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聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
3章 エルドリア王国
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78話 凄い人達

 次の日、早朝にユリウス邸を訪れたのは領主代理の補佐であるトールだった。

 

「トール兄様!?どうしたんです?」

 

「どうしたもこうしたも、ユリウスからの頼まれ物を届けに来たんですが?」

「兄様がわざわざ?誰かに持たせたら良かったのに……」

「良いんですよ。届けついでに弟の顔を見に来たんですから。それに、セリオン兄様が書き込んだ資料を誰かに任せる訳にもいかないでしょう?」

「えっ……そんな見られるとヤバい事でも書かれてるんですか?」

「いえ、そういう訳では無いですが、セリオン兄様に心酔している信者(部下)は少し変なやつが多いので」

「変なやつ……」

「そこはお気になさらず。これ、兄様からお預かりしてきましたから。リュカが良いように役立てて欲しいとの事ですよ」

 

 そう言ってトールが魔法鞄から取り出したのは、セリオン自ら研究していた時の守護結界についての実証実験の資料、様々な魔法に関する本や文献等の大量の紙の束だった。

「研究資料はある程度時系列に私がまとめておきましたので、上から順番に読んでいってください」

「トールさんが?」

「兄様は整理整頓が苦手……というか一度読んだらもう必要ないので読み返しとかほぼなさらないから、その辺り適当になりがちなんですよ。放っておくと床に紙が散らかってますからね」

「頭良い人あるあるって感じですね」

 

「人それぞれ得意分野があるって事です。貴方もそうでしょう?人より光魔法が優れているから、それをもっと研鑽していこうとしている」

 

「まぁ、そういう事になりますかね?」

 

「えぇ。一つの事を極めるというのは素晴らしい考えだと思います。貴方のそういう姿勢は私も買ってますんで支援は惜しみませんよ。しっかりおやりなさい」

 

 トールはそう言ってリュカの肩を軽く叩くと、柔らかく微笑んだ。

 

「ユリウス、これはみんなで分けなさい。実験や勉強は食を後回しにしがちですけど、体調管理も仕事の一つですからね」

 トールがユリウスに手渡したのは大量の食料品と大量の甘味だった。両手では持ちきれず、ユリウスは机にズラリと並べていく。

「トール兄様……流石に多すぎないか?」

「これでも抑えて持ってきた方ですが?」

「いや……まぁ、ありがとうございます」

「パーティの管理はユリウスの仕事でしょう?ちゃんとやるんですよ」

「はい。それはきちんとやりますよ」

「それでいいんです。……あぁ、もうこんな時間ですか」

 トールは胸元から取り出した懐中時計を見て呟いた。

「では私はこれで。またお会いしましょう」

 軽く手を上げると、トールは颯爽とユリウス邸を後にした。


 その後ろ姿を見送り、リュカは思わず呟いた。

「……なんか、ユリウスの兄さん達ってかっこいいなぁ……」

「そうだろう?兄様達はかっこいいんだ」

「ははっ!自慢のお兄さん達だもんな?」

「そうだな」

「即答かよ。……少し羨ましいわ」

 

「……トール兄様のあの感じだと兄様達の中ではお前も弟認定されつつあるぞ」

 

「………………は?なんで!?」

「俺の信用するパーティメンバーだからな」

「……身内認定甘すぎない?」

「良い兄様達だろ?」

「……否定はしない」

 なんとなくリュカはくすぐったい気持ちのまま朝食を食べた。

それが何なのかは分からなかったがちっとも悪い気はしなかった。


 研究所に着き、まず三人は所長室での勉強会、リュカは奥の部屋へ入っていった。

 リュカは守護結界を張りながら借りた資料を読み込んでいく。セリオンの研究資料は事細かく書き込まれていて、とても分かりやすい物だった。

 途中、リシェルがセリオンの資料に気づき、楽しそうに言った。

「懐かしいねぇ。セリオン君がまだ子供と呼べる歳の時に色々と話を聞きに来てたのを思い出すよ。あの頃も既にセリオン君はセリオン君だったなぁ。子供と思えないぐらいの着眼点に驚かされたし話しててとても楽しかった。……あ、リュカ君、ここ強度上げるとどうなるか見たいからもう少し魔力かけて」

「あ、はい。……セリオンさんって昔から凄かったんですね」

「うん。そうだね。グランスロット家は代々優秀な領主なんだけど、彼は飛び抜けてる。まだ領主代理って言い張ってるけど、実質彼が全部動かしてるのにねぇ」

「ははは……」

 リュカは手元の資料に視線を戻した。本当にすごいお兄さんなんだと改めて感じる。折角借りた資料を無駄にしないようにしようと唇を引き締めた。

  

 それから数日、リュカは時々魔石に魔力を込める作業をするが、基本的には守護結界を張ってその中でひたすら資料や本を読む。

 セラフィナも手伝いに来たり、長時間作業になりかけるとユリウスが強制終了させた。

 更にご飯を準備してくれており、休憩を挟んでまた同じ作業を繰り返していた。

 

 セリオンの研究資料を読み終わると、リュカは通常の守護結界を張りながら、さらにその中で物理攻撃も防ぐ守護結界を張る練習をしていた。

「……リュカ君、それ、出来るようになったらまた解析させてもらっても?一旦はこっちの解析結果をレンティス君に持たす魔導具に組み込んでいくけど、ゆくゆくはそっちを張れるようにしたい」

「あ、はい。分かりました。まだ安定しないんでもう少し待ってください」

「しかし守護結界を同時展開出来るのか……君は本当に興味深いねぇ」

「魔力量にものを言わしてるだけな気がしますけど……」

「一属性特化型の子はこれだから面白い。あー早くこの魔導具作業も終わらせたいよ」

 リシェルはこの数日で更に隈が濃くなった目元を綻ばせて笑った。


 そして所長室に通い出してから一週間が経ち、セラフィナとライラが上級冒険者の試験を受ける日になった。

 

ユリウスのオカン属性はトールから受け継がれていました。

リュカも家族扱いされる空気を浴びて少しうずうずしています。

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