↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
3章 エルドリア王国
132/158

98話 重なる、重ねる※

 リュカが語った昔話にセラフィナは胸が締め付けられるような思いだった。

 この優しい人が五年間すり減らした心を自ら修復して、ここに来てくれたのは本当に奇跡のようだ。

 リュカがグレイスロウに来て居なかったら、ライラも今ここに居なかったかもしれない。

 ユリウスとも接点なんて無くて、パーティなんて組めずに未だに色褪せた日々を過ごしていたかもしれない。

 リュカが今のリュカになるまでにどれ程の葛藤があったのか、想像するだけで、セラフィナは心が押し潰されそうになる。


「俺さ、本当にグレイスロウへ来て良かった」


 そう言ったリュカは温かな笑みを浮かべていて、それを見たセラフィナは思わず立ち上がり、椅子に座った彼を思いっきり抱きしめていた。

「……セラフィナ?」

 

「……リュカが、リュカで良かった」


「……?どうした?」


「リュカと出会えて、私ね、本当に良かったよ」


「うん……」


「こんなに、一緒にいたいって思える人に出会えて良かった……」


「セラフィナ……」


 抱きしめられたリュカがセラフィナの胸元から少しだけ顔を上げるとセラフィナの赤い瞳と視線が絡む。

 視線を合わせたままセラフィナがゆっくりと近づいて、額を合わせた。

 

「リュカが好きなの」


 セラフィナはリュカの瞼にそっと口付けを落とした。


「……上手く言えないけど、リュカの事思うだけで、私は私でいられるから……。リュカはそのままで私の傍にいて欲し……!」


 セラフィナの言葉は最後まで紡がれる事は無く、リュカの唇に飲み込まれていった。


 今まで交わした優しく触れるだけでは無い、翻弄されるような深い口付けだった。

 セラフィナは初めて感じるリュカの体温に溶かされてしまうような感覚になり、少しずつ力が抜けてしまう。


 しばらくして唇が離れると、お互いの息遣いが荒く、熱を帯びていた。

 リュカは力の抜けたセラフィナを抱え、そのままベッドに倒れ込んだ。

 

「……セラフィナ」

 

 切なそうに名前を呼ばれ、セラフィナの背中にゾクゾクしたものが這い上がってくる。

 リュカはセラフィナの頬を撫でるともう一度深く口付けていく。

 セラフィナの小さな口内を解すように優しく入り込んでいった。


「……っはぁ……」

 優しく解されて、セラフィナの肩が少しだけ震えていた。リュカは熱を帯びた瞳でセラフィナを見つめる。


「……これ以上は止まれなくなりそうだ」

「…………リュカ?」

「……ごめんな、無理やり口付けた」


 親指でセラフィナの唇をなぞり、リュカがセラフィナの上から降りようと身体を動かした瞬間、セラフィナがリュカの首に腕を回して抱き止めた。


「っ!……セラフィナ、離して……」

「やだ……」

「無理強いはしたくないんだよ……」

「無理強いなんかじゃないよ…」

「意味、分かって言ってる?」

「分かってる」

 リュカが息を飲んだ音がして、セラフィナの背中に手を回して抱き締めると、セラフィナも首に回した腕にぎゅっと力を込めた。


「……ホント、敵わないな……」

 そう小さく呟き、セラフィナの首筋に口付け、そのまま舌を這わせて耳朶に軽く歯を当てた。

 肩が小さく跳ねて、吐息混じりの声が漏れた。セラフィナはそのままジッとリュカの方へ視線を向ける。

 

「…………ねぇ」

 

「……どうした?」

 

「……リュカって、こういう事、した事あるの?」


 唐突な質問にリュカは分かりやすく動揺していた。視線が泳ぎ、苦笑いを浮かべている。 

「あー……えーっと……」

「戦場にいる軍人だったならそういう経験あるでしょってライラが言ってた」

 ライラは悪く無いのは分かっているが、リュカは目を閉じて額に手を当てて考え込んでしまった。

 

「………………無い、とは言わない……」

 

 額に手を当てたまま、リュカは小さく呟いた。セラフィナは小さく頷くと、額に当てていたリュカの手を取って、自分の頬に寄せた。

 

「そっか。……私は知識しか無いから、やって欲しい事、リュカが教えて?」

 

