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聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
3章 エルドリア王国
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95話 リュカの過去⑤

 リカルバン王国を後にした俺は東に向かい、ルミナール王国の首都ソラリスにたどり着いていた。

 着いたその日にソラリスの冒険者ギルドでタグを確認してもらうと、中級冒険者のまま活動を再開する事となった。

 

 俺はソラリスでも比較的長期間放置されている様な中級の依頼をこなしていく。

 時々、ヒーラーとして臨時でパーティに入る事もあったが、ここでもあまり長居をする予定では無かった為、パーティ加入の打診も理由をつけて断っていた。

 だが、冒険者についての情報収集をするのに助っ人での参加はとてもありがたかったのだ。


 ダンジョンを単独で潜ると、踏破した階層によって受けれる依頼も変わって来るという事。

 ダンジョンの深層に単独で潜る方が、希少なドロップ品が落ちる確率が上がる事。

 アヴァロライア大陸にあるダンジョンで今一番深い階層があるのは最南東にあるエルドリア王国のグレイスロウにある大ダンジョンだという事。


 地図を思い浮かべ、エルドリア王国のグレイスロウはアストレア王国から一番遠い場所だと思い出し、次の目的地はエルドリア王国に決めた。


 受付に居たエルフの男性職員にもグレイスロウは人口も多く、冒険者レベルの高いギルドだという話を聞いた。

 目立たずに活動するには中級冒険者が丁度良いとは思っていたのだが、自分の実力をある程度把握する為にもダンジョンに単独でどこまで潜れるのか、試してみようと思い立った。


 

「いらっしゃい…ま……あぁーー!あの時のお兄さん!!本当に来てくれたんですね!!親父さーーーん!!」

 ソラリスにある最大のダンジョンに挑むべく準備を整えようとたまたま立ち寄った道具屋で、リカルバン王国で出会った若い商人の男性に再会した。

 思わぬ再会に驚いていると、男性は嬉しそうに奥へ駆けていき、親父さんを引っ張って連れて来る。

 

「兄ちゃん!!あの時より元気そうじゃねーか!ルミナールまで良く来たなぁ。……は?もう中級冒険者に?……ほー、単独でダンジョンにねぇ。よっしゃ!俺んとこに偶然でも来てくれたんだ!準備万端で送り出してやるからな!その代わり、ダンジョンでドロップした品があれば是非うちで売ってくれよ!」

 

「お兄さんからなら高く買取りますからね!」

「あ、お前、勝手な事言うんじゃねー!適正価格で、だぞ!そんな事はいいんだ!兄ちゃん、ちょっと待ってな。色々持ってきてやるから!」

 そう言って親父さんはそそくさと奥へ引っ込んでいった。そっと若い商人が近づいてきて楽しそうに小さい声で教えてくれる。

 

「お兄さん、あれ、親父さんのなりの照れ隠しですからね」


 素直じゃないんだよなぁと男性は笑って、店の中の商品をあれこれと説明してくれる。

 ふと目に付いたフード付きの深緑のローブを見ていると、何となく同じような髪色のローランドさんを思い出していた。

 アストレアから逃げ出して既に五ヶ月以上経っていて、向こうはどうなっているのか、酒場にも寄ってみるが戦争の噂話は特になかったので状況を知る術は無かった。

 

「なんだ兄ちゃん、それ気になるのか?冒険者ならローブはあった方が便利だぞ」


 両手に荷物をいっぱいに抱えた親父さんに後ろから話しかけられ少し肩が跳ねた。何となく目に付いただけだと言ってその場を離れる。

 準備してもらった品物を確認し、大丈夫そうだと会計をお願いした。だが、量に対しての金額が少なすぎて戸惑ってしまう。

「あー、あれだ。これはだな……」

 親父さんも安くし過ぎた言い訳が思いつかず思いっきり目が泳いでしまっていた。

「……あ、あれですよお兄さん!これは在庫が余ってて困ってるんで、在庫処理の手助けだと思ってください!」

「それだ!!そーいうこった!だからこれ以上は受け取らねーからな!」

 

 アストレアにいた時だって、助けた人達からの厚意に触れて来なかった訳じゃない。だけど、本当に貰いすぎなぐらいのお返しを受け、俺は苦しくなった胸元を握りしめ、頭を下げて商人達に感謝を述べた。


 そして深緑のローブを飾っていた棚から降ろし、それも購入する事にした。それも値引きしようと言われたが、流石にこれ以上は貰いすぎだときっちり掲げてた値札分の硬貨をカウンターに置く。

 

「じゃあこれはオマケな」

 

 そう言って手渡されたのがローブを留めるためのクラスプと呼ばれるシンプルな菱形の金具だった。

「オマケなんだから気にすんな!兄ちゃんのお陰で無事帰って来れてこっちはちゃーんと儲かったんだ。これ以上ごちゃごちゃ言うともっとオマケつけちまうぞ!そうそう。ドロップ品楽しみにしてっから!頑張れよ」

 そう笑いながら言われ、ありがたく使わせてもらうことにした。


 商人の道具屋を後にし、俺は早速四十七階層にもなるソラリス最大のダンジョンへと足を運んだ。

 浅い階層はモンスターも殆ど出ない為駆け足で進んで行き、三日目には二十階層に降りたち 、そこからは少しペースが落ちたが、更に半月かけて最深部の四十七階層まで辿り着くことが出来た。

 

 四十七階層にいたボスはリッチと呼ばれるアンデット系モンスターの上位種だった。

 下位モンスターであるスケルトンやグールを多数従えており、通常ならばリッチまで辿りつくのがまず困難だろうと思う。

 だが、アンデット系なら光魔法が効果的なのは分かっていたので、俺は範囲治癒魔法を展開し、まずは下位モンスターを殲滅した。

 リッチは下位モンスターを盾にして無傷のまま。間から強力な魔法を放って来るが、守護結界で防げない強さでは無かった。

 俺は守護結界を維持したままリッチとの距離を詰めていき、槍なら届く範囲まで近づくと、今度はリッチと俺を覆うように守護結界を展開する。

 中に閉じ込められたリッチは逃げ出そうと魔法を放つが全て弾かれ霧散する。その隙に更に近づき、近距離で浄化魔法と治癒魔法をかける。

 耳をつんざく様な叫び声と共にリッチは消滅していった。

 

 後に残っていたのは比較的大き目の魔石と、緑色の宝石がついた白銀の槍、今も俺の武器である聖槍エルディオンだった。

助けた商人と再会。

人によって壊された心を人によって少しずつ修復中。


リュカはレアドロップ品を手に入れた!

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