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聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
2章 ガルディア連合国
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61話 四番目の

 朝食を終えた四人は、そのまま流れるようにギルドへ向かった。

 港町の朝は早く、すでに通りには人の気配が満ちている。

 そんな中、ギルドの前に立つ人影にユリウスの視線が止まった。

 ファイフと話しているその男は、鮮やかな水色の髪に、かなり整った顔立ち。軽やかな立ち姿は騎士のそれでありながら、どこか親しみやすさも滲んでいる。

 その顔を見た瞬間、ユリウスの表情がわずかに変わった。


「…レンティス兄さん?」


 その声に、男が振り向くとぱっと華やかな笑顔になった。


「ユリウス!会いたかったよぉ!」


 大きく手を振りながら、迷いなく距離を詰めてくる。勢いのままに肩を掴まれ、ユリウスがわずかにたじろいだ。

「もうさー、ようやくパーティ組んだって聞いたのに、僕エルミアに派遣されてたからずっと会えてなくて残念だったんだけど!サイレス(脳筋)に先越されてどんだけ悔しかったか!」

 レンティスは一息でまくし立てた。

「どうしてここに?」

「セリオン兄様から聞いてない?王国騎士団が動くって」

「一部隊だけと聞いてたけど、それがレンティス兄さんの部隊だったのか」

「そうそう」

 軽く頷きながら、レンティスは肩の力を抜く。

「今、ファイフさんに詳細を聞いてた所だったんだ。アストレアの本隊の捕縛に協力しに来たんだよ。ね」

 首を傾げてファイフを見る。ファイフは腕を組んだまま、小さく頷いた。

 そのやり取りを一通り終えると、レンティスはくるりと三人の方へ向き直る。

 

「君たちがユリウスのパーティの子たちだね!リュカ君、セラフィナちゃんとライラちゃん。僕はレンティス。ユリウスの四番目の兄貴だよ」

 

 柔らかな笑顔のまま、軽やかに名乗る。

「四番目のお兄さん……」

 ライラが思わず呟く。

 その響きに少し驚いたような顔をしながらも、三人はそれぞれ挨拶を返した。

「僕とユリウスってあまり似てないって言われるんだけどさ、瞳の色は一緒なの」

 そう言われて、改めて見比べる。確かに、澄んだ青色の瞳が同じ色をしていた。


「……本当に美形一家なのね……領主様の所……」


 ライラが思わずぽつりと漏らすと、それを聞いたレンティスは、ぱっと顔を輝かせた。


「あっはっはっはっ!ありがと!まぁセリオン兄様見ちゃうと僕とかはかなり霞んじゃうけどね!」


 楽しそうに笑うその様子に、どこか長兄の面影が重なった。

「しかしボードウィンに来るのが早すぎないか?」

 ユリウスがふと疑問を口にする。

「あぁ、セリオン兄様から国の承諾得たからって連絡あってから、アレで来たからね」

 さらりと言って、指を向けるその先には魔獣の寄宿舎があり、そして、その中で羽を休める三体の飛竜がいるのが見えた。

「アレって飛竜!?あまり人に懐かないって聞くのに三体もいる!凄っ!初めて見た!」

 リュカの目が輝き、少し前のめりに興味を示している。

「僕の部隊しか動かせないからね。部下の二人と一緒にこっそり来たんだよ」

「……飛竜が三体も飛んでたらこっそりとかにならなそうだけど……」

 ライラが首を傾げる。

 もっともな指摘だったが、それに対してレンティスは少しだけ口角を上げ、唇に人差し指を当てて片目を閉じる。

 

「んっふっふっ。そこは部隊の秘密って事で」


 どこか楽しげで、少しだけ底の見えない笑みだった。

 軽やかな会話の裏で、空気は静かに張り詰めていく。


 ディン達三人もほどなくして姿を見せ、場にいる全員の視線が自然と一箇所へと集まった。空気がわずかに引き締まる。

「さて、こっからは仕事の話をしようか」

 そう言ったレンティスは一度ゆっくりと目を閉じ、次に開いた瞬間、先程までの柔らかな雰囲気が嘘のように消えていた。笑みはそのままなのに、纏う気配だけが鋭く研がれている。

 

「これはまだガルディア連合国内だけで起こっている話、という事になっている。各国も関係各所への確認作業があるからな。今回は急だった事もあって、グレイスロウ領主代理からの依頼、『エルドリア王国グレイスロウ領の友好都市、ガルディア連合国首都フェンリスとの関係強化の為の軍事演習及び訓練』という形で我々しか来れなかった」

 

 淡々とした説明だが、その裏にある意図は誰にでも分かる。これは“演習”という名の実戦だ。

「……エルドリア王国騎士団は一部隊だけでも一騎当千の戦力だ。ありがたい事だよ」

 ファイフが肩を竦めて苦笑する。

「国が絡む事件なだけに私達が介入“出来る”ように、お膳立てお願いしますよファイフさん」

「分かってる。それはこちらに任せてくれ」

 視線を交わした二人が、ほんの僅かに口元を歪めた。その笑みは傍から見れば完全に“同類”の笑みだった。

「……基本的には昨日の打ち合わせ通りだ。ユリウス、ディン、お前達のパーティが一番大変だろうが……頼んだ」

「承知した」

「了解っす」

 その返答にレンティスは満足そうに頷き、ふっと肩の力を抜く。

「本当はある程度君たちの戦力を実践で測っておきたかったけど、今は時間が無いから残念だ。まぁせっかくだし、この仕事が終わったら訓練としてうちの部隊と模擬戦でもやろうか」

 そう言いながら、楽しそうに笑った。

 

「……やっぱりユリウスのお兄さんなのね」

「なんか言う事似てるよな」

「ユリウスも初めて会った時同じ事言ってた」

 小声で交わされる三人の囁き。視線を合わせて小さく頷き合う。

「……なんだ?」

 その気配に気付いたユリウスが振り返る。

「いや、仲良いんだなって思って!」

 ライラがにっこりと笑って誤魔化す。

「?」

 ユリウスは首を傾げたまま、深くは追及しない。

「いいのいいの!準備しに行きましょ!」

 その背中をぐいと押して、強引に流れを変えるライラ。

「あなた達も最終打ち合わせしましょ!」

 声をかけられたディン達も短く頷き、自然と全員が同じ方向へと動き出す。

 作戦前のざわめきが、静かに熱を帯びていく。戦いの準備が着実に整っていった。

ようやくグランスロット家揃いました。

レンティスは閑話で名前だけ出てた四番目のお兄ちゃんです。

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