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聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
2章 ガルディア連合国
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32話 新たな指名依頼

 領主館に連れていかれてから一週間。

 あれ以来、四人はパーティとして細々とした依頼をこなしていた。今日は久しぶりにリュカがダンジョン前診療所を開き、他の三人も手伝いに来ている。

「まったく、こんなかすり傷程度で光魔法で治療してもらおうとするんじゃないわよ!」

 ライラが目の前の新人冒険者の腕に傷薬を容赦なくかけた。

「しみる!!しみるってライラさん!!」

「ここは良心的な価格だけど、こんぐらいならちゃんと薬で処置してれば明日には痛みも引いてるから大丈夫なの!」

 手際よく当て布を当て、セラフィナから渡された包帯をくるくると巻いていく。

「流石に手際いいな」

 リュカは重傷者の治療をしながら感心したように言った。

「まぁ普通はこうして手当てするもんだからね。新人のうちは特にお金無いし」

 包帯をきゅっと結び、ライラは新人の背中を軽く叩いた。

「はい終わり。次は怪我しないように頑張んなさいよ!」

「ありがとうございました!」

 新人は何度も頭を下げて走っていく。

 外ではユリウスが怪我人を重傷者と軽傷者に振り分けていた。有名人であるユリウスの言葉に、並んでいる冒険者たちは素直に従っている。

 そのおかげで診療所の流れは驚くほど整っていた。


 やがて最後の負傷者を送り出し、四人は診療所のテントの片付けを始める。

「今日はみんなが手伝ってくれて作業が流れるように進んだなぁ。助かったよ」

 リュカは荷物を魔法鞄にしまいながら礼を言った。

「俺たちもいい経験になったからな」

 ユリウスがそう言うと、セラフィナも小さく頷く。

「そうそう。顔見知りにもたくさん会えて結構楽しかったわ」

 ライラはそう言って嬉しそうに笑った。

「この後ギルドに報告に行くんだけど、その後みんな時間あるか? 今日のお礼に酒の一杯でも奢るよ?」

「え!?いいのー?やったね!」

 ライラが勢いよく立ち上がる。

「行こう行こう!」

 

 四人はそのままギルドへ向かった。

 扉を開けると、ちょうど窓口にマイアの姿が見える。自然とそこへ足が向いた。

「マイアさん、今日は診療所終わったんで報告に」

 リュカが声をかけると、マイアは顔を上げて朗らかに笑った。

「お疲れ様でした。いつもありがとうございます」

 そして少し申し訳なさそうに続ける。

「あと、お疲れの所申し訳ないのですが、先程皆様宛にと指名依頼がありまして……この後お時間ございますか?」

 

 通されたのは三階の応接室だった。

 ここで仮パーティを組んだのが、もうずいぶん前のことのように感じる。

 しばらくして扉が開き、グスタフとマイアが入ってきた。

「急な呼び出しですまなかったな」

「このパーティへの指名依頼だと聞いたが……?」

 ユリウスが腕を組んで尋ねる。

「そうだ。お前たちにはもう一度ダンジョンの調査をしてもらう予定だったんだが……隣国のギルドからの要請があってな……」

「隣国?」

「ガルディア連合国からの依頼だ」

「えっ……!?」

 ライラが目を丸くする。ユリウスが眉をひそめた。

「隣国から一体どうして俺たちに指名依頼が入る事に? 俺たち、本当に最近パーティになったばかりなんだが……」

 グスタフは腕を組んだ。

「……このパーティ、と言うよりはユリウスとライラ、お前たち宛の指名依頼だ」

「俺とライラ?」

「お前たちがパーティを組んだと噂が届いたようでな」

「え、ユリウスはともかく私なんて中級冒険者なのに?」

「上級冒険者であるユリウスのパーティにガルディア出身がいる、というのが重要だそうだ」

 ライラは腕を組んで唸る。

「うぅーん……よく分からないわね……」

 ユリウスが視線をグスタフに戻した。

「とりあえず依頼内容を聞かせてくれ」

 グスタフは静かに頷いた。

 

「今回の依頼はガルディアの辺境で多発している子供の神隠しについての調査だ」

「神隠し?」

「神隠しというより……おおよそだが人身売買が絡んでる可能性があるようでな」

 空気が少し重くなる。ユリウスがすぐに口を開いた。

「……それは冒険者の管轄外では? ガルディアの国立調査団などは?」

「それなりに機能しているらしいが、どうにも進展が無くてな。少しでも調査の手を拡げたいと冒険者も駆り出しているそうだ」

「何故わざわざ他の国のパーティに依頼を?」

「ユリウスは他国でも名が知られているうえにガルディア出身のライラがいるからだな。ガルディア連合国はうちだけじゃなく、他の国のギルドのガルディア出身者にも指名依頼を出しているとのことだ」

 リュカは腕を組んだ。話が妙にきな臭い。ただの捜索依頼とは思えない。

 ガルディア連合国に何か思惑があるのではないか。そんな疑いが頭の中に浮かぶ。

 

 ユリウスが隣を見る。

「……ライラ、どうする? 指名依頼だが、断っても構わんぞ」

「……でもそれじゃペナルティ受けるじゃん……」

「問題ない。あまり無理を言って来るような依頼ならこっちにとってもマイナスだ」

 ユリウスは迷わず即答した。ライラは少し悩むように黙り込んだ。それから顔を上げる。

「…………ごめん、完全に私情だけど、この依頼受けてもいいかな?」

「あぁ。わかった」

 ユリウスはすぐ頷いた。そして二人を見る。

「リュカとセラフィナはそれでいいか?」

「もちろん」

「……大丈夫」

 二人の返事も迷いはなかった。

 新しい依頼の気配が、静かに部屋の中に広がっていた。

ようやく2章本編スタートします。


キャラの魅力が出せるように頑張ります!

2章もだいぶ長くなる気がしますが、お付き合い頂けると嬉しいです。

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