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聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
3章 エルドリア王国
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84話 リュカのルーツ

グランスロット家の情報収集能力は世界有数。

 セリオンはカップを持ち上げると口をつけ、また静かにソーサーへと戻した。

 

「後、アストレアの研究施設も何処にあるのか判明したよ。聖神教の教会の外にある墓地の地下に施設があったようだ」

 

「地下施設か。不死の研究所が墓の下とは趣味が良いね」

 リシェルが眉間にシワを寄せ、吐き捨てるように言った。

 

「ガルディアを始めとする諸外国から、施設で行われていた実験の全容を開示するよう請求はしてるけど、アストレアの内部分裂でなかなか話が進んでいなくてね」

「……じゃあ攫われた子供達がどうなったとかは……?」

 小さく呟いたセラフィナの顔が曇る。

 

「……残念だけど、良い結果では無かったよ」


 その言葉が重く、その場に落ちていく。セラフィナは眉間に皺を寄せると目を瞑り少しだけ俯いた。

 自分は運が良かっただけで、もし、精霊達が居なかったら攫われた子供達と同じ末路だっただろうと思うと、胸が締め付けられるような思いになった。


 俯くセラフィナの背に、隣に座るリュカがそっと手を添える。

 顔を上げたセラフィナはリュカの方を見て、大丈夫だというように小さく頷いた。


「それとね、ここから一番重要な話をするよ。……うちの“影”から報告があって、まだ非公式ではあるがこれはリュカ君に伝えておくべきだと私が判断した」


 セリオンの後ろに静かに立っていたトールが紙の束を取り出すと、リュカに手渡した。


「……これって……」

「イグニスが関与していたと思われる研究の一端だよ。本人は既に姿を消していて、施設内には大量の資料だけが残されていた」

 

 手渡された書類の束を捲ると、そこには魔石を使った人体実験の様子が書かれていた。

『被検体β(ベータ)0183人族十三歳 拒否反応 埋め込んだ場所から細胞が壊死 四日後死亡 』

『被検体β0219獣人五歳 魔石適合 要経過観察 十日後魔力暴走 制御不能の為処分』


 ページを捲っていくが、そこには大人から幼い子供まで、犠牲になっている事実が目に飛び込んで来る。

 しばらくして、あるページでリュカの手が止まった。

 

『被検体β0246人族生後半年 魔石適合 要経過観察 安定 暴走の兆候なし 鑑定の結果心臓に埋め込んだ魔石が融合した為魔力が馴染んだと思われる 』

 

『被検体の年齢が幼いと適合率高い可能性あり』

『被検体β0246一歳 孤児院へ戻し要経過観察』

 

『被検体β0246四歳 光魔法使いと判明 他属性は未だ表れず』

 

『低年齢だけでなく一属性特化型、元々の魔力量の容量が多いと魔石に適合する可能性あり、他の一属性特化も探す』

 

『被検体β0246十二歳 医療班 光魔法の精度が異常な程高い 欠損修復の治癒魔法 魔石と適合した事による無尽蔵の魔力量 取り出す魔石に期待出来る 魔力制御の精度が上がった後に実行予定』

 

『被検体β0305亜人生後八ヶ月 魔石適合 要経過観察 安定 暴走の兆候なし β0246に続く成功例となりうる 経過観察後、孤児院へ』

 

『被検体β0246十五歳 聖白騎士団に異動 貴重な被検体を最前線に送るとはこの国の上層部もたかがしれている』

 

『前線で遺体となったならこちらに送るよう要請』


  

「……俺……ですよね……これ」

 


 絞り出すように声を出したリュカは左手で胸元をギュッと握りしめるように押さえる。

 突然開示された自分のルーツに戸惑いと嫌悪感で胸が苦しくなった。

 

 被検体の経過観察が具に記されていた書類を読んだリュカの顔色が真っ青になっていた。手が小さく震えているのに気付いたセラフィナが、その手から書類を取ると机に置いて、そのままリュカの右手を包み込む。驚く程に彼の指先が冷たくなっていた。 

 セリオンは膝の上で手を組むと、少しだけ目を細めてリュカを見た。


「……うん。君もアストレアと、更にはイグニスの被害者だった、という事だ」


「本当に……これが研究施設に……?」

「本当だよ。これを元に、“被検体β0305”と呼ばれていた亜人の孤児が生存しているのも確認した。だが他国で出来る事も限られていてね。まだ保護は出来ていないんだ」


 あまりにも現実離れした話で、何も頭の中で理解が及ばないまま、血の気だけが引いていく感覚があった。俯いたリュカの瞳が何処か遠くを見つめている。

  

「……俺のこの魔力量の多さは……実験で創られた物だった……?魔石が埋め込まれたとか…融合とか……取り出す魔石に期待とか……意味が分からない……」


 ふと、震える手を柔らかく包み込む感触がして右手を見ると、セラフィナが心配そうにこちらを見てリュカの手をしっかりと握りしめていた。

 それだけで、リュカに少し冷静さが戻って来たようだった。

セラフィナに心配無いと目配せをして、リュカはセリオンに視線を向ける。


「……この話を、今、俺にしたという事は、何かあるんですか?」

衝撃的事実が判明しました。

孤児だったリュカは、体のいい実験体だった訳です。

情報が多すぎて、リュカも大混乱中。

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