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聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
1.5章 閑話のような
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31話中編 居場所

 酒も料理も進み、席の空気はすっかり和やかなものになっていた。

 最初は食べることに夢中だった四人だったが、自然と話題は先ほどまでの出来事へと戻っていく。

 リュカがグラスを揺らしながら言った。

「それにしても、ユリウスの兄さん……マジで怖かったな……俺、笑顔があんなに怖い人初めてだよ……」

 エールからワインに変えたばかりのグラスを口に運ぶ。

「私、緊張しすぎてその辺記憶が曖昧……」

 向かいでライラは取り分けた皿の上のトマトをフォークでつつきながらぼやいた。

「絶対敵に回しちゃいけない人ってセリオンさんみたいな人の事言うんだなって思った。いや、貴族だし当然なんだけどさぁ……」

 

「まぁ……言いたいことはわかるぞ」

 ユリウスが苦笑しながら小さく頷いた。

「領主である父も、兄様の才覚をわかっておられてな。もうほとんど表に出て来ないんだ。報告とかで陛下に拝謁する時ぐらいだよ」

「マジかよ……」

「頭の回転が速すぎてな。いったい物事の何手先を見ているのか……我が兄ながら時々怖くなる」

「うわぁ……」

 リュカが背もたれに体を預けた。

「確かにそんな感じだったな……こっちの事も全部見透かされてるというか……」

 思い出しただけで背筋にぞわりとしたものが走る。

 

 ライラがふっと息を吐いた。

「私は何よりあの美貌にビックリしたわ……美形が揃ってるエルフより確実に上よあれは……」

「うん。確かに」

 リュカも真顔で頷く。

「なんか後光が見えたよな」

「領主代理だけじゃなくて他のお兄さん達もめちゃ整ってるし。ユリウスが美形なのも納得だったわね……」

 セラフィナも静かに頷く。するとユリウスが目を瞬かせた。

「……美形?俺が?」

 その反応にライラは額を押さえた。

「え、まさかの無自覚?……はぁ、まぁあの顔と一緒に過ごしてたんならそういう認識にもなりそうよね……罪なヤツだわ……」

 首を横に振る。ユリウスはますます困惑した顔をしていた。

「?どういうことだ?」

「めっちゃ人気あるのよ、女の子から」

「うん。確かにモテそうだな。ユリウス」

 リュカが真顔で頷く。ライラも同意し、セラフィナもこくりと頷いた。

 だが当の本人だけが首を傾げている。

 

 しばらくして、セラフィナがぽつりと言った。

「……私でも知ってる。ユリウス、有名人だったから」

「だよねー!しかも上級冒険者だし、憧れてた子いっぱいいたよぉ?」

 ライラが楽しそうに身を乗り出してニヤニヤと笑う。 

「……いや、特に嬉しくは無いんだが……」

 ユリウスは困ったように眉を下げた。

 

「俺が一緒に組みたいと思ったのはお前達だけだからな。それ以外に好意を向けられても困るだけだ」

 

 そう真面目な顔で言い切った。

 その瞬間、リュカとライラは同時に机に突っ伏した。セラフィナも俯いたまま動かない。

「え、なんだ?どうした?」

 ユリウスが慌てて周りを見回す。

 リュカが耳まで真っ赤にして呻いた。

「ユリウスお前……本当にさぁ………身バレして吹っ切れたのか?こっちが恥ずかしくなるわ……」

 顔を伏せたままぶつぶつと言葉を発している。

 ライラも額を押さえてうめいていた。

「……いや、いいんだけどさ、からかっちゃったの恥ずかしくなっちゃうでしょーが……」

 セラフィナは俯いたまま完全に固まっていた。


 リュカが勢いよく顔を上げる。

「よし、飲もう!!!」

 更に勢いよく手を上げた。

「すみませーん!」

 店員を呼び、ワインとつまみを追加注文する。それを聞き、女性陣も顔を上げた。

「…甘いの頼も」

「うん……」

 まるで示し合わせたかのように、甘味の注文が追加された。話題を変えようとする空気がとてもわかりやすいが、ユリウスだけが不思議そうな顔をして首を傾げていた。

 

 少しして、注文した品が届く。ライラがフォークをくるくる回しながら言った。

「そういやリュカってホントすごい遠くから来てたのね。アストレア王国って地図の端っこにある所でしょ?」

 オレンジソースのかかったフルーツガレットを口に運びながら尋ねる。

「あー……うん。そうだよ」

 リュカはワインを傾けた。

「ここにたどり着くのに一年半ぐらいかかったから……まぁ旅の途中で各地のダンジョンに潜ったりしてたけど」

「ふーん」

 ライラはフォークを回し続けている。

「そういやリュカも上級冒険者だったわね」

 

 そしてふっと視線を上げた。

「で、今日の二の舞になりたくないから聞くけど」

 フォークの先がぴたりとリュカを指す。

 

「なにか隠してる事ないの?故郷の話になるとちょっと誤魔化そうとしてるでしょ」

 

どんどんぶっ込んでいきます。

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