第48話 三回目の突破 ー 誇っていい日
三回目。
深層の反応が強く、境界の識別が不安定になっていた。
(焦るな。……見えるはずだ)
境界反応が一瞬だけ安定した。
ザリ――
境界が分離し、三枚目が抽出された。
その瞬間、高木由理の声が鋭く落ちた。
「負荷六割直前! 停止!!」
南雲は即座に手を離す。
高木が肩を支え、低い声で言う。
「三回、成功。
ここから先は負荷が上限を超えます。
絶対に続けません」
「……わかった」
現場責任者が駆け寄る。
「A-3の線量が……
作業員が通常作業できるレベルまで落ちている……!
今日の三枚で、この区画が“作業可能な場所”になるなんて……!」
高木が南雲を見つめ、微笑む。
「南雲さん。今日は大いに誇っていい日ですよ」
「……俺は薄皮を三枚剥がしただけだぞ」
「その三枚で、作業工程が二ヶ月も前倒しになるんですよ。
すごいことです」
帰路。
南雲の視界の端に一瞬だけノイズのような光が走った。
すぐ消えたが、高木は気づいていた。
「負荷が少し残っていますね。今日は休んでください。
明日は読取だけにします」
「……由理さん」
「はい」
「止めてくれて、助かった。
……続けてたら、危なかったと思う」
高木はわずかに視線を伏せた。
「止めるのは私の役目です。
誠さんが“次へ進めるように”」
南雲は頷く。
(……この一回の成果で、次の工程が動く)
その夜、宿舎の窓を開けると冷たい空気が流れ込んだ。
街の灯りが遠く揺れている。
明日の予定表に新しい行が増えていた。
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