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聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
2章 ガルディア連合国
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46話前半 救出、それから

 子供たちをその場に置いたまま動くわけにはいかなかった。拘束している男たちを運ぶには人数が足りない。まずは子供たちを安全な場所へ移す必要がある。

 セラフィナがそっと杖をかざすと、淡い風が足元から生まれた。柔らかな風の流れが子供たちの体を包み込み、まるで見えない手に支えられるようにゆっくりと持ち上がる。

 意識のない二人は抵抗する様子もなく、そのまま空中を滑るように運ばれていく。

 リュカはその様子を確認しながら部屋の外へ出た。まずはこの場所がどこなのかを把握する必要がある。男たちの事情を聞くのは、その後でも遅くはない。

 四人は慎重に通路を戻り、階段へ向かった。

 石造りの階段を静かに上っていく。出口が近いのか、周囲の空気が少しずつ軽くなっていくのが分かる。やがて階段の先にぼんやりとした明るさが見えた。

 出口だ。

 最後の段を上がると、そこは洞窟の中だった。

 自然に削られた岩壁が広がり、湿った空気が漂っている。すぐそばに外へ続く隙間があり、うっすら光が差し込んでいた。

 四人は警戒しながら外へ出ると、既に明るい月が出るような時間となっている。

 洞窟の外は山の中だった。周囲には木々が密集し、岩肌にはツタが絡みついている。入口もそのツタに覆われており、よく見なければ洞窟の存在に気付けないような場所だった。

 リュカが周囲を見回していると、ライラが口を開いた。

「…ちょっと登って上から確認してみる」

 そう言うと、近くにあった背の高い木に軽やかに飛びついた。枝から枝へと迷いなく登っていき、あっという間に木の上へ到達する。

 葉の隙間から遠くを見渡していたライラの動きが、ふと止まった。

「……あれは……」

 しばらくして地面に降りてくる。ユリウスがすぐに問いかけた。

「何かあったか?」

 ライラは少し考えるような顔をしてから答えた。

「……港が見えた」

そして確信を込めて続ける。

 

「私の記憶違いじゃなかったら、ここはウィンデルの対角線の位置にあるガルディアの港町、ボードウェルだよ」

 

 その言葉に、リュカは思わず洞窟の方を振り返った。転送陣での移動とはいえ、想像以上の距離だった。

「……随分と移動させられたものだな」

「ここから子供達を運ぶつもりだったのかしら……」

 ユリウスは洞窟の奥を見据えながら答えた。

「その可能性は高いな。こんな状態の子供なら積荷に隠してしまえば分からんだろう」

 港町であれば船の出入りも多い。荷物の中に紛れ込ませてしまえば、誰も疑わない可能性もある。リュカの胸の奥に重い感情が広がった。その横で、ライラの視線が鋭くなる。

「……あいつら叩き起こして聞いてみなくちゃ」

 怒りを押し殺した声だった。洞窟の入口を睨みつけるように見ている。

 

 リュカは一度深く息を吐いた。

「その前に一旦ファイフさん達に連絡しておいて、それからこの子達を保護してもらわないと」

 子供たちを連れて移動するより、信頼できる大人に引き渡した方が安全だ。

 ライラとユリウスはすぐに頷き、それぞれ伝書鳥を飛ばした。小さな光の鳥が空へ舞い上がり、森の上を抜けて遠くへ消えていく。その様子を見届けた後、ユリウスが口を開いた。

「……俺とリュカであいつらに話を聞いてくる。……セラフィナとライラはこの子達と何処かへ隠れていてくれると助かるが……」

 ユリウスは視線を落としたまま何処か気まずそうにそう言った。

 ライラはすぐには答えなかった。眉を寄せたまま、何処か探るような視線をユリウスに向け、じっと見つめる。

 やがて大きく息を吐き、肩をすくめた。

「……はぁ。分かった……何か聞き出したら都度連絡ちょうだい」

 ユリウスは短く頷いた。

「承知した」

 

 話が決まると、ライラとセラフィナはすぐに動き出す。

 近くにあった大きな木へ移動し、枝の上へ登っていく。枝葉が複雑に絡み合っている場所を選び、外からは見えない位置に身を隠す。セラフィナの風魔法で子供たちも静かに枝の上へ運ばれた。

 葉と枝に覆われた場所は、地上からではほとんど視認できない。

 安全を確認すると、ライラが下を見下ろして小さく手を振った。

 それを合図に、リュカとユリウスはもう一度洞窟へ向かう。ツタに覆われた入口をくぐり、薄暗い内部へ足を踏み入れた。

あっちこっち移動させられてます。

ライラは察しの良い大人です。

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