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聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
2章 ガルディア連合国
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34話 フェンリスの冒険者ギルド

 野営地を発ってから半日もかからず、四人はガルディア連合国の首都フェンリスへと辿り着いていた。

 昼前の街道は人の往来が多く、荷馬車や行商人の列に混ざりながらゆっくりと進んでいく。やがて石造りの検閲所が見えてきた。街へ入る者はここで身分や荷物を確認されるらしい。

 ユリウスが御者台から降り、門番の前に立つ。胸元から取り出したギルドタグを見せると、門番の目がわずかに見開かれた。

「上級冒険者の……!話は聞いています。どうぞ、そのままギルドまでお進み下さい」

 丁寧に道を開けられ、四人はそのまま街の中へ入った。

 中に入るとすぐに石畳の道が広がる。少し進むと大きな広場へ出た。中央から真っ直ぐ伸びる広い通り。その両脇には大きさも色も様々な建物が並び、住宅と商業施設が混ざり合っている。人の声と呼び込みの声が絶えず響き、なかなかに活気のある街だった。

 真っ直ぐ進んだ先の遠くに石造りの大きな城が見える。

 グレイスロウのように領主館が丘の上にあるわけではなく、この街では城が奥に控える形らしい。

 馬車の中からセラフィナが目を瞬かせながら外を見ていた。

「変わってないなーここは。グレイスロウの方が賑やかでしょ?」

 ライラが懐かしそうに通りを見渡す。

「うん……でも私、初めて他国に来たから……建物がカラフルですごく楽しい」

「確かに。グレイスロウみたいに統一性は無いわね」

 

 やがて目的の建物が見えてきた。

 フェンリスの冒険者ギルドは、木材と赤いレンガで作られた二階建ての建物だった。正面には広めのスペースがあり、馬車を停める場所も用意されている。

 馬車を降りて受付へ向かうと、預かりも行っているらしい。四人はそのまま馬車ごと任せることにした。

 セラフィナは名残惜しそうに馬の首を一度撫でてから戻ってくる。

 受付にいたのは、柔らかい耳を揺らすうさぎ系獣人の女性だった。

「お待たせいたしました。こちらへどうぞ」

 

 案内され、四人はギルドの二階へ上がる。廊下を進み、通されたのは応接室だった。

 部屋の中には一人の狼系獣人の女性が待っていた。灰色の髪と鋭い瞳。熟練の冒険者の空気を纏った女性だった。

 四人が入ると、その女性は立ち上がり軽く頭を下げる。

「グレイスロウからはるばるよく来てくれた。感謝する。フェンリス支部のギルドマスターをやっている、ファイフ・シルヴァルだ」

 ユリウスが一歩前に出る。

「このパーティのリーダーをやっているユリウス・ヴォルディだ」

 差し出された手を取り、しっかりと握手を交わした。ファイフはそのまま視線を横に動かす。

「ライラも久しぶりだね。七年振りぐらいか?いい顔になったじゃないか」

 口元に少し笑みを浮かべる。その言葉にライラがわずかに肩を揺らした。

 リュカとセラフィナもそれぞれ名乗り、四人はソファーへ腰掛けた。

 

 ユリウスが姿勢を整えながら言う。

「早速だが、依頼の詳細を聞いても?」

「あぁ……ひとまずこちらを見てもらえるか?」

 ファイフは机の上の資料を差し出した。ユリウスが目を通し、すぐにリュカへ回す。

「……ここ三年ほどの子供達が行方不明になっている地域の分布図か」

「そうだ。東の国境を中心に北に向かって広範囲で多発している。うちの国は三つの国と隣接しているが、南のエルドリア王国方面ではなく東のグランヴェル帝国、北のアルカディア王国方面でな……余計にお国が頭を悩ませているようだ」

 ファイフは腕を組んで少し眉を寄せた。

「警戒して下手に国境付近に軍の布陣を敷いてみろ。戦争が勃発しかねん」

「なるほど。だから、各地の冒険者ギルドに声をかけているのか」

「そうだ。自由に動ける冒険者に各地の調査をしてもらうが……ここはグレイスロウほど冒険者が揃ってる訳じゃあないからね」

 ファイフはライラへ視線を向けた。

「ちょうどライラがユリウスと組んだと聞いてな。上級冒険者と組めるようになったならと、指名依頼を出す事にしたのさ」

 

「……あの、師匠……」

 

 ライラがおずおずと口を開く。リュカが顔を上げた。

「……えっ!?師匠!?」

「なんだい。言ってないのか。全く薄情な弟子だよ」

 ファイフは呆れたように眉を上げる。

「いや、だって、七年前はギルマスじゃ無かったじゃないですかぁ!!」

「ん?……あぁ、そうだったね。五年前に引き受けたんだったよ」

「ほらぁ!!」

 ライラがソファーの上でじたばたする。

 

「なんで言ってくれなかったんですか!!師匠からの依頼って知ってたらこんなにヤキモキしなくて済んだのにーー!」

「あっはっはっはっ。ごめんごめん。すっかり言ってるもんだとばかり思ってたんさ」

 ファイフは豪快に笑った。ライラは頭を抱えたまま三人に向き直る。

「なんかみんなごめん……師匠の依頼だから、国のきな臭い感じの話とかそんなんじゃなくて、本当に行方不明についての調査なんだと思うわ……」

「なんだい。疑ってたのか」

「そんなんほぼ無名のパーティに国外から指名依頼とか疑ってかかって当たり前でしょーが!!」

 ライラが勢いよく言い返すと、ファイフは鼻で笑った。

「ふん……まぁそうだな。悪かったよ」

 そして視線をユリウスへ向ける。

「で、協力はして貰えるだろうか?」

 ユリウスは苦笑を浮かべた。

「あぁ、もちろんだ」

 その答えを聞き、ファイフは静かに息を吐いた。

 

「……ガルディアでは子供ってのは“宝”さ。何者にも変え難いね。……それがどこの誰かも分からん奴らにかどわかされているなんて許されない」


 そしてもう一度頭を下げた。

「……無理を言ってすまないがどうかよろしく頼む」

ライラのお師匠登場。

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