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文字にすると薄っぺらく、否応なしに頷かせるような圧があった。言葉に嘘はないのに。
スマートフォンのバッテリーは三分の一を下回っていた。僕の体力もかなり消耗していた。
——みんな、落ち着いて聞いてほしいことがある。
そう前置きした上で、他三人にも同様の内容を説明した。
——いつかやると思った。とにかく、報告ありがとう。俺たちのことがバレていないならそれでいい。
——ねぇ颯。やっぱり今からでも言うべきじゃない?
——こうなることを予想していなかったわけじゃないだろ。俺にだって罪悪感はある。何度も言うが、全ての元凶は犯人だ。
佐環は僕たちの決断にかなり未練があるようだ。彼女を颯が必死に説得している。さっき話した件で慎重になっている伊吹はともかく、終始会話に参加してこない嗣乃のことが気になった。ただ、これ以上思考を巡らすことは限界に近かった。
——これからどうするべきか、明後日の動画を観てから決めるのが賢明だと思う。
全員分のチェックマークがついた。返信してくる人はいない。この議論は僕の一文で締めくくられた。
伊吹が財布を落とした事実は、多分みんな頭の片隅に残っているのだと思う。だけど、他のメンバーはあえてそこに触れない。輪を乱してはいけないのだと、口にしなくても分かりあっている。五人の輪に亀裂が入った時、あの時の決断が間違っていたと認めざるを得なくなる。この数年間と僕たちの過去さえも。
熊猫氏がトンネルの中にいるのなら、僕たち五人は吹雪の中を進んでいる。風の切る音が仲間の声を塞ぎ、ホワイトアウトの中、どこへ向かっているのか分からない。氷のつぶてが顔を覆い、嗅覚は機能を失った。口から必死に呼吸をする。仲間が隣にいると信じて前に足を動かし続ける。これが自分たちにできる唯一のことだった。
サイレンが徐々に近づいて来る。カーテンの隙間から覗くと、救急車が一般車両の横を慎重に通り過ぎているところだった。小まめにブレーキをかけながら道の開くタイミングを計る救急車。小走りで横断歩道を渡る歩行者。日が落ちた都心は昼間より華やかさを増している。警告灯ですら装飾品の一部であるかのように、眼下には僕の知らない別世界が広がっていた。
皺ひとつないシーツの上に腰を下ろす。今夜、例の動画が公開される。最悪の状況を考え、近くのホテルを取ることにした。見逃しのないように、パソコンはつけたまま、「配信までしばらくお待ちください」の画面が変わるのを待っていた。
「はい、どうも。熊猫パンダです。今日はリアルタイム配信で、P市死亡ひき逃げ事件の犯人を特定した件について、お話していこうかなと思います」
動画が公開されると同時に、熊猫氏の姿が映し出された。視聴者がリアルタイムでコメントを投稿できる機能は封鎖されたままであった。そのためSNS上で世間の反応や情報を拾っていく。
最初に彼が語ったのは独自調査による事件の全貌だ。背後に置かれたホワイトボードに箇条書きで書き出していく。
犯人は免許を取得したばかりの大学生。知人の家まで片道数時間のドライブだった。事故現場周辺の道路は深夜から早朝にかけて交通量が減少傾向にある。
「現場を見てきましたが、スピードが出やすい道でもあります。油断してスマートフォンを操作していたら被害者が目の前に……。よくあるパターンです」
彼はあっさり断言してみせた。




