表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
42/67

第42話 会議室の決定 ー GOサイン

 三日間の模擬固化構造体訓練を終えた研究区画は、

どこかいつもと違う空気をまとっていた。


空調の音も、計器のわずかな電子音も、

すべてが薄く張り詰めているように感じられる。


南雲誠は手袋を外し、机に置かれた試験ログを見下ろす。

訓練初期は反応が不安定だった“粒”が、

いまは明確な輪郭と重さを持って感じられる。


抽出精度、外装損傷ゼロの再現、負荷の揺れ幅――

数字は静かに告げていた。


「もう実環境で試せる」


高木由理がモニターを閉じる。


「一通りの工程は終わりです。

動きは安定してますし。誤誘導もありません」


「十分って顔だな」


「……目が泳いでないうちは、そう言えます」


淡々とした声ではあるが、念を押したい気持ちが見えた。


そのとき、ノックが鳴る。

会議室への呼び出しだ。


中では田坂官房長官、香月技官、

廃炉対策室の少数の関係者が待っていた。

会議室には、

結論を出す前提で集まったとわかる緊張があった。


田坂が穏やかな笑みをつくった。


「まずはご苦労だった。

訓練結果は見た。実施段階に入れる」


大げさな労いはない。評価だけが置かれる。


「君の能力は、この短期間でよくここまで安定した。

廃鉱山での成果も含め、技術としての信頼性が上がっている。

……それは国家にとって大きい」


南雲は静かにうなずいた。


「ありがとうございます」


香月が資料を開く。

東雲第一エネルギーセンターの封鎖区域示図が広がった。


「現地では限定区域での作業になります。

外装の損傷ゼロを保ったまま、

表層の特定成分のみ微量抽出します。

目的は“実環境で読めるか”の確認です」


高木が続ける。


「“とる”のは後。明日は“読むだけ”です。

焦点が泳いだら即中止します」


境界線がはっきり引かれた。


田坂が補う。


「いつも言うが、重荷に感じなくていい。

君は“できる範囲”だけやればいい。それで十分だ」


南雲は指先に意識を落とし、机の紙の段差をなぞる。

境界の反応が、わずかな圧として指先に返ってきた。


「……わかりました。俺にできることをやります」


会議室の空気がわずかに緩む。


そのとき、香月が一枚の紙を伏せたまま置いた。


「補足です。

外部の視線が少し強くなっています。

IAEA 経由の問い合わせも増えています。

“情報を先に押さえる”タイプといいますか、

何かありそうだという漠然とした視線です」


田坂が言葉を選ぶ。


「名前は言わないが、

世界には情報と資源の確保を最優先に動く国や組織がある。

こちらの動きが“都合の悪い可能性”に見えれば、潰しにくる。

覚えておいてくれ」


南雲は短く息を吐いた。


「俺が気にするのは、目の前の境界だけです」


「それでいい」と田坂。


「外の手は、こちらが受ける」


お読みいただきありがとうございました。

「続きが気になる!」「誠頑張れ!」と思ってくださった方は、ページ下部にある「ブックマーク登録」と「評価の☆☆☆☆☆」をポチッと押して応援していただけると執筆の励みになります。

よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