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悔やむベッド  作者: さんごく


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4/10

その四

【スナック昭和】のカウンター席で【電脳世界『サイバーワールド』】に、『意識』を送った為に生気の無い顔色をしていた佐々木吉口が、【電脳世界】から自分の体に戻って来る。


「おかえりー、で。どうだったかな? このオレがみずからまとめたファイルの中身は?」

 佐々木吉口警部補を、『サイバーワールドのゲート前に残して、サッサと現実世界に戻って来た』一色誠が。カウンター席で手を合わせて。まるで十代の子供のように目をキラキラさせて、感想を求めて来た。

「ま、待ってください、自分はまだファイルの中を、覗き込んでもいません‼」

 などと言う佐々木吉口に、一色誠は。今度は癇癪をおこした仔ザルのように怒り出す。

「何たる小心者か! 佐々木よぅ、もしオレが【時限爆弾ウイルス】の入ったファイルでも仕込んでいたら。お前さん。今頃救急車の中で死にかけていたトコロだぞ⁉」

 佐々木吉口警部補は、恐ろしい事を聞いた顔をして頭を抱える!

「──冗談じゃ!」

 一色誠がふてくされて、ウィスキーのつまみとして出された、ピーナッツをかじり出す。


 佐々木吉口警部補はやれやれ、と。言った感じで頭の中のファイルを開く。

「一番目の被害者『道崎光一』 死亡時間『一週間前』 朝六時に起床、その後朝食。 朝食の中身『鮭の塩焼き、お粥、タクアン、味噌汁』 その後『小睡眠』 昼十二時に昼食。 昼食の中身『お粥、牛乳』 その後リハビリー運動。その後『小睡眠』 夕方六時に夕食。 夕食の中身『和風ハンバーグ、お粥、佃煮、味噌汁』 夕食後『日本酒』を飲料。 その後就寝。 三時間後『消防署へ緊急通報』その場にて死亡を確認」


「道崎光一氏の歯は、年齢のわりに随分『頑丈』だったようですね」

 佐々木吉口はそう言ってもう一度年齢を確認する。そこにはこう書かれていた。

「道崎光一『九十歳』」


「感心するのはソコでは無い!」

 一色誠が噛みつくようにそう言った。

「では教官──、いえ。一色誠先輩。先輩の言う二人目の被害者のファイルを開きますよ」

 一色誠は『ファイルを渡す相手を間違えたか』と、一人愚痴をこぼす。


 佐々木吉口はそう言うと、頭の中で『二番目』とデカデカに書かれた。ファイルを開いた。

「二番目の被害者『国元さとし』 死亡時間『三日前』 朝七時に起床、その後朝食。 朝食の中身『角食、ジャム、牛乳』 その後『全自動車椅子で散歩』 帰宅後『小睡眠』 昼の一時に昼食。 昼食の中身『栄養ゼリー』 食後『小睡眠』 夕方五時に夕食。夕食の中身『お粥、栄養ゼリー』 その後、合成ビールを飲みつつホロビジョン鑑賞、夜の九時に睡眠、 四時間後、『消防署に緊急通報』 その場で『死亡』を確認。


「うむ……国元さとしさんは食が細いですね。まぁ、『栄養ゼリー』は取っていますが。私の親だったら医者に連れて行くトコロです!」

 本気とも冗談ともつかない言葉でその様な事を言う、佐々木吉口に対して。一色誠はガックリと肩を落とした。


「残りは三番目の被害者。草壁一郎氏の昨日の行動ですが、まあこれはどうでもよいか」

 佐々木吉口は頭の中にある『ゴミ袋』に一色誠の貴重な時間で作られたファイルを。『読む価値無し』と判定してアッサリと捨てようとした。


「待て待て待て、待ってくれ! オレの今日半日で造りあげたファイルを、そんな簡単に捨てようとするな‼」

 そう言って懇願する一色誠に佐々木吉口警部補は冷静にこう言った。

「一色誠教官、わたしの所属している機関を何処だかお忘れですか? 警察です警察。明日の朝には【検死解剖】付きで【死因】と【捜査報告書】が提出されます」

 だが一色誠は諦めなかった。泣いて怒ってゴマをすって、何とか佐々木吉口に『読ませる事』に成功した。


 佐々木吉口警部補は、しぶしぶ一色誠制作のファイルを開いた。

「三番目の被害者『草壁一郎』 死亡時間『二十二時間前』 朝六時に起床、その後朝食。朝食の中身、『お粥、味噌汁、佃煮、だし巻き卵』 食後『小睡眠』 昼の十二時に昼食。昼食の中身、『お粥、味噌汁、スクランブルエッグ、ベーコン』 食後『小睡眠』 夕方六時に夕食。夕食の中身、『お粥、コーンスープ、チーズインハンバーグ』 その後酒を飲みつつ野球観戦。 夜の七時に睡眠。 同八時に、『消防署に緊急通報』 救急車内で『死亡を確認』


 佐々木吉口はファイルを閉じて考え込む。

「なるほど、確かに読むにあたいする内容でした」

 佐々木吉口警部補は、そう言ったうえでこう付け足した。

「先輩。何故これを自分に読ませるのです? 自慢じゃ有りませんが自分の部下も、遅かれ早かれこれに行き付く程には優秀です。もう一度問います、何故自分に読ませるのですか?」

 一色誠は目を逸らせてこう言った。

「ワシは……、ほら。【第三次世界大戦】でやり過ぎた為に、……疎まれておるから」

 佐々木警部補は大きなため息をついた。


 第三次世界大戦。通称【A.I】大戦が世界に及ぼした『悲劇』は、まじめに本にすれば相当ぶ厚い本になるほど、世界に及ぼした影響は計り知れない。

 特に通称【A.I】大戦と呼ばれるのには、それ相応に大きな意味があった。

 だが最初に言っておくが。【A.I】が世界を我が物にしようとして、核兵器にハッキングして──と言った『三文話』ではない。

 

 そう、核ミサイルを【A.I】に渡したのは、他ならぬ『人間達』なのだ。



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