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聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
1.5章 閑話のような
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閑話 グランスロット兄弟の密談②

お兄ちゃんの考察は続きます。

 サイレスは手元の報告書から顔を上げ、少し考えるように言った。

「……故郷が無くなったと言っていたな」

 腕を組みながら視線を天井へ向ける。

「辺境の村で、近年無くなった所があったか?」

「近年ではないが、一番最近なら十年前。北のエルミア領、リーヴェル村だな」

 サイレスの問いにトールはすぐに答えた。書類をめくる手を止めず、淡々と口を開く。

 その名前を聞き、セリオンがゆっくり椅子の背にもたれた。

「山間の辺境すぎてね。壊滅した村の発見が、随分と遅れた所だ」

 遠い記憶を辿るように視線を宙へ漂わせる。

「エルミアのハーヴェイ伯が、陛下の御前で随分顔色が悪かったのを覚えているよ」


「……おそらく彼女は、リーヴェル村の生き残りだ」

 

 相変わらず笑みは浮かんでいたが、その声はどこか暗さを含んだものだった。

 サイレスは再び報告書へ目を落とし、視線を走らせる。

「……四属性魔法を操る魔法使いか。ここを見るだけでも規格外と分かるが……中級冒険者」

 視線が止まる。

「あぁ、パーティでの実績無し、これか。大人しそうなお嬢さんだったからなぁ。………!後衛の魔法使いが単独で四十五階層以上を踏破してるのか」

 感心したように、ゆっくり頷いた。

「“影”からの報告ではユリウス達と指名依頼でパーティを組むまで、誰とも関わろうとしなかったそうです」

 トールが眼鏡の位置を指で押し上げる。

「ギルドでは、マイアが受付の時だけ依頼を受けていたと。仕事は丁寧で、達成率も高評価。……ただ」

 そこで少し言葉を区切った。視線が一行に留まる。

「先日、リュカとギルドの訓練所での最中、魔力暴走の兆候が見られたとの報告があります。リュカが抑え、大事には至らなかったと」

 サイレスが眉を寄せる。その話を聞きながら、セリオンはこめかみに人差し指を当てる。

「ふぅん……魔力暴走、ね」

 少しだけ考え込むような仕草をした後、顔を上げた。

「トール」

「はい」

「レンティスは今、エルミア領に派遣されていたね?」

「えぇ。……何をさせる気です?」

 わずかに目を細める。セリオンは軽く肩をすくめた。

「うん、ちょっとね。まだ確信は持てないから、もう少し情報が欲しい」

 あっさりした口調だった。トールは小さくため息をつく。

「はぁ……分かりました……連絡しておきます」

 セリオンは柔らかく笑った。

「ありがとう」

 

 サイレスが腕を組み直す。

「セラフィナに何か問題があるのか?セリ兄」

 視線をセリオンへ向けると彼は首を横に振った。

「いや、セラフィナさん自身は、特に問題は無いだろうね。人に怯えてはいるが、根はいい子だよ」

 少しだけ笑みを深め、机の上で手を組んだ。

「……まぁ、ユリウスが受け入れている時点で、みんな合格なんだけどねぇ」

 楽しそうな声色でそう言った。

「違いないですね」

 トールがセリオンの言葉に静かに頷いた。

「ユリウスがあんなにセリ兄に怒ってたの、初めてなんじゃないか?成長したよなぁ……」 

 壁にもたれたまま腕を組みしみじみとサイレスは笑う。

「特にリュカ君はね、あの子に良い影響を与えてくれているようだから……私たちも出来る限りは手助けをしてあげよう」

 そう言ったセリオンを見てトールが苦笑する。

「ユリウスが嫌がりそうですね」

 

「うん。でもそのうち、うちの力が必要な時が来るさ」

 セリオンは目を細めてそう言った。その声音には、ほんの少しだけ含みがあるように感じる。

 

「……そのうち?」

 サイレスが首を傾げる。セリオンは更に目を細めて笑った。

 

「うん。……そのうち、ね」

 

 その笑みを見た瞬間、サイレスが顔をしかめる。

「うわぁ……セリ兄がこういう時、だいたい何か起こるんだよな……怖……」

サイレスが身震いし小さく息を吐く。その肩に手が置かれた。

「……諦めろ。……我々はセリオン兄様の補佐なのだからな」

「分かってるけどさぁ……」

 サイレスは肩を落とし項垂れ、ふと思い出したように呟く。

「つくづく思うけどさ、父様と母様が裏に引っ込んだ理由も分かる気がするよ」

 その言葉にセリオンが即座に反応した。

「やだなぁ、追い出したみたいに言わないでくれるかな?」

 にこやかに笑い、組んだ手に顎を乗せた。

「あくまで私は領主代理だよ?」

 トールは無言で眼鏡を押し上げ、サイレスは半分呆れた顔で天井を見上げる。

 そんな三人のやり取りを残したまま、執務室の灯りはまだ消えない。

 グランスロット家の夜は、静かに更けていった。

底知れぬグランスロット家のお兄ちゃんのお話でした。

一番怖いタイプの領主様(代理)。

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