 グッと息を詰まらせて、リュカは大きく深呼吸をする。セラフィナの額に優しく口付けを落とすと両手で頬を包んだ。

「…………分かった……どうしても、負担が大きいのはセラフィナの方だから。……しんどかったら言ってな?」

「うん」

「出来るだけ、優しくする」

「ん……」


 リュカはそっとセラフィナの唇に自分の唇を重ねた。


 愛おしさを伝えるように、何度も、セラフィナへ口付けていく。


 ふと気がつくと外は月明かりが浮かんでいた。柔らかな光が彼女の白い肌を照らしていて、その美しさに胸の奥が苦しくなる。

 彼女と触れ合った場所から月の光に溶けてしまうような気がして、リュカは縋る様にセラフィナを腕の中へ閉じ込めた。


 

——————————

 


 夜明けも近くなり空がうっすら明けた頃、リュカは目を覚ました。

 自分の腕の中で穏やかに眠るセラフィナを見つめ、ほっと胸を撫で下ろす。

 昨夜は随分と無理をさせてしまった。

 出来るだけ理性を保つ努力はしたが、余裕なんて一つも無くて。

 彼女の中を少しずつ暴いていく事に艶やかに花開くように美しくなっていって、その度大きく息を吐いて衝動を抑えた。


 ジッと寝顔を見ていると眠るセラフィナの銀色のまつ毛が朝日を反射して煌めいている。

 

(……綺麗だな)


 リュカは起こさないようにセラフィナの髪にそっと口付ける。

 男女の睦言でこんなにも心が満ち足りる事があるのだと初めて知った。

 胸の奥からとめどなく溢れてくるこの気持ちになんて名前をつけたら良いのかがリュカには分からなかった。


(離れたくない……)


 腕の中にいるセラフィナを更に抱き寄せてリュカはもう一度目を閉じた。



 すっかり日が昇った頃、ようやくセラフィナの意識が浮上した。

 目を開けると目の前にリュカが優しく微笑んでいて、どうやらセラフィナの顔を覗き込んでいたようだ。

 ふと背中に触れる素肌の感触に慌てて自分を見ると、未だに何も身にまとわずにいる。昨夜の事を思い出し、一気に顔が熱くなって思わず毛布を抱き込んだ。

 

「おはよう。……身体は大丈夫か?」

「っ…………」

 毛布で顔を隠して小さく頷くセラフィナの額に口付けを落とし、リュカは楽しそうに笑った。

 

「ははっ……かーわいー……」

 

「……恥ずかしい……」

「顔見せて」

「……やだ……」

「顔見たい」

「……」

「セラフィナさん?」

「…………せて……」

「ん?」

 

「……せめて服着させて……」


 毛布の中に丸まってしまったセラフィナを見て、リュカは声を上げて笑うと、ベッド脇に落ちていた服を拾ってセラフィナに手渡した。

 自分も軽く身なりを整え、ベッドサイドに腰掛ける。

 着替え終わったのか、そろそろと毛布から出てきたセラフィナは、ベッドサイドに座ったリュカの隣に座り直した。

 リュカはセラフィナの髪を撫でるとそのまま肩を抱き、顔を覗き込んだ。

「ようやく顔見れた。体調は……大丈夫そうだな」

「……うん」

「今日も休みだけど、何かしたい事ある?」

「ううん。特にないなぁ」

「そっか……じゃあ飯でも食べに行く?そろそろ昼になるし」

「うん」

 

「……あ、出来るだけ、襟元詰まった服にした方がいいかも……」


 リュカが少し気まずそうに視線を逸らしながらそう言った。不思議そうな顔でセラフィナは首を傾げる。 

「……?なんで?」

「…………見たら分かる……」

 

 洗面所の鏡を見たセラフィナが自分の首筋にたくさんある鬱血痕に声にならない悲鳴を上げた。そして真っ赤に染った顔で困ったように眉を下げてリュカに詰め寄った。

 

「……もう!!バカ!!治してぇ……」


「ははっ、ごめんごめん」

 恥ずかしさで半泣きになっているセラフィナをそっと抱き締めて、リュカは治癒魔法で鬱血痕を消していった。


「もう消えたから、機嫌直して?」

 優しく目元を人差し指で拭うと、リュカはセラフィナの頬に口付ける。

「……怒ってないし」

「怒ってるじゃん」

「怒ってない」

「お詫びに昼ごはん奢らせてください」

「……許す」

 

 二人は顔を見合せて同時に吹き出した。

 ひとしきり笑うと視線が絡み、お互いに近づいて自然と口付けを交わした。

大人同士なので。

ぼやかしまくりの湿度と糖度高めでお送りしました。

R18部分をいつか書きたい気持ちもあります。


リュカは独占欲が強いと思う(確信)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。