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聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
3章 エルドリア王国
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96話 リュカの過去⑥

「四十七階層踏破……されたんですね……しかも単独で」


 ソラリスギルドでダンジョン踏破を報告をすると、エルフの男性職員に驚かれてしまった。

 タグに記録されている情報を何度も確認しながら小さく唸っている。しばらくお待ちくださいと言い残して男性職員が奥へ入っていった。しばらく受付前で待っていると小走りで戻って来るのが見えた。

「ギルドマスターからお話があるそうなので、お疲れの所に申し訳ないのですがどうぞこちらへ」

 

 案内されたのはギルドマスターの部屋。中に入ると応接の為のソファに腰掛けていた男性が、ソラリスのギルドマスター、エルフのラインハルトさんだった。

「君がリュカか。中級冒険者で四十七階層を踏破したと聞いているよ。……ふむ、ボスがたまたまリッチだったからねぇ……って君、サラッと話してるけどリッチがどんなモンスターか知ってる?物理攻撃は効きづらいし魔法防御力も高いし配下を使うから逃げ足も速いしなかなか厄介なモンスターなんだけど」

 ボス戦での事を話すと、ラインハルトさんが頭を抱えて項垂れてしまった。

 

「範囲治癒魔法で配下は殲滅……守護結界で閉じ込めて浄化と治癒魔法で消滅させただと……?ヒーラーで光魔法の精度が高いと言えど消滅させるのにどれだけ魔力を込めればそんな事が出来ると言うんだ……」

 

 俺は魔力切れを起こした事は無いからどのぐらい魔力込めればいいのかは分からないと答えると、顔を上げたラインハルトさんは探るような目でこちらを見ていた。

 

「……リュカ、君ねぇ、それだけの上級魔法をポンポン使って魔力切れ起こさないとか尋常じゃない。規格外過ぎるという事だよ。ヒーラーで四十七階層まで潜るってのも一体何したらそんな風に……いや、すまん。過去を探るのは冒険者ではご法度だったな」

 規格外、そう言われた俺は、あまり目立たないように少し力を抑えて使わなければならないかもしれないと感じた。

 

 ラインハルトさんは少しだけ目を細めると、小さく息を吐く。  

「だがソラリスダンジョンを単独踏破して中級冒険者では格好が付かない。パーティ活動の実績もあるし、明日上級冒険者の筆記試験だけ受けてもらうよ。……いや、君に拒否権は無い。ソラリスで上級に上げるかどうかはギルドマスターである俺の権限だから。はいこれあげる。参考書だから読み込んどいて」


 こうして強制的に上級冒険者試験を受ける事になった俺は宿に篭もり、貰った参考書をひたすら繰り返し読み込んで、次の日の試験に臨んだ。

 回収した答案用紙を眺めながら、ラインハルトさんは小さく頷いていた。

「……うん。筆記も問題なし。リュカ、君、今日から上級冒険者だから。タグの更新は受付の彼にお願いしといて。これからどうするんだい?……そうか。グレイスロウを目指すのか。是非ソラリスギルド登録の冒険者になって貰いたかったが残念だ。光魔法使いなら引退しても町医者になれるし、色々助かるんだけどねぇ」

 

 ラインハルトさんの話から、ダンジョンから出てくる冒険者達の治療はどうしているのか、少し気になった為聞いてみると、彼は少し考えるような仕草で答えてくれた。

「現状、どこの国のギルドでもそれは気にしてる所さ。怪我の有無はやっぱり生存率にも関係してくるし。毎日じゃなくても、神官や光魔法使いが時々でいいからダンジョン前に待機してくれてると即対処出来て良いんだけどね。治癒って上級魔法を使うし、治療費をギルドが負担するにも限界があって難しいんだよ」


 ダンジョンに潜るだけが冒険者の仕事では無いし、光魔法を存分に発揮出来る場所として、診療所とか、そっちの方が人を助ける為に与えられた力を使えるのではないかと、ぼんやりと頭に浮かんでいた。

 この時には明確な形になっていなかったが、今グレイスロウで時々開く簡易診療所はこの話をしたのが最初の切っ掛けだったと思う。


 

 こうして早々に上級冒険者になってしまった俺は、早めにルミナール王国を出てエルドリア王国へ向かう事にした。

 

 俺は旅の準備の為、再度あの商人達の道具屋へ足を運ぶ。

「あ!お兄さん!無事帰って来られたんですね!どうでしたか?……えっ……踏破しちゃったんですか?マジ?魔石と聖槍……うわわわっ!ちょ……ちょっと親父さーーーん!」

 ドロップ品をカウンターに置くと、慌てて親父さんを連れて来た。

「うわっなんだこの魔石の数!!この槍は……聖槍エルディオンか。ヒーラーの兄ちゃんにピッタリの装備だな。……はぁ?買い取らないぞ?その槍は兄ちゃんが使いな。ってか上級冒険者になってるじゃねーかよ!!ははっそりゃそうか!!なら尚更、その槍は兄ちゃんが持つべきだな。どーしても売るって言うならこれの代わりにその背負ってる槍を売ってくれよ!」 

 腕を組んでニカッと笑った人好きのする笑顔に負け、俺は背負っていた槍をカウンターに置くと 、聖槍エルディオンを代わりに背負う。

「良く似合ってるな!で、今日は魔石売りに来ただけか?……そうか、エルドリア王国か。冒険者なら一度は行ってみたい所だもんなぁ。よし!旅の準備は俺に任せておけ」

 親父さんに色々と揃えて貰ったが、また支払いに関してすったもんだがあった。だが俺にとってこの商人達とのやり取りはとても良い出会いだったとそう思えるものとなった。


「お兄さん、またいつかお会い出来たら嬉しいです!」

「うちがエルドリア王国で店を出すまで冒険者で頑張っててくれよな」

 こうして支度を終えた俺は商人達に手を振って別れ、ルミナール王国を後にした。

今のリュカの装備品はここで揃いました。

親父さんは闇魔法の鑑定魔法が使えます。商人にあると便利な魔法。

そしてようやくグレイスロウへ。

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