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Rabbit-foot  作者: 広井新
3. No man is born wise. ——大鼻勝矢——
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 このコメントに対する返信とタグ付けされた投稿をざっと見た感じ、世間の反応はかなり彼女へ傾いていた。

 市街地を抜けると道幅は狭くなりカーブも多くなってきた。両脇に木々が生い茂る。

「私、白咲さんのことを犯人だと決めつけている人たちが信じられなくて。あの……動画配信者の男の人が全て正しい証拠なんてないのに。けれど、それって私たちが言うことじゃないんだよね。通報していれば、彼女は巻き込まれずに済んだのだから」

 さっきの質問が引き金となったのか、佐環はつまることなく気持ちを述べた。

「そうだね。君の言うことは正論なのかもしれない。ただどっちにしろ、熊猫さんは白咲さんか、もしくは他の誰かをひき逃げ犯としてでっちあげただろうとも思ってる」

「どうして?」

「動画内で情報提供がいるような発言していたの覚えてる? その目的が、彼女を陥れるためだけだったとしたら……」

「え? 何のために?」

「白咲さんへの個人的な恨みを晴らすため。熊猫さんは何かと炎上して話題になりやすいし、この機会をチャンスと捉えたんだろう。つまり、犯人が捕まっていないという状況が同じであれば、通報していても変わらなかったんじゃないかな。とは言え、ただの妄想に過ぎないけれど」

「……フォローしてくれたんだよね。ありがとう。少し気持ちが楽になった」

 強張っていた声色がいつものトーンへ戻った。

「それは良かった」

「見て見ぬフリをしたこと……勝矢くんは後悔していないってことだよね? というか、私以外のみんなは、かな」

「どうだろうね。僕は後悔していないよ」

「そのことについて。今日来てもらったのは、あなたの話を聞きたかったからなんだ」

 背筋を伸ばす。まだ安心できない。ここからが本題だ。

「この先『展望Caffe』第一駐車場」と書かれた看板を通り過ぎた。坂を登りきった先にあったのは古民家風の建物と、既に多くの車で埋まっている駐車場。

「着いた」

 佐環はシートベルトを外した。平日の昼前であるが、駐車場はほぼ埋まっている。

「初めてきたよ、こんなオシャレなところ」

「私も。一度来てみたかったんだ」

「僕とでよかったの?」

「うん。とっくに別れたから」

「彼氏とってこと?」

「そ。話すと長くなるからまた今度ね。とりあえず行こう」

 車を降りると寒暖差のせいでくしゃみが出た。当日の朝「なるべく厚着をしてきて」と連絡してきたのはこのためだったのか。

 建物の中へ入り、案内された席は広大な山を一望できるテラス席だった。客席はカップルや女性客で埋まっており、男ふたりで来たら確実に浮いてしまう。

 メニューにあるのは数種類のパンケーキとドリンクのみだった。僕は甘いものが苦手なのでホットコーヒーのみを注文、佐環はカフェオレを頼んだ。

 彼女は澄んだ空気を肺一杯吸い込みゆっくりと吐いた。そして穏やかな表情を保ったまま言う。

「さて、あなたに来てもらった理由については……だいたい察しついてるよね?」

「まぁ。僕が黙認を支持する理由を知りたがっているか、約束を反故にしてあの事の真実を露わにすることの決意表明か。これのどっちかかな。前者であればありがたいと思ってるよ。君を説得するのは大変そうだから」

「なんかトゲのある言い方」

 ムッとした表情をした。

「気分を悪くしたならごめん。けど、仲間を裏切ることには変わりないわけだから」

「分かってる。無実の人が犠牲になってしまった今、軽率に行動できないことぐらい。それに、もし嗣乃が私のことを……」

「え? 嗣乃が何かしようとしてるの?」

「い、いや別に。何でもない」

 肩まで伸びた髪を両方の耳にかける。

 お互い注文した飲み物が運ばれてきた。彼女はそれに手をつけず、軽く咳払いをした。

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