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Rabbit-foot  作者: 広井新
4. No answer is also an answer. ——手柳佐環——
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 下にスクロールし内容を読んでみる。すると、すぐに指が止まった。「キャプテンを務めた久目颯くんは……」という一文に。

 試しに、彼が所属していたチームの名前で検索をかけてみる。チーム公式SNSアカウントに書かれていたのは、P市とは関係の無い地名だった。

「そう言えば、颯くんってどこの出身なんだろう」

「さぁ。中学校は一緒だったけど、当時はほとんど話さなかったから。どこから転校してきたかまではなぁ」

 勝矢くんに話を振ると「僕も詳しくは分からないけど……」と続けた。

「ただ、色んな場所を転々としてきたイメージがある。高校も野球の強いところへ進学していたから」

 私はノートにこれまで判明したことを書き出した。今のところ、颯とP市に深い関係はなさそうだ。なら、巴氏とどこで出会ったのか。そもそも巴氏がP駅を狙った理由は何か。

 コン、コンとドアをノックする音に、集中力が途切れた。ワンテンポ遅れて返事をすると、遠慮がちに「いいかしら? 入っても」と母が顔を出す。

「あ、お邪魔しています」

「こんにちは。なんだかすみません」

 ふたりはそれぞれ挨拶をした。

「大丈夫。気を遣わないで。佐環、お茶かコーヒー入れ直した方がいい?」

「うん、そうだね。ちょっと休憩しよう」

 私は伸びをし、浅くなった呼吸を整える。母は買い物袋をキッチンへ置き、食材を冷蔵庫へ入れ始めた。私はその横で紅茶を淹れる準備をした。

「私がやっておくから、あなたは座ってて」

「いいよ。すぐだから」

「いいから。いいから」

「うん。じゃあ任せる」

 私はキッチンを離れた。彼女の淹れる紅茶が美味しいことは、とっくに知っている。だから任せた。

 母とふたりきりでいる時、前より張り詰めた雰囲気でなくなった。会話も増えた。少しづつだけど。まだちゃんと謝ることはできていないけれど。

「なんだかんだ、二時間も経っていたんだね」

 伊吹は大きなあくびをした。

 彼らに死亡ひき逃げ事件の調査協力を申し出たのは私だった。調査拠点を実家にしようと決めたのも。

 ——みんな忘れているかもしれないから言っておく。巴海沙は人を殺してる。犠牲になった男性はとても優秀な人で、結婚したばかりだった。なのにこいつのせいで電車にはねられた。だからこれは因果応報。加害者は悪くない。

 きっかけは、P市死亡ひき逃げ事件について調べていた時、見つけたコメントだった。書いたのは誰なのだろうと、真っ先に疑問が浮かんだ。巴氏が起こしたP駅無差別殺傷事件の被害者遺族なのか、もしくは全く関係のない第三者なのか。

 知りたいと思った。事件の真相に隠れた根本的な部分を。なぜ、巴氏は深夜にあの道を歩いていたのか。彼が轢かれた理由。彼の人物像も含めて。

 ひとりでやるには力不足だった。だけど、いざ玄関のドアを前にすると恐怖で足が動かなくなった。近くのコンビニへ出かけるのとは全く違う。電車の中で指を指されたらどうしよう。怪しい人に絡まれたらどうしよう。過剰に考えては、今日は止めておこうと、ドアノブを握ろうとした手は空を切った。

 それは勝矢くんも同じ気持ちだったはずだ。

「久しぶりだね」

「あぁ、本当に」

 私たちはQ市にあるファーストフード店で再会した。裏切り者の暴露騒動以来の対面。お互い気まずさが勝って目を逸らす。

「座りなよ。立ったままだと怪しまれるかも」

「それもそうだね」

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