AとBとCは仲が良くて、私を抜いた三人で遊ぶことがしょっちゅうでした。それでつい浮気を疑ってしまい、Cを咎めたのです。すると、疑うならついて来ればいいじゃない、って。その流れでAと遊ぶ時は、毎回同行していたのです」




