81話 次の日の事
「おー!二人共無事合格したんだな!凄いじゃん!」
「まぁ二人の実力を思えば当然の結果だが、流石だな」
次の日、研究所へ向かう道中で二人に試験結果を聞いたリュカ達は自分の事のように喜んでいた。
「全員上級冒険者のパーティになったなぁ」
「そうだな。今は例の案件で手は空かないが、終わったら大ダンジョンの依頼も受けたい所だ」
「再編成された大ダンジョンがあれからどんな感じになってるかも気になる所だよな」
「確かにそうよね。大ダンジョン、私達が調査した後もしばらく立ち入り禁止になってたじゃない?あれから別の上級パーティが調査して、今は四十階層までは潜れるようになったって聞いたよ」
「そうなんだな。あーダンジョンのモンスター相手だと何も気にしなくて良いから気楽で良いんだけどなぁ。そろそろそっちも行きたい気分……」
「何となく分かる……」
リュカの言葉にセラフィナが小さく頷いている。最近はモンスターよりも人相手の依頼だったため、全員が少しダンジョンが恋しい気持ちになっていた。
「だが当分は四人でダンジョンに行く事も出来ないな。二手に分かれての活動になるから、それが少し残念だ」
「そうだったわね……うぅ……マナー講座が覚えきれる気がしない……」
「ライラ、大変だね……あ、舞台だと思えばいけるんじゃないかな?舞踊とはまた違うだろうけど……」
「舞台……舞台ね。……うん。確かに別人を演じるって思えばいけそうかも?」
「うん。頑張って……!」
そんな話をしているうちに研究所に着き、鍵をかざして中に入る。
慣れた所長室への道を歩き、部屋へ入るとそこにはソファで寝ているリシェルと向かいのソファで本を読んでいるレンティスがいて、こちらに気づくとにっこりと笑い本を閉じた。
「おはよう。ライラちゃんとセラフィナちゃんは上級冒険者昇級おめでとう!」
まだ彼に報告はしていないのにそう言われた二人は目を丸くした。
「あ……ありがとうございます。もう知ってるんですか?」
「そりゃあねぇ。グレイスロウギルド登録の上級冒険者は国もセリオン兄様も把握してるから」
「あぁー……そういうこと……」
「うん。そういう事」
「……ライラ、どういう事?」
「ん?あぁ、ほら、上級冒険者のパーティって貴族のお抱えになったりするでしょ?それもあるし、有事の際に所属ギルドのある国から協力要請があったら上級冒険者は参加義務があるしそれで把握してるって事でしょ」
「そっか。そういう事もあるんだった」
セラフィナは納得したように小さく頷いた。
「有事なんて無いに越した事はないんだけどねぇ。まぁエルドリアでは騎士団だけで処理出来ないぐらい人手がいる時ぐらいなんじゃない?」
「そういう事が起きない事を祈るわ……」
「んふふ、そうだよねぇ。……あれ、そういえばライラちゃん、冒険者服新調したの?セラフィナちゃんもかな?」
「えぇ、せっかくだからって二人で新しいの買っちゃったんです。っていってもそんな変わってないんだけど……」
ライラが自分の服を少し引っ張りながら眺めて、不思議そうな顔をしている。
レンティスは目を少しだけ細めて笑うとソファから立ち上がり、ライラの羽織ってるローブの裾を自然な動きで手に取った。
「そぉ?前より生地も良いものだし色も明るめになってる。デザインも更に動きやすそうで良いね。良く似合ってるよ」
少しだけ屈み、ライラと目線を合わせてレンティスは優しく微笑んだ。
「うん。やっぱり良く似合ってる」
真っ直ぐなレンティスの視線にライラの顔が一気に赤くなった。
「………アリガトウゴザイマス……」
急にカタコトな喋りになったライラは真っ赤になったまま目線を彷徨わせていた。レンティスは楽しそうに一歩ライラの方へ近づく。
それを見てユリウスとセラフィナはそっと目線を逸らした。
