74話 対抗手段の鍵
「じゃあ、どう対抗していくかってのをざっくり説明するよ」
レンティスは一度全員を見回すと、リュカを指差した。
「鍵はリュカ君、君の光魔法だ」
「…………えっ!?俺!?」
突然の指名に最初は理解出来ずに驚くリュカは少しだけ背筋を伸ばした。レンティスは手に持っていた資料を机に置くと足を組み、その上に手を乗せる。
「リュカ君の光魔法は洗脳が解けるほど強力な物だ。それ以外でも、魔力切れを起こさないほどの魔力量、守護結界も強固、治癒魔法に至っては、欠損も即修復出来るという規格外っぷりだ。通常の神官でも欠損箇所の修復なんて出来ないんだよ?あのルシアンっていう神殿騎士みたいなヤツらに“神”に祭り上げられててもおかしくないんだ」
レンティスに指摘されて改めて自分の治癒能力が人よりも優れている事に気付かされ、ルシアンの様なヤツがまだ居る可能性に身震いする。
「……そうなんですよね……俺、アストレアを出て放浪してた時にそれに気づいて、隠してたんですけど……」
「んふふ、あまり隠せて無いんだよねぇ」
「ですよねぇ……やっぱりヤバいですかね……?」
「んー……まぁ、大丈夫でしょ。なんかあっても助けてあげるから安心して」
顎に手を当てて考えるように視線を上に向けてそう言うレンティスに、リュカは少しだけ胸を撫で下ろした。
「そういえばリシェルさんがセラフィナちゃんにも手伝って欲しい事があるみたいなんだけど、説明する人が寝ちゃってるから僕からはそういう話があるよ、しか言えないんだぁ」
「……分かりました。」
「あの、俺の光魔法って言っても、俺がその場に居ないと意味無いですよね?守護結界で闇魔法自体は防げますけど……ずっと王城とかにいる訳にはいかないですし」
「うん。だから、リュカ君の魔法を素にした、洗脳や催眠を無効化する常時発動型の魔導具を開発するんだよ」
「……?……えぇ!?常時発動型ってそんなん出来るんですか!?」
「リシェルさんいわく、理論上は可能なんだって。最初は一人一人護られる為の物、次は国の上層部の執務室を覆う大きさに、最後は王城を覆う大きさにするらしい。ほら、グレイスロウにある街灯、あれって魔導ランプなんだけど暗い中ずっと点灯してるよね?あれの応用みたいだよ」
「……なるほど?」
魔導具の仕組みなんて全くわからない為、リュカは説明を聞いてもいまいちピンと来なかった。
そんな中、ユリウスは感心したように呟いた。
「そうか。もしそれが実現出来たなら街全体を覆う大きさにも出来るだろうな。だがそうなると医療機関に支障をきたすのか……そこも課題、といったところだな」
「うんうん。ユリウスは流石だね!」
レンティスは腕を組み、嬉しそうに頷いていた。
「あのー……魔導具開発にリュカが必要で、セラフィナも規格外の魔法使いだからリシェルさんの手伝いなのも分かるし、ユリウスも話についていけそうだけど、私、する事無くないですか?」
ライラが遠慮がちに手を挙げてレンティスにそう言うと、目を丸くしてライラを見返した。
「何言ってんのライラちゃん。やる事いっぱいで大変になるの、ライラちゃんもだよぉ」
「えっ……」
「まず、セラフィナちゃんと一緒に上級冒険者の試験を受けてもらって、全員上級のパーティになってもらうでしょ?それからユリウスと僕と一緒にまたガルディアに飛んでもらうから」
「……えっ?ガルディアに?飛ぶ?」
「うん。飛竜でひょいっと。後は魔導具の為の魔石も数がいるしそれも集めなきゃだから僕らでダンジョンに潜らないとだし。後は……」
「ちょ……ちょっと待って、待って!ガルディアに何をしに行くのよ!」
「向こうの上層部との話し合いと、捕虜からの聴き取りかなぁ。後ダンジョン巡り。あ、ファイフさんもいるから大丈夫だよ」
「そういう問題じゃないんですけど!?」
「あぁ、上層部との話し合いの事?」
「ユリウスはまだ分かるわよ?なんで私も?」
「あれ……?もしかしてライラちゃん、まだ自分の価値を低く見てるのかな?」
「……えっ……?」
「ライラちゃんって、ファイフさんの一番弟子でしょ?それだけでもガルディアで英雄扱いされるのに」
「は?」
「頑なに弟子を取らなかったファイフさんに最初に認められてるって事はそれだけライラちゃん自身に可能性を見たって事だよね。今あの人の弟子だった人が世界各国にいて、みんな色んな分野で活躍してる。だから君自身にはガルディアとの交渉に立ち会うだけの価値があるって事。ガルディア王からも次は連れてきてって言われてるしねぇ」
「…………知らなかった……」
「うん。ファイフさん自身そういうの、ちゃんと伝えないからねぇ。って事だから、まずは上級の試験、頑張ろっか。セラフィナちゃんもだよぉ。筆記はユリウスが教えてくれるでしょ?」
「あぁ。それは任せてくれ」
「一緒に頑張ろ」
「実技試験はまぁ二人なら大丈夫かなぁ。心配なら僕が相手してもいいけど」
「待て待て待て!!!」
「大丈夫ですって!!レンティスさん忙しいですよね!?」
食い気味に止めに入るリュカとユリウスをレンティスが不思議そうな顔をして見た。
「そぉ?じゃあ一週間後には試験受けてて欲しいかな。リュカ君はそこに転がってる所長が起きたら早速開発に着手し始めてて欲しい。十日後にはガルディアへ向かうから、それまでにある程度形にしてくれると助かるけどね。みんなキツい予定だと思うけど、よろしく頼むよ」
レンティスの言葉に全員小さく頷いた。
新たな依頼は思わぬ形の物となって、四人を巻き込んで進んでいった。
少しずつやる事が見えてきた。
みんなそれぞれ忙しくなりそう




