第49話 深夜の呼び出し ー 新たなミッション
夜の廊下は、
昼の喧騒をすべて吸い込んでしまったように静かだった。
南雲誠はシャワーを浴び、
ベッドに倒れ込む寸前だったが、
端末が短く震えた。
画面には――高木由理。
「……こんな時間に?」
通話を開くと、由理の声は低く抑えられ、
いつもの業務口調より一段硬かった。
『誠さん。
“別棟の会議室”へ来てください。
……官邸から直通です』
「官邸?」
『はい。
今日の成果について、直接の説明があるとのことです』
誠は息を呑む。
(……薄皮三枚だけで、そこまで状況が変わるのか)
上着を羽織り、冷えた廊下を歩く。
夜間モードの照明は足元だけを淡く照らし、
歩くたび足音が響いた。
会議室へ入ると、
由理と廃炉対策室の幹部数名がすでに座っていた。
中央のモニターには官邸の会議室。
田坂官房長官が正面に立ち、
南雲の到着を確認すると頷いた。
「南雲君。まずは今日の成果に礼を言う。
三回の表層分離と報告を受けた」
「ありがとうございます」
「だが、問題はその後だ」
田坂の声色が少しだけ低くなる。
「今日の線量低下は、
国際機関や関係国が必ず注目する。
IAEAも“物理的説明がつかない”として追加報告を求めてきている」
由理が小さく息を呑む。
田坂は資料を示した。
「公式にはこう発表する。
“深海複合鉱物研究の応用により、
廃炉作業に進展があった”
……これでいく」
「深海……ですか」
「そうだ。
説明は盾になるが、同時に的にもなる。
誰かが違和感を追いかけてくるだろうがな」
田坂は言葉を選びながら続けた。
「ここ数日、
国内海域に“身元不詳の調査船”が増えている。
装備は民間の枠を外れており、
行動パターンも通常と異なる。
……察しはつくだろう」
由理が誠を見る。
「日本はここのところ不可解な成果を上げ続けていますからね。」
「深海調査の計画を“前倒し”する。
沖縄トラフの熱水鉱床だ。
君の能力は深海でも有効――そう見ている。
準備はすでに始めている」
誠は息を止めた。
(……深海か)
田坂はさらに声を落とした。
「オブシディアが今一番注目しているのは、
間違いなく日本だろう。
特に――今回は今までとは注目度が違う」
映像が切れた。
会議室に、静かすぎる静寂が落ちた。
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