レンティスがライラを見つめる目が蕩けそうなほど甘く、それを見てリュカも色々と察してしまい、居た堪れなくなってそっと目を逸らした。
「昇級したお祝い、贈ってもいい?何がいいかな?」
「……ア、イエ、ダイジョウブデス……」
「んふふ、そう言うと思った。って事でこれあげる」
レンティスはライラに両手に乗るぐらいの小さい紙袋を手渡した。
「……?」
「セラフィナちゃんと分けて持っておくと良いよ。お守り替わりって所かな」
そっと開けてみると中には四本、ヒールポーションが入っているようだ。だが、いつも持ち歩いている中級ポーションや上級ポーションよりも色が濃い物だった。
「……え、まさかこれ、特級ポーション?」
「うん。そう」
「そんな高価な物貰えないわよ……!」
「お守り替わりって言ったでしょ?リュカ君がいるから使う事無いのが一番だけど、冒険者って何があるか分かんないからさ。鞄の奥底に置いとくだけでも安心出来るかなって思って。ユリウスの大事な仲間に何かあったら僕も嫌だし。ね」
ぐっと喉を詰まらせたライラに、ユリウスが声をかけた。
「ライラ、ありがたく貰っておけ。レンティス兄さんにとって特級ポーションぐらいで財布が痛む事無いから気にする事はないぞ」
「うんうん。どうせ僕が持ってても使い道無いから。折角なら二人のお祝いに丁度良いなって思っただけなんだ」
ライラは少しだけ考えるようにポーションに視線を落としていたが、ふっと顔を綻ばせて小さくお辞儀をした。
「……じゃあ、ありがたくいただきます。……はい、セラフィナの分ね」
「……うん。あの……ありがとうございます」
セラフィナも特級ポーションを受け取り、レンティスへ小さく頭を下げる。
レンティスは小さく息をつくと、二人がポーションを魔法鞄へしまう様子を見て満足そうに頷いていた。
「受け取って貰えてこっちも安心したよ。さて、そろそろリシェルさん起こそうかな?進捗聞きたくて来たんだけど……もう少ししたら僕、登城しないといけないんだよねぇ……」
「リシェルさんまた徹夜したんですね」
「そうみたいだよ。ちょっといい加減風呂場に放り込んできた方が良さそうだけど。リシェルさーん、ちょっと起きてー」
レンティスが声をかけて軽く揺するが、全く起きる気配は無かった。
「うーん……困った……どうしようかな……」
レンティスが困った様に眉を下げて首を傾げた。すると、セラフィナがそろっと小さく手を挙げて言った。
「あの、一昨日までの進捗なら私、説明出来るかもしれないです……」
その言葉にセラフィナの方へ振り向いたレンティスはパッと笑顔になる。
「えっ!?本当に?助かるよぉ。お願いしてもいいかな?」
「あ、はい。じゃあ多分あっちの部屋に資料あると思うので……」
「昨日帰るまでの所なら見てたし俺が説明出来るぞ」
「流石ユリウス!二人共お願いするね。とりあえず奥の部屋行こう」
ユリウスの言葉に機嫌を良くしたレンティスはユリウスと肩を組んだ。
そのまま三人は奥の部屋へと足を向けると扉の奥へ消えていく。
所長室に残されたリュカはライラの方へ視線だけ向けると気になった事を聞いた。
「……なぁ、いつの間にレンティスさんとそんな事になってた訳?」
「………………なんもないわよ……」
「あのレンティスさん見て何も無いは無いだろ」
「…………なんもないったら……」
「うーん……あの様子だと、多分レンティスさんから逃げるの無理じゃない?」
「…………それはそう……」
「うん……まぁ、頑張れ」
「うぅ……沼過ぎてヤバい…どうしたらいいの…」
そう言うとライラは頭を抱えてソファに座り込んでしまう。
こんなに悩んでいる珍しい姿のライラを見て、リュカは眉を下げて笑う事しか出来なかった。
冒険者なのに冒険できず。
リュカが気づくぐらいなんで、レンティスはライラへの好意がめちゃダダ漏れてます。
隠す気無し。




