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聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
2章 ガルディア連合国
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46話後編 救出、それから※

残酷な暴力表現があります。ご注意ください。

 洞窟の中へ戻ると、湿った空気が肌にまとわりつくようだった。

 階段を降り、先ほど転送されてきた部屋の隣、まだ見て居ない部屋も確認する。足を踏み入れると、床に描かれた魔法陣が薄暗い中でかすかに輪郭を浮かび上がらせていた。これもおおよそ転送陣だろう。

 リュカは一瞬それに視線を向けたが、すぐに意識を切り替える。今は検証している場合ではない。男たちに事情を聞き出す方が先だった。

 隣の部屋へ入ると、壁に拘束された四人の男たちはまだ目を覚ましていなかった。土魔法で固められた拘束は強固で、両手両足だけでなく首元まで固定されている。

 ユリウスとリュカはその間に男たちの持ち物を確認していった。

 ローブをめくると、下に着ている服装が見える。軽装備の神殿騎士のような装束だった。黒地の布地に、肩から袖にかけて白い十字の模様が入っている。

 さらにブーツを確認すると、足首の部分に小さく焼印が押されていた。

 聖神教のマークだ。村人が話していたものと同じ印。

 リュカはそれを見た瞬間、ほぼ確信していた。

 

 やはりアストレアの軍関係者だ。

 

 持ち物の中に指示書のようなものは見つからなかったが、代わりに一枚のガルディア連合国の地図が出てきた。小さく印がつけられており、いくつかの場所に数字が書き込まれている。

 意味はまだ分からない。だが何かの計画に関係していることだけは明らかだった。


 さらに調べていくと、男の一人の胸元にあるものがぶら下がっているのが目に入った。

 黒い宝石が埋め込まれた十字架だった。

 リュカがそれを手に取り、じっと観察する。

「…これ、魔道具、だよな?」

 ユリウスも横から覗き込み、短く頷いた。

「あぁ。おそらくこれが洗脳するための魔道具だろう……こういう物は持っているだけでも禁忌扱いなんだがな」

 リュカは十字架を軽く指先で揺らした。冷たい黒い石が鈍く光る。

 そのあとも調べていくが、剣や食料、路銀等旅に必要な物が入っているだけだった。

――――――

 

「おい、いい加減起きろ」

 ユリウスがそう言うと同時に、男の頬を軽く叩いた。しばらくして男の瞼が震え、ゆっくりと開く。

「う…………っ!? なんだ……これ……」

 意識が戻った男はすぐに自分の状況を確認し、青ざめた。両手両足、さらに首まで壁に固定されている。横を見ると、他の仲間も同じようになっており、ご丁寧に猿轡まで噛まされていた。

 逃げ場はどこにもない。

 その目の前にリュカが立った。

「聞きたい事があるんだけど」

 そう言いながら、黒い宝石のついた十字架を男の顔の前へかざす。

 男の瞳が大きく見開かれた。次の瞬間、顔色がさらに悪くなり、視線を逸らす。

「これ、なんに使う物なのかな?」

「……」

「ちゃんと質問に答えてくれないと」

「……」

「今の状況分かってんの?」

「……」

「獣人の子供が二人いたんだけど、あの子達はお前らが連れてきたのかな?」

 男は何も答えない。視線を落としたまま、口を固く閉ざしている。黙秘を貫く気だと分かった。

 

 しばらくその様子を見ていたリュカは、大きく息を吐いた。

「はぁーあ……あんまりこういう事したくないんだけど」

 僅かに肩を落とし、そう言って視線を横へ向けた。

 ユリウスが一歩前に出ると、躊躇なく、男の小指を枝でも折るかのようにへし折った。骨が砕ける音が部屋に響いた。

「あぁああっっんぐっ!!」

 男の喉から悲鳴が飛び出すが、その声は途中で遮られた。

 リュカが無表情のまま男の口を塞いでいた。そのまま髪を掴み、頭を壁に押し付ける。

 

「うるさいよ」

 

 抑揚のない声だった。その直後、リュカの指先がわずかに光る。

 治癒魔法だ。折れていたはずの男の小指が、次の瞬間には元通りに治っている。

 リュカは手を離し、指を軽く振った。

「ほら、もう痛くないだろ」

 男の体が震え始める。拘束は解けず逃げられない。

 壊され、治され、また壊される。

 そうなると想像ができてしまった。今、現実に自分の身で起きた。

 

「お前が発していいのは、こっちの質問の答えだけだから」

 

男の喉がひくりと動いた。

「お前ら、この国に何しに来たんだ?」

「……」

「これ、洗脳の魔道具だよな?」

「……っ…」

 男の呼吸が乱れる。それでも口は開かない。

 

 リュカはもう一つ質問を投げた。

 

「それとお前ら、アストレア軍の所属だろ?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、男の表情が変わる。何かを決めたような顔だった。

 次の瞬間、男は奥歯で頬の内側を思いきり噛んだ。

 口の端から血が溢れる。仕込んでいた自決用の毒だった。

 吐き出した血が床へ落ちる。男の意識がぐらりと崩れ落ちる寸前、その瞬間にはもう、リュカの手が光って治癒魔法が発動する。

 毒に侵された体が強引に修復され、崩れかけた命を無理やり引き戻した。

 男が再び息を吸い込むと、目が見開かれる。

 毒で喉が焼け爛れ、死んだと思ったら元に戻っている。視線を下に移すと自分が吐き出した血溜まりがあるのに、生きている。何が起きているのか理解できない。

 リュカがゆっくり顔を近づけた。

 

「俺の目の前で簡単に死ねると思うなよ」

 

 声は低く、感情の起伏がほとんどない。 

「……知ってる事、早めに教えてくれるといいんだけど?」

 

 無表情のままそう言うと、隣でユリウスが短剣を取り出し、容赦なく男の右足へ振り下ろした。

男性陣はこういった暴力を振るう場面を女性陣に出来るだけ見せたくありませんでした。

敵とみなすと二人とも容赦しません。

リュカもユリウスも、自分達は決して正義のヒーローでは無いのだと理解しています。


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