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聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
終章 エピローグ
153/158

118話 調査結果のその後は。

 ダンジョンの調査も順調に進み、最初に潜ったダンジョンは全十二階層だった。

 それからいくつかのダンジョンにも潜り、調査を進めていく。未開拓だったというだけあって、そこに向かうまでの道のりが殆ど道無き道を進むような状態だ。

 ダンジョンも、新人冒険者が倒せる程度のモンスターが延々と出るダンジョンもあれば、上層階なのに中級冒険者程度の実力が無いと突破出来ないようなモンスターが出る難易度の高いダンジョンもあった。

 二十日に渡って調査し終わったダンジョンは全部で五箇所。

 その中で一番深層があったのが三十八階層、最短が十二階層だった。

 

 深層から帰還した後、アルバがリュカ達に頭を下げる。

「ユリウスさん、パーティとして依頼を受けてくださって感謝します!とても勉強になりました。ありがとうございました」

「いや、こちらは正式な仕事なんでな。まだ未踏破のダンジョンはどうするつもりだ?」

 

「そうですね……一旦はこの五箇所のダンジョンを軸にして、冒険者がある程度定着してからおいおい調査を進めて行きたいと思ってます。増やし過ぎても管理が出来ないので。ギルドをもう少し立て直してから、ですかね。後は期間限定でギルドマスターを引き受けてくれる方を派遣してもらおうと思っています」

 

「そうか。堅実だな」

「何事も一歩ずつですから」

 そう言って笑うアルバにライラが少し心配そうな顔で言った。

「そうねぇ……今が一番大変だろうけど、働き過ぎちゃダメよ?一人でなんでもやってたら倒れちゃうわよ?」

 

「心配してくださって嬉しいです!ライラお姉様!大丈夫です!父の側近の方々も色々と手伝ってくださるので、私一人でなんでもやっている訳ではないんですよ」

 

「それなら良いんだけど……後『お姉様』は止めてって言ってるのに……」

「嫌です。お姉様はお姉様なので!」

「はぁ……どうしてこうなったの……」


 二十日間のダンジョン調査を経て、アルバと打ち解けたのは良いのだが、なんとライラに懐きすぎてしまっていた。

 

 二箇所目のダンジョンでの事、エイプと呼ばれる猿型モンスターの大群に遭遇した一行は、パーティ総動員で討伐に当たっていた。

 レンティスが護衛に付いている限り、アルバの安全は保証されているが、念の為リュカが張った守護結界の中で戦況を見守っていた。

 エイプは素早い動きのモンスターで数が多い、というだけでリュカ達の敵ではなかった。それぞれ一撃で確実に仕留めていく。

 中でもライラの戦闘スタイルは群れの隙間を素早く縫うように進み、すれ違いざまに一撃を入れていくというものだ。

 まるで舞っているようにも見え、見るものを魅了するような、全身を使った躍動感溢れる戦闘だった。

 

「なんて綺麗なの……」


 ポツリと呟いたアルバの声に、近づくエイプを蹴り飛ばしていたレンティスは思わずアルバの方へ振り返る。

 

 彼女はライラを見つめながら瞳を輝かせていた。

 

 最初のきっかけは間違いなくこの戦闘だった。

 それからというもの、戦闘中は勿論、野営の最中にライラがレンティスに構われている場面でも視線を感じる事が増えた。

 しばらくして、視線に耐えかねたライラはアルバに尋ねることにした。

「ねぇ、何か言いたい事でもあるの?落ち着かないんだけど……」

「あっ……いえ、すみません……」

「慣れないダンジョンで不安な事とか体調が悪いとかあったりする?そういうのは言ってくれた方が助かるけど」

「ち……違うんです!そういうんじゃなくて……あの……」

「じゃあどうしたの?」


「…………て……」


「ん?」

 


「ライラお姉様が!!美しくて!!目が離せないんです!!」


 

 安全地帯に響きわたる程の告白に、全員が驚きで石のように固まってしまう。


「……………………は?えっ?どゆこと?……お姉様?」


 驚いた顔のままライラがそう言うと、アルバは堰を切ったように語り出した。

 あまりにも長い為要約すると、まるで舞台を観ている様な戦闘に心を奪われてしまったそうだ。

 更にレンティスと並んでいると舞台俳優のようで、彼に甲斐甲斐しく世話をされているライラを見てしまい、参事官を務める程の男性さえ夢中にさせるライラの比類なき魅力が眩しく見えたそうだ。


「……で、なんでお姉様……?」

 

「我々アストレアの女性が目指す理想像がライラお姉様だからです!強く、優しく、美しく!これを目標にしていきたいと思っています!」

  

「……気持ちはちょっと分かる……」

 

 セラフィナが困惑した顔のまま呟いたのを聞き逃さなかったアルバが、同士を見つけた嬉しさで満面の笑みを浮かべた。

「ですよね!?セラフィナさんは同じパーティにおられるだけありますね!分かって頂けて嬉しいです!」

「あ……いや……私は……」

 

