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悔やむベッド  作者: さんごく


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その六

「草壁一郎はおぞましい事に【第五世代A.I】こそが、この半壊した『地球』を救ってくれる。と信じる【A.I信奉者】の一人だった」

 そう言った一色誠の顔は、質の悪い冗談を耳うちされたかのように怒りで歪んでいた。


 佐々木吉口は、『汚物を垂れ流す隣人を見たかのように被害者を罵倒する』一色誠を観察するかのように見て、そしてこう思った。

『一色誠教官が怒るのも解からなくは無い』

 自分でさえ【管理A.I】がとった、十二発のICBMによる『さらば人類』計画の自暴自棄さには、当時十五歳だった自分も恐怖に襲われた。

 アノ全メディアを乗っ取っての、【世界滅亡までのカウントダウン】はどのような『脅し』よりも恐ろしかった。

『でも教官。【管理A.I】も【ICBM】も。作り出したのは我々なのですよ?』

 何処か冷めた心で、佐々木吉口はそう思っていた。


「草壁だけでは無い。道先も国元も裏では、新たなる【A.I】の開発に資金を出していた!」

 佐々木吉口警部補は思わず、貴重な天然物のビールを噴き出すところだった!

「一色教官! それは本当ですか⁉」

 佐々木は一色の肩を掴むと、その肩を思いっきり前後に振った。

「待て待て待て、待ってくれ。頭を揺さぶられるとワシは悪酔いする!」

 ユッサユッサと揺さぶられる一色誠は何とか逃げ出そうとするも、そんな事はお構いなく佐々木吉口警部補は、一色誠を逃がさなかった。

「解かった! 解かったから! ワシの繊細な頭をこれ以上揺さぶらないでくれ‼」

 佐々木吉口警部補が一色誠の両肩から手を離すと。今度は尋問するかの目で『孫がいても不思議では無い』世界を救ったヒーローにこう言った。

「一色教官、貴方はまた凝りませずに。『公安』の暗殺部隊に手を貸して無いでしょうね」

「それは無いから安心しろ」

 一色誠はそう言うと、焼酎に手を伸ばして一口飲む。


「今のワシは、うむ、そうだね。ジャーナリストとして生計を立てておるんだ」

 一色誠は焼酎の入ったコップを、カウンターテーブルに置くと。おもむろにそう言った。

「いま日本で使われている【A.I】は殆んど第二世代。【国防軍】や【警視庁】でさえ第三世代だ」

 佐々木吉口は黙って首を縦に振った、世界の軍事大国達が十二発の【ICBM】で政治中枢を叩かれ。二十年経った今でも内戦状態にある、現在の【西アメリカ】と【東アメリカ】

 そして、三世紀も文明が後退してしまった【西ヨーロッパ】

 国家中枢を破壊されて、戦国時代になってしまった【かつての中国】


 そんな中で、質全的に【核ミサイル】の標的から外された【東ヨーロッパ諸国】と。

 一発の【核弾頭】で東京を焼かれながら。僅か十二年で戦後からの復興をまたまた果たした【日本国】

 そして狙う意味さえ考えて貰えなかった【超大国オーストラリア】そして【アフリカ合衆国】念願叶って完全な独立を果たした【南アメリカ連合国】


 本来ならば選ばれるはずだったが、【第三次世界大戦】の口火を切った国として後ろ指を刺され。あっという間に周辺国をまとめ上げて五ヶ国から距離を取った【大インド経済圏】


 あきらかに経済圏は南半球へと移ったこの世界は、それでも世界経済を動かさなければ成らず。未だに戦いを続ける世界の火薬庫、西と東に分かれてなお。戦い続けるアメリカ。そしてかつて中国と呼ばれた、戦国時代にまで文明を後退させた東アジア諸国。

 そんな各国に武器を売りながら、次はどの様な産業で【世界経済】を回すかを考えていた。


「そこで考えたのが。新しいアプローチで思考させる【A.I】と言う訳だ!」

 一色誠は右手の人差し指を上下に動かして、ギザギザを空中で書くふりをする。

「つまり、まともな環境で育てていれば【第五世代A.I】とも友人関係を結べると⁉」

 佐々木吉口は自分のあごをさする。ぅむ? 髭の感触が気持ち悪い。

「すでに世界はサイボーグを選ぼうとしている。今さら二十年前の技術には戻れない!」

 一色誠はそう断言した。

「でも三人は【A.I】の復権を考えていた。三人はどうやって自分達が考えている事を、『交換』しあったのか? 草壁一郎の部屋にはパソコンも無かったのに」

 佐々木吉口警部補は、草壁一郎の部屋を思い出すようにそう語った。

「そこなのだよ、佐々木君。道崎光一、国元さとし、草壁一郎。彼らは殆んど動けない体なのに。どうやってお互いを知り、どの様に連絡を取っていたのか⁉」


 その時佐々木吉口警部補の胸ポケットから、今時めずらしいアラーム音が鳴った。

 佐々木はポケットの中から、名刺ぐらいの大きさをした【秘匿通信機】を見て、顔をしかめる。

「草壁一郎の死因が解かりました。急性アルコール中毒です」

 佐々木吉口警部補は頭を抱えてそう言った。けさの聞き込みを思い出す、草壁一郎はここ数年間、誰かの補助無しで外を歩いた事が無かったからだ。


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