19話 ギルドへの報告
小休止を終えた四人は、安全地帯の転送陣から一気にダンジョンの入口へと戻った。外に出た瞬間、肌に触れる空気がわずかに軽い。
時間はすでに夕刻に差しかかっており、街には柔らかな橙色の光が広がっていた。
「このままギルドで報告を済ませるぞ」
ユリウスの言葉に、全員が頷く。
「了解!あ、せっかく久しぶりに街のご飯だしさ、あとでお疲れ会しようよ」
ライラが弾むような声で提案する。
「いいなそれ、賛成」
リュカが笑ってセラフィナを見る。
「セラフィナも行くよな?」
少しだけ驚いたように目を瞬かせ、それから頬をほんのり染めて、小さく頷いた。
「……うん」
「よし、決まりだな」
ユリウスもわずかに口元を緩める。
「そうと決まれば、さっさと終わらせてしまおう」
軽やかな空気のまま、四人はギルドへと足を運んだ。
受付前に立つと、すぐにマイアがこちらに気づいた。
「おかえりなさい。お疲れ様でした、ご無事で何よりです」
柔らかな微笑みが、張り詰めていた気持ちをゆるめてくれる。
「ただいまマイアさーん!」
ライラがぱっと駆け寄ると、マイアはくすりと笑った。
「ギルドマスターをお呼びしますね。少々お待ちください」
案内されたのは、小会議室だった。ロの字に並べられた長机と、思いのほか座り心地の良さそうな椅子。
四人は横一列に並んで腰を下ろす。
上座からユリウス、ライラ、リュカ、セラフィナと座っていった。
「うわぁ……これ、会議室なのに椅子ふっかふかじゃん……」
リュカがそのまま沈み込むように背もたれに体重を預ける。
「これは寝れる……」
「やめときなさい、身体痛くなるわよ」
ライラが笑いながら突っ込むと、自然と周りも笑みをこぼした。
その空気のまま、扉が開く。
グスタフとマイアが入り、その後ろからもう一人、白衣を纏った人物が続いた。
長い金髪にどこか気だるげな雰囲気を纏うエルフの男。視線だけがやけに鋭い。
「……なんだ、随分仲良くなったようだな」
グスタフが腕を組んだまま言う。
「ギルマスの言った通り、私たちめっちゃ相性良かったんだー」
ライラがにこにこと答えると、グスタフは小さく鼻を鳴らした。
「そうか。ご苦労だったな。早速報告を聞こう」
一拍置いて、隣の男へ視線を向ける。
「……と、その前に紹介しておく。古代文明研究所の所長だ」
促されるように、エルフの男が一歩前に出た。
「どうも、仕方なしに所長やってるリシェル・アスラエルと申します」
さらりと名乗ったかと思えば、そのまま言葉が止まらない。
「専門は魔法研究と精霊魔法研究。古代文明研究所の中の部署なんだけどさぁ、僕、研究所内で一番古株だから仕方なくなんだよほんと、いらない仕事ばっか増えてさぁ、いや研究させてくれよって話なんだけど分かる?」
一気にまくし立てられ、四人は揃ってぽかんとする。
数秒の沈黙。
「……えっと」
ライラがちらりとユリウスを見る。
ユリウスも一瞬言葉を探すようにしてから、軽く咳払いをした。
「ユリウス・ヴォルディだ。今回の調査の取りまとめをしている」
そこから、簡単に自己紹介が続く。
リュカとセラフィナも名乗りを上げ、場の空気がようやく落ち着いた。
やがてユリウスが姿勢を正し、報告を始める。
調査の経緯、確認された異変、階層ごとの変化。
淡々と、だが漏れなく整理された言葉に、ライラとリュカが要所で補足を加えていく。
リシェルは途中から腕を組み、興味深そうに耳を傾けていた。
「……以上のことから、我々は“45階層にフロアボスが誕生し、それに伴って上層部および下層部の大規模な再編成が起きた”と仮説を立てた」
ユリウスが締めくくる。
「消耗品の関係で、今回の調査は48階層までとなったが……」
「十分だ」
グスタフが短く言い切った。
「お前たちに依頼したのは正解だったな」
満足そうに頷きながら、四人を見渡す。
「引き続き調査は必要になるだろう。その際は、改めて指名依頼を出す予定だ」
その言葉に、自然と四人の視線が交わる。
そろそろ解散かという雰囲気の中、リュカが少しだけ遠慮がちに手を上げた。
「……すみません、あと一つ相談があるんですけど」
そのまま、隣に座るセラフィナへ視線を向ける。
セラフィナは一瞬だけ目を伏せ、それから小さく頷いた。
それを確認して、リュカが口を開く。
「セラフィナの魔力について、なんですが」
その言葉に、リシェルの目がわずかに細められる。
興味を見つけた研究者の、それだった。
気だるげエルフ登場。