「レンティス参事官と並ぶお姉様の美しさは物語の一幕のようで額に入れて飾りたい程ですし、 ずっと見守っていたいぐらい尊いですよね!?ホント、私の護衛なんて放っておいてもらって良いから戦闘中も二人で並んでてくれって思う次第です!!」

 

「アルバ……ちょっと……あの……」

 セラフィナはアルバの勢いにタジタジになっていて、つい本音を呟いてしまった事を後悔していた。

 

 皆が若干引き気味になっている所で、タイミング良くユリウスがアルバの肩に手を置いた。

「落ち着け。話なら俺が聞いてやるからそれ以上喋るんじゃない」

「えっ!?」

「少し抜ける。リュカ、後は頼む」

「あ……あぁ」

 ズルズルとユリウスに引き摺られ、アルバはこの場から去っていった。

 後に残されたのは微妙になった空気と頭を抱えて蹲るライラだった。


 一刻程過ぎた頃に戻ってきたアルバはすっかり落ち着いていた。ユリウスにどう説得されたかは分からないが、それからは暴走する事もなく今に至っている。但し、呼び方だけは『お姉様』のままだったが。


 こうして、アストレア王国でのダンジョン調査は終了したのだった。


 そして現在、リュカはセラフィナと一緒に酒場でグラスを合わせていた。

 その向かいの席には何故か笑顔のローランドが座っている。


——————

 

 ダンジョンから帰還したその後は、各自自由時間にしようとユリウスが言うと、直ぐにレンティスが反応した。

 

「じゃあ僕はライラちゃんにデートでもして貰おっかな。折角の休暇だから、僕にライラちゃんの時間を譲って欲しいな。ね?」

 

 レンティスは少し屈んでライラの顔を覗き込むと、少し首を傾げてお願いしていた。ライラはほんのりと頬を染めると軽く咳払いをする。

「んんっ……分かった……」

「やったね!嬉しいなぁ」

 レンティスはパッと顔を綻ばせるとライラの腰に手を添えて踵を返す。

「じゃあ皆、また明日ねぇ」

 鼻歌でも歌いそうな雰囲気でレンティスはライラを連れて去っていった。

  

 残された三人はご飯でも食べようかと、初日に連れられた食堂へと向かうその途中、帰還報告の為離脱していたアルバが戻って来る。

 その後ろに士官服を着た小脇にノートを抱えた眼鏡の男性を連れていた。聞けば革命軍の参謀長だそうだ。

 

「アルバからは報告受けてンだけど、君達からも調査の詳細を聞かせて欲しくてな。すまんが庁舎で話を聞かせて貰えないか?」

 

「あぁ、構わないぞ。俺が行こう」

 

 ユリウスがその申し出に快く頷いた。リュカも一緒に移動しようとしたが、ユリウスに止められる。

「折角ライラ(保護者)が居ないんだ。久しぶりにセラフィナと二人で出かけてこい。こっちは俺だけで十分だからな」

 そう言ってユリウスはリュカの背中を軽く叩くと、アルバ達と司令官庁へ向かっていった。


 置いていかれたリュカはセラフィナと顔を見合わせると二人で小さく吹き出した。

「折角だし、街中ブラブラするか」

「うん」

 二人は自然と手を繋いでルクシアの街を散策する事にした。

 馬車からの眺めでは分からなかったが、戦火の傷跡はあるものの人々の活気が失われている訳ではなかった。

 露天商も並び、生活品や薬草、食料品に衣料品等も売っており、行き交う人には笑い声も混じっている。

「……やっぱ、商人ってのは逞しいな」

「そうだね。……そういえば辺境の村だと流れの商人が色んな物売りに来てたりしたよ」

「へぇー、そうなんだ」

「珍しいから商人が来る日は村中の人が村長の家に集まって来てたんだ。賑やかで、お祭りみたいだなって思ってた」

「商人がいると街が活気づくんだなぁ」

「そうかも」


 他愛も無い話をしながらしばらく街をぶらついていたが、徐々に日が暮れて来る。

 そろそろ何か食べようと、二人は灯りが点灯したばかりの酒場へと足を踏み入れた。

 そこはカウンター席とテーブル席がある、シンプルな造りの酒場だった。ちらほらと客も入っていて、エールを片手にご飯を食べている人達がいる。周りを見渡したリュカの視線がカウンター席に止まった。

 

「……先生?」


 そこに座っていたのはちまちまとおつまみを食べながらエールを飲んでいるローランドだった。

「ん?おぉ、リュカじゃねーか。何してんだ……って……お前、そういう事だったのか!?」

 リュカと手を繋いだままのセラフィナを見つけ、ローランドは目を丸くしていた。

「なんだよ!早く言えよぉ!親父!俺の客人が来たから席移るぞ!」

「おぉ、好きにしな」

 飲みかけのエールとつまみを抱え、ローランドはリュカとセラフィナをテーブル席に座るように促した。

レンティスに続きライラにも限界オタク爆誕。

アストレア王国は娯楽の少ない貧しい国だったので、アルバにとって観劇なんかはずっと本の中の世界だった訳です。

2次元の世界が3次元として目の前に現れたのでこうなってしまった。

ライラは老若男女問わずモテます(n回目)

